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【特集】5G投資と半導体向けで爆需発生、「工作機械株」に投資マネーが熱視線 <株探トップ特集>

新型コロナウイルスの感染再拡大で世界の株式市場が揺れている。景気の先行きを示す工作機械受注が足もとで驚異的な伸びを示すなか、波乱に満ちた戻り相場では関連株が選好されよう。

―新型コロナ「デルタ株」の感染拡大も何のその、業績好調株のオンパレードで要注目―

 世界で突如伝わった新型コロナウイルスの「デルタ株」のまん延は、ようやく回復の道をたどり始めた景気先行きの不安材料となった。東京でも新型コロナウイルスの新規感染者数のリバウンド傾向が顕著となり、東京株式市場では、直近は米国株主導で戻り足をみせているものの、日経平均株価の軟調ぶりが際立つ。全体相場は依然として梅雨真っ只中の様相だが、 機械株の一角は頑強な株価動向を示している銘柄も少なくない。景気先行きの晴雨表とも言われる機械受注は、昨年11月に26ヵ月ぶりにプラスに転じ、足もとでは驚異的な伸びを示していることが背景にある。中国をはじめとして欧州や北米などの外需による回復が鮮明となる構図だ。5Gなどの商用サービス本格化に伴う需要創出に加え、高性能化や高精度化が進む半導体関連の設備投資ニーズが拡大しており、世界的にハイエンド分野に強みを持つ日本の 工作機械メーカーの存在感はますます高まりそうだ。

●工作機械受注はプラス圏の真っ只中

 日本工作機械工業会が12日に発表した2021年1-6月累計の工作機械受注額(速報)はマーケットの注目度も高かったが、前年同期比71.2%増の7021億円となり、コロナ禍前の19年1-6月累計の6819億円をついに上回った。21年の同受注額は19年並みになると見込まれていたが、年央で既に上回った。景気拡大期の平均期間は33ヵ月程度と言われているが、直近の景気サイクルでは米中貿易摩擦やコロナ禍というイレギュラーな要素が入り、読みが難しくなっている部分もある。ただ、6月の工作機械受注額は1321億円と5ヵ月連続で同受注の好不況の目安とされる1000億円を超えている。

 また、5月までの累計では海外向けの全体に占める割合は7割強と19年の6割前後から上昇しており、なかでも中国からの受注が前年同期の3.1倍と大幅に増加している。中国は世界最大の工作機械消費国だが、建設や5G電気自動車(EV)関連分野での設備投資拡大が工作機械の需要を押し上げている。足もとで半導体不足や自動車生産の減速による景気への影響も懸念されたが、中国国家統計局が15日に発表した4-6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比7.9%増と5四半期連続のプラス成長となった。

●ファナック、牧野フの4-6月期決算に注目

 ここにきての株式市場の下げは、押し目買いのチャンスとなる可能性がある。高度な技術力と製品を持つ企業は、それだけ需要を捉える成長力を持っており、中長期スタンスの投資家にとって魅力的な物色対象となる。NC装置で世界シェアの過半を占めるファナック <6954> の22年3月期営業利益は1484億円(前期比31.9%増)を見込むが、市場では2000億円以上に上振れするとの見方もある。ファクトリーオートメーション(FA)ロボットが堅調に推移するほか、固定費抑制などによる収益性の改善も寄与する。足もとの為替レートが110円前後と会社側が想定する105円に対して円安で推移しており、今週発表予定の4-6月期決算で大幅増益となれば同社をはじめとする工作機械株への投資に対する見方が強気へと変わる可能性がある。

 また、業績の回復という面で注目できるのは牧野フライス製作所 <6135> だ。同社は航空機部品や半導体向けマシニングセンターが主力で、21年1-3月期営業利益は10億300万円(前年同期比49.4%減)と大幅減益だが4四半期ぶりに黒字転換を果たした。22年3月期上期の営業利益は3億円(前年同期37億1600万円の赤字)を見込むが、30日発表予定の4-6月期決算が注目される。

●新工場建設のDMG森精機

 こうしたなか、同じく工作機械関連の優良株であるDMG森精機 <6141> も業績が好調に推移している。同社は5月、21年12月期業績予想について、連結営業利益を110億円から140億円へ上方修正した。第1四半期(1-3月)の受注額が7四半期ぶりに1000億円台を回復し、4月の受注も第1四半期平均月次受注額を上回るなど第2四半期も好調な滑り出しとなっていることが要因。世界的に問題視されている半導体不足も、生産への影響はほとんどないという。なかでも中国の第1四半期の受注がピークを更新し高水準で推移しており、天津工場の受注残が7~8ヵ月分で供給不足が顕著となったことから天津工場を増強するとともに、上海近郊に新工場を建設し需要増に対応する。これにより、中国での生産能力は既存工場と合わせて現状の約4倍となる年2000台と大幅な増強となる。

●ツガミ、ソディックなど注目

 技術大国である日本は世界でも一頭地を抜く工作機械メーカーの宝庫だ。自動旋盤など精密工作機械が主力のツガミ <6101> は、主要輸出先の中国で引き合いが活発化するなか受注回復傾向が鮮明で、海外受注額が過去最高を更新するなど収益環境が様変わりしている。22年3月期の連結営業利益予想は110億円(前期比15.4%増)と3期ぶりに最高益更新を見込んでいる。また、5期連続で増配を予定しており、株主還元にも力を入れている。

 また、NC放電加工機メーカーとして世界的シェアを誇るソディック <6143> は、マシニングセンターや金属3Dプリンターも手掛けグローバルニッチトップ企業としてプレゼンスを高めている。同社が5月11日に発表した21年12月期第1四半期(1-3月)連結営業利益は4億2400万円(前年同期8800万円の赤字)と大幅な増益となった。主力の放電加工機が中華圏を中心に需要が堅調で、日米欧でも一部事業活動再開が収益に反映されるかたちで会社計画を上回って進捗している。

 こうしてアジアなど設備投資拡大とともに工作機械への需要が増える一方で、米国向けなど本格的な需要拡大期入りが予想される。また、国内においてもワクチン接種が進むにつれ経済活動再開に弾みがつくことで、景気回復基調を強めていくだろう。工作機械メーカーの老舗でマシニングセンターでは首位級のオークマ <6103> やベアリング大手のジェイテクト <6473> 、射出、ダイカストの成形機が中心の芝浦機械 <6104> なども株価の見直し期待が大きい。

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