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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (3)売り買いの力関係を読み解くために、信用残とチャートを組み合わせて使おう!

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆信用残が語る投資家心理と株価の先行き

 たとえば、新型コロナウイルス感染症が流行して経済活動の自粛を求められると、「どう考えても景気は悪くなるだろう」などと感じる人も多いかもしれません。私たち個人投資家はその体感と株式市場を比較して、株価が上昇すれば「納得できない」「そろそろ天井だろう」などと感情の赴くままに取引をしてしまいがちです。株価の上昇とともに「売り残」が増えているケースはまさにそのような状況である可能性があります。つまり、(1)値下がりを期待して空売りをしたのに、株価は逆に上昇して損失を被ってしまう、(2)どこまで上昇するのかわからないので不安を覚えたり、損失に耐え切れずに買い戻しを余儀なくされる人が増え、それがさらに株価を押し上げる、(3)それを見て株価の水準は行き過ぎと感じる人が増えますから、株価が上昇するほどに新たな空売りを呼び込んで売り残が積み上がる――という流れです。ラクーンの売り残の推移の状況はまさにこの状況であり、「04/02」までは売り残が積み上がりました。しかし、「04/09」では減少に転じており、落ち着きを取り戻し始めているようです(図3)。


●図3 ラクーンホールディングス <3031> の信用取引欄
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 しかし、上昇し続ける株価はなく、いずれは天井を迎えて下落します。下落すれば空売りで儲けることができますが、問題はそこが本物の天井なのか、それとも押し目をつけにいくだけなのかはすぐには判断がつかないことです。とりわけ地合いが好調な時は強気な投資家が増えますから、株価が下落しても「また上がるはずだ」と信用買いを行う人が増えていきます。仮に株価が天井をつけて下落していくような時に、「買い残」が増えていくとしたら、それは損失を抱える買い方の投資家がどんどん増えていることを意味しており、将来的には売りが増える要因につながります。ラクーンの買い残の推移を見てみると、「04/02」には減少した買い残が「04/09」では再び増えていることがわかります。地合いにもよりますが、さらに上昇を続けられるなら勢いづく可能性もありますが、そうでない場合には買い残の推移には注意したいところです。

 ただ、株式市場の地合いが良い時であれば、信用買い残が増加していくケースは一般的に、目先の相場が強いという風にも考えられます(信用取引には通常期限が設けられていますので、いずれは基本的に売却されることになる点には注意が必要です)。相場の先行きを強く見る投資家の信用買いが増えれば、買い残は積み上がり、信用倍率は1倍を大きく上回って増えていくことになります。

 反対に、先行きに不安が広がれば、信用売り残が増加する一方で、買い残は減少していきます。信用倍率は1倍に近づき、時には信用売り残が買い残を上回って1倍を割り込むこともあります(これを「売り長」といいます)。このように、信用買い残と売り残が拮抗している状況や、売り残が買い残を上回っている状況は一見するとネガティブにも思えますが、相場の世界では「取組妙味がある」「好取組」などと表現され、売り方の買い戻しによる株価上昇(踏み上げ)を狙う買い方と、株価下落による利益拡大を目指す売り方との間で、しばしば熾烈な攻防戦が繰り広げられる局面となります。ラクーンの信用倍率を見ると、「03/19」以降は1倍を割り込む状況が続いていますし、株価は実際に上昇が継続していますから、売り方が踏み上げられて苦しい状況であろう様子がうかがえます。通常は買い方のほうが多い状況ですから、株価が上昇して大半が儲かって喜んでいる中で、踏み上げられるのは売り方にとって相当につらいことである点を理解して、空売りを行う際には臨むようにしてください。
 
 信用取引に関するこれらの数値がどのような推移を辿っているのか過去のデータをご覧になりたい場合には、「時系列」のタブを選び、「時系列株価」のなかの「週次信用残」をクリックして、「売り残(株)」「買い残(株)」「信用倍率」を確認すればよいでしょう(図4)。ただ、信用残高の数値を見ただけでは株価の推移はわかりませんから、前述したようにチャートで株価の推移を確認したうえで総合的に需給を判断するようにしましょう。


●図4 ラクーンホールディングス <3031> の「週次信用残」
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 ところで、株を保有していないのにもかかわらず、信用取引でどのようにして株を売ることができるのかというと、証券会社から株を借りて取引を行うことになります。証券会社が売るための株を持ってない人に株を貸してあげるわけですが、この時に「貸株料」という貸出料を設定して株を貸すのです。一方、証券会社はどのようにして株を貸すことができるのかですが、株を保有している人に「貸株金利」という金利を支払って、株を借りるのです。

 この証券会社が行っている株を調達する仕組みが、「貸株」というサービスです。保有はしているものの、塩漬けにしたままというような銘柄をお持ちの人は、貸株の取引を行うことでわずかではあっても金利収入を受け取ることができるようになります。挑戦してみたい人はやってみてもよいでしょう。

 この貸株金利が高ければ高いほど、それだけその株を空売りしたいと考えている人が多いということになります。需給を考慮して銘柄を選別する際には、信用残や信用倍率に加えて、貸株金利も同時に確認するようにしましょう。信用倍率が1倍を割り込み、貸株金利が高い場合は、先に述べたように空売りの買い戻しを誘うような株価上昇、いわゆる「踏み上げ」が起こる場合もあります。

 ただし、なかには貸株金利があまりにも高いのではという銘柄もあります。そうした銘柄は、逆になぜこんなに貸株金利が高いのかと疑問を感じなければなりません。例えば業績が低迷するなど、空売りを行いたいと考えるそれなりの理由がある場合も多いのです。業績が低迷していて、貸株金利も高いというような場合、株価が底を打つまで徹底的に売られ続ける恐れがあります。「貸株金利が高くて好取組なのに、株価は全然上がらないじゃないか!」ということになりかねませんので、なぜこんなに金利が高いのか、その原因についてもあらかじめ十分に調べておくようにしましょう。

 また、信用残の推移から銘柄を選別してみたいという場合には、「株価注意報」の「信用取引需給」のコーナーを利用するとよいでしょう(図5)。


●図5 「株価注意報」の「信用取引需給」
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