【市況】明日の株式相場に向けて=“気迷い相場”で迷わないために
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
今の全体相場の地合いをひとことで言えば「迷い」が生じている、ということだと思われる。株式市場という大きな枠のなかでどこにマネーを振り向けるかということは投資家サイドにとって重要なポイントだが、もう一つ重要なのはそのタイミング、いわゆる時間軸の概念である。いつも収穫に恵まれる季節ばかりではない。実る時に資金を投下するのは当然として、実らぬ時には資金を引かなければならない。新型コロナウイルスは人類にとってエイリアンにも等しい難敵であったが、これも人類の知を結集したワクチンの開発で収束の道筋が見えてきた。新型コロナがいったん収束したとしてもこれまでのような日常は戻らず、企業もウィズコロナ時代とどう向き合って経営を進めていくかということが課題として残される、と考えられていた。ところが現在のコンセンサスは、マーケット目線としては明らかにウィズコロナではなくアフターコロナ(コロナがない世界)に傾いている。
経済が正常化の方向たどり、依然と変わらない我々の日常が戻ってくることは誰もが望んでいる最高の景色のはずだが、株式市場は必ずしもそうではない。例えばここから先、資金を寝かせておいてよい時間がどのくらいあるのか、ということを慎重に計算しはじめたようなフシがある。全体指数の動きでいえば、2月19日以降きょうまでの9営業日、日経平均もTOPIXも日替わりで交互に上げ下げ(前日比プラスとマイナス)を繰り返してきたが、これは気迷い相場を象徴するものだ。また、上げ下げの繰り返しだけでなく、日々のボラティリティ(株価変動率)の高さが市場センチメントの不安定ぶりを映し出す。
これまでマーケットを支えてきた過剰流動性、マネーの絨毯(じゅうたん)が強力なセーフティーネットとなっていたが、これが取り除かれることへの恐怖がある。緊急事態宣言の発令に伴い飲食店へ一律支給された1日6万円の協力金が、受ける側によっては過剰支援となっている実態が報じられたが、株式市場にとっても世界の中央銀行の徹底的な金融緩和策、そして各国政府による掛け値なしの財政出動は、表現は悪いがコロナマネーによる“焼け太り”的な超金融相場の土壌を生んだ。今は現実問題として、アフターコロナ後の経済を見積もるには時期尚早だが、「景気は気から」と言われるように、人々の新型コロナに対する恐怖感が急速に薄まっていく時、そこが株式市場の上昇トレンドが勢いを失う時で、少なくとも数カ月の調整は覚悟しておく必要はあると思われる。
ただ、今月の中下旬にかけての調整は買い場である可能性が高い。市場筋からは「GPIFをはじめ国内の年金系資金による1兆円規模の利益確定売り需要が顕在化する。それが分かっているから、外国人も今は資金を待機させている」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘がある。週初の当欄で、3月の月間パフォーマンス(前月末比較)は過去10年間を振り返って日経平均・TOPIXともに勝率4割、しかし4月は勝率7割ということに触れたが、機関投資家の期末に向けた益出しによる下り坂で仕込み、4月新営業年度でのニューマネー流入で値上がりを期待するというのは単純だが分かりやすい考え方だ。
個別では、証券会社の目標株価引き上げなどもあって海運株が強い動きをみせている。大手海運以外で、原油市況上昇を追い風に共栄タンカー<9130>や含み資産が豊富な飯野海運<9119>などに注目。また、不動産株にも資金シフトの動きがみられる。バリュー株の素地が光るフジ住宅<8860>やテーオーシー<8841>の押し目買いに妙味がある。短期リバウンドを狙うのであれば、QDレーザ<6613>に売り一巡感があり、振り子が戻ってくるタイミング。民生用網膜走査型レーザアイウェアでグローバルニッチトップの資質を持つ。
あすのスケジュールでは、2月上中旬の貿易統計が朝方取引開始前に財務省から発表される。海外では中国で全国人民代表大会(全人代)が開幕するほか、2月の米雇用統計に注目度が高い。このほか、1月の米貿易収支、1月の米消費者信用残高なども発表される。(銀)
出所:MINKABU PRESS