【特集】革新のバリューシフト、今から狙う「高配当&低PBR」選りすぐり6選 <株探トップ特集>
3月期末配当の権利付き最終日まであと1週間。足もとでバリュー株への物色が活発化するなか、先高期待高まる“高配当&低PBR株”にスポットライトを当てた。
―新年度入り以降も株高トレンド継続が期待できる、高配当利回りの割安株をリストアップ―
21年3月期の業績予想を上方修正する動きが止まらない。例年、4-12月期決算発表シーズン通過後の2月後半から4月初旬は、業績予想を修正する企業が少ない時期であるが、今年は様相が異なる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急激に落ち込んだ業績の回復が鮮明となり、製造業を中心に通期計画を見直す企業が相次いでいるのだ。業績上振れとともに配当予想を増額修正する企業も多く、3月期末を間近に控え、マーケットの視線を集めている。
今回は新型コロナウイルスのワクチン接種による世界景気の回復期待が高まるなか、景気が上向くにつれて業績好転が期待できる景気敏感株に注目し、配当利回りが高く、かつ株価バリュエーションが割安な水準にとどまっている銘柄を探ってみた。
●業績回復基調の高配当利回り&低PBR銘柄に注目
米国の長期金利上昇を手掛かりに、これまで株高を牽引してきたグロース株からバリュー株への資金シフトが続いている。新型コロナウイルスのワクチン普及やバイデン米政権の財政出動による経済活動正常化への期待は強く、足もとで景気敏感株を見直す動きが顕著になっている。国内では、3月期末が接近するなか、配当利回りが高水準で、PBR(株価純資産倍率)が低位にある銘柄への物色意欲が旺盛だ。
高配当利回り株には景気敏感セクターを中心にPBRが割安な銘柄が多い。3月期決算企業で今期予想ベースの配当利回りが3%を超えるのは379社(19日現在)あるが、このうち企業の時価総額が解散価値を下回ることを示す“PBR1倍割れ”の銘柄数は290社に上る。ここでは、高配当利回りの低PBR銘柄のなかでも、足もとの業績が回復基調にある企業に照準を合わせた。
以下では、3月期決算企業を対象に、(1)直近3ヵ月実績である10-12月期の経常利益が前年同期比で増加、(2)21年3月期の年間配当利回りが3%以上、(3)PBRの実績値が1倍未満、といった条件を満たした銘柄をピックアップ。高水準な配当が獲得でき、業績回復を背景にキャピタルゲインも期待できる銘柄として6社セレクトした。なお、3月期末配当を獲得するには、権利付き最終日の29日に株式を保有していることが必須条件となる。
※配当利回りは3月22日終値ベースで算出。
●ジーテクトは11期連続増配と株主還元に積極姿勢
ホンダ <7267> 系の自動車車体プレス部品メーカーであるジーテクト <5970> は、株主還元に手厚いことで知られており、これを目的に株式を保有する株主も多い。21年3月期の配当は11期連続の増配となる年間50円(前期は48円)を計画する。11期連続増配は自動車・自動車部品業界で唯一の存在だ。また、1年以上継続保有する株主に対してクオカードを配布する株主優待制度も実施している。今期業績は新型コロナウイルス感染拡大の影響で大打撃を被ったが、中国市場の増産や欧米の想定以上に早い生産再開を受け、4-5月を底に回復に転じている。利益面では欧米政府の支援やコスト削減を背景に、7-9月期に黒字化し、直近の10-12月期は経常利益段階で前年同期比7割増益を達成した。自動車生産の増加が見込まれる来期の収益改善期待は強い。[配当利回り3.20%]
●エクセディは来期大幅増益と配当増額に期待
エクセディ <7278> はクラッチ、トルクコンバータ部品を主力とする世界有数の自動車用駆動系メーカー。第1四半期決算を終えた昨年7月の段階では、今期の税引き前利益は5億円(前期比96.7%減)に急減する予想だったが、中国をはじめとする受注回復やコスト削減を背景に上方修正を繰り返し、現時点では110億円の計画だ。四半期業績をみると、10-12月期に増益へ切り返すなど、収益回復は顕著で来期は大幅増益が有力視される。今期配当は60円と前期から30円減配を見込むが、業績回復が進めば来期は90円に戻す可能性が高い。株価は配当の権利落ち後に売りに押される場面もありそうだが、予想PER12倍前後と利益面での割高感はなく、来期業績を見越した買いが期待できそうだ。[配当利回り3.33%]
●イーグル工はEV領域で新たなニーズ取り込みへ
イーグル工業 <6486> の今期配当は年間50円(前期と同額)を計画しており、11期連続減配なしと安定配当を続けている。直近3ヵ月の10-12月期は経常利益35億4800万円(前年同期比13.9倍)と9四半期ぶりの増益を遂げた。主力の自動車・建設機械業界向けにメカニカルシールの需要が回復したほか、新造船向け製品の採算改善や一般産業機械業界向けで前年同期に実施した赤字受注に伴う引当金がなくなったことも利益拡大につながった。足もとでは環境・省エネ分野に傾注するなか、欧州自動車メーカーから電気自動車(EV)モーター用メカニカルシールの受注獲得に成功している。脱ガソリンの流れが加速するなか、EV領域での活躍余地は大きそうだ。[配当利回り3.95%]
●荒川化はPBR0.5倍と見直し余地大きい
化学メーカーの荒川化学工業 <4968> は、主力製品である製紙用薬品を筆頭に、印刷インキ用樹脂、粘着・接着用樹脂で国内トップクラスの実績を持つ。足もと10-12月期業績は、機能性コーティング材料用の光硬化型樹脂で5G関連分野などの販売が伸び、経常利益14億1700万円(前年同期比13.9%増)と2ケタ増益の好決算となった。堅調な業績動向を踏まえ、通期業績予想を上方修正し、経常利益は32億円(前期比9.3%増)に伸びる見通しだ。配当は年間44円(前期と同額)を計画し、配当利回り3.23%と高水準にある。一方、指標面はPBRが0.5倍台と会社解散価値の半分程度に過ぎず、株価の水準訂正余地は大きい。[配当利回り3.23%]
●奥村組は業績、配当とも一段の増額に含み
奥村組 <1833> は坑内作業無人化などトンネル工事に強みを持つ関西地盤の準大手ゼネコン。2月10日、4-12月期決算発表と同時に、通期の経常利益予想を従来の96億円から110億円へ上方修正し、減益率が17.2%に縮小する見通しとなった。土木工事の順調な進捗などを業績上振れの理由に挙げている。併せて、配当も前回予想の96円から111円に引き上げている。同社は業績予想、配当予想いずれも保守的で期中に上方修正する傾向が強い。特に本決算発表前の4月下旬から5月上旬にかけては、前期まで6年連続で増額修正した経緯があり、一段の上振れに期待したい。[配当利回り3.55%]
●信和は底堅い建築需要を背景に受注回復へ
信和 <3447> は建設現場で使われるシステム足場で国内シェアトップを誇る仮設資材のリーディングカンパニー。今期は新型コロナウイルス感染拡大の影響でスタートこそ低調だったものの、その後は底堅い建築需要を背景に巻き返しをみせている。安全措置資材など高付加価値品の販売が好調なことに加え、コスト削減の進展なども考慮し、通期業績予想を2回引き上げた。配当も同じタイミングで増額修正しており、期末一括配当は33円(前期は44円)を予定する。来期は仮設資材部門の受注回復が見込まれるなか、業績、配当ともに大幅な改善が期待される。[配当利回り3.75%]
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