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【特集】新型コロナ「デルタ株」の影響どこまで、NYダウ急落と東京市場の行方 <株探トップ特集>

世界の株式市場は新型コロナ「デルタ株」による感染再拡大を警戒し始めた。と同時に、中国を中心とする景気減速懸念も浮上しており、株価には高値波乱懸念も強まりつつある。

―忍び寄る世界景気減速の影、警戒感強まるがワクチン効果は続くとの見方も―

 世界の金融市場が、再び新型コロナウイルスの感染拡大への懸念で揺れている。19日の米国市場でNYダウは急落したが、この背景にあるのが、感染力の強い新型コロナのデルタ変異株に対する警戒感だ。アジアを中心に猛威を振るう新型コロナ「デルタ株」の影響で新型コロナワクチン効果による経済回復期待を後退させた感がある。果たして、世界の株式市場は夏相場に向け上昇基調を維持するのか。

●アジアなどでのデルタ株感染拡大を警戒

 19日の米株式市場でNYダウは、前週末に比べ725.81ドル安の3万3962.04ドルと急落。下落幅は約9ヵ月ぶりの水準となり、大きく値を下げた。この日の東京市場で日経平均株価は前日比264円安と5日続落した。市場には、今後の景気動向や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策などに対する不透明感があるが、ここへきて大きく浮上しているのが、新型コロナのデルタ変異株の感染拡大に対する警戒感だ。

 新型コロナのデルタ変異株は、インドやインドネシアなどで猛威を振るっている。また、ワクチン接種が進んだ英国では人口の大半を占めるイングランドで新型コロナ対策の規制がほぼ解除されたが、その一方で同国の感染者数は再拡大している。同じくワクチン接種の先進国であるイスラエルでも、デルタ株の感染拡大を受け屋内でのマスク着用を再び義務化した。

●ワクチン期待は強くモデルナやビオンテック株は上昇継続

 米政府が19日に渡英の「中止」を勧告したことも衝撃を与えた。米国でもデルタ株の感染拡大が続くなか、「再びロックダウン(都市封鎖)が実施されれば、経済への影響は無視できない」(市場関係者)ことが警戒されている。

 今後のデルタ株の影響について見方は固まっていないが、新規感染者数は再び増加傾向にあるものの、重症者数や死亡者数は感染者数に連動して増加はしていない。アジア各国などワクチン未接種者を中心にした感染拡大であり、過去とは状況は異なる。「より強い変異株が出てくれば別だが、ワクチン効果への期待ははげ落ちていない」(アナリスト)。

 このことは、米国市場に上場するモデルナ<MRNA>やビオンテック<BNTX>といったコロナワクチン株が上昇基調を続けていることにも市場の評価として表れている。いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は「もし新型コロナに対する懸念で米国株が一段安となれば、絶好の買い場ではないか」と今後の展開をみている。

●中国景気に景気減速懸念、米国決算に注目

 ただ、一本調子で上昇を続けてきた米国市場には高値警戒感も強い。フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は「米株式市場は2018年秋から同年年末にかけて経験したような調整局面に入ってもおかしくないのではないか」と警戒する。18年年末にかけ、NYダウは20%近い下落を演じた。今回も同様な下げがあるとすれば、NYダウは3万ドル割れもあり得る。

 同氏は「米市場はコロナワクチン効果を既に織り込んでいる。むしろ、気になるのは景気減速懸念だ」という。景気減速を警戒する動きは、グローバル景気の動向を示すオーストラリアドルや米長期金利、原油といった各価格が足もとで軟調に推移していることが、経済の先行き懸念を象徴している。この動きに対して「世界経済は中国の動向を気にしているのでは」と笹木氏。中国景気は減速サイクルに入ってきていると同氏はみており、この影響を世界経済は受け始めているという。

 そんななか、米国は4~6月期の決算発表が本番を迎える。20日のネットフリックス<NFLX>に続き、21日のオランダ・ASMLホールディングADR<ASML>、22日のインテル<INTC>、27日のアップル<AAPL>やグーグルを傘下に持つアルファベットC<GOOG>、マイクロソフト<MSFT>などの決算発表が予定されている。主要米企業の4~6月期の予想増益率は6割増との見方もあるが、7~9月期以降はペースダウンするともみられている。今後をみるうえでも、米景気動向と企業決算の先行きは注視しておく必要がある。

●日本株市場のワクチン効果はこれから

 一方、上昇基調を強めてきた米株式市場に対して日本株は「下げても米国に比べれば限定的ではないか」とみる市場関係者は少なくない。日本のコロナワクチンの接種加速は、まだこれからであり、景気回復に対する上乗せ期待は残る。菅政権の支持率低下は不安材料なうえに、決算発表の内容にも左右されるものの、日経平均2万6000~2万7000円前後が下値メドともみられている。前出の笹木氏は、日本株なら高配当利回りのJ-REITのような商品、米株なら同じく高配当利回りで成長性も期待できるIBM<IBM>のような銘柄が注目できるとみる。

 期待と不安を交えながら今後の世界の株式相場はどう動くのか。当面は日米の決算発表が注目されるほか、27~28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、今夏の米ジャクソンホール会議の動向などが注視されている。

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