【特集】進む都市のDX化、今春「スーパーシティ関連株」が舞い上がる <株探トップ特集>
トヨタが中心となって進める「ウーブン・シティ」プロジェクトがいよいよスタート。政府は「スーパーシティ」構想の実現に向けた対象区域を公募中で、未来社会を担い得る関連銘柄への関心が高まっている。
―トヨタのプロジェクト始動で注目度アップ、国家戦略特区の選定に関心高まる―
トヨタ自動車 <7203> が中心となって進める未来の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」の建設が本格的にスタートした。このプロジェクトは、あらゆるモノやサービスが情報でつながっていく時代を見据え、技術やサービスの開発と実証のサイクルを素早く回すことで、新たな価値やビジネスモデルを生み出し続けることが狙い。先端技術を導入・検証できる場とし、社会課題を解決するイノベーションに取り組むという。都市のデジタルトランスフォーメーション(DX)化を巡っては、内閣府が未来社会を先取りした「スーパーシティ」構想を実現する対象区域の公募(4月16日まで)を行っており、関連企業のビジネス機会が広がりそうだ。
●先端技術で社会課題を解決へ
ウーブン・シティは、トヨタ自動車東日本の東富士工場跡地(静岡県裾野市)を活用し、将来的に約70万平方メートルに2000人以上の住民が暮らす都市が想定されている。このプロジェクトでは、 自動運転やモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)、パーソナルモビリティ、ロボット、人工知能(AI)技術など、さまざまな領域の新技術をリアルな場で実証する予定。地上に自動運転モビリティ専用、歩行者専用、歩行者とパーソナルモビリティが共存する3本の道を網の目のように織り込み、地下にはモノの移動用の道を1本つくる計画だ。こうしたトヨタの取り組みは、100年に一度といわれる自動車業界の大変革に対する危機感が背景にあるとみられ、豊田章男社長は2月23日に行った地鎮祭でのスピーチで「未来に向けた歩みを進めていく」と述べ、自動車会社からモビリティカンパニーへの変革を目指す意向を改めて示した。
トヨタはウーブン・シティの実現に向けて多くの企業や研究者と連携するとしており、2020年3月にNTT <9432> と技術基盤(プラットフォーム)づくりを目的に資本・業務提携。同年10月にはKDDI <9433> と通信技術及びコネクテッドカー(ICT端末としての機能を持つ自動車)技術の研究開発を促進するため新たに資本・業務提携した。また、今年2月下旬からウェザーニューズ <4825> とコネクテッドカー情報を用いて道路凍結を推定する実証実験を行っている。
このほか、トヨタの自動運転システム構築を支援しているALBERT <3906> [東証M]や、トヨタと取引関係にあるヴィッツ <4440> などにも注目したい。
●国家戦略特区を目指す動き続々
一方、政府は30年頃に実現される未来社会を先取りした「スーパーシティ」構想を掲げており、今年4月の公募締め切り後に国家戦略特区が決定される見通しだ。スーパーシティではAIやビッグデータといった先端技術を活用し、自動走行・自動配送、キャッシュレス、行政手続きのワンスオンリー化(最初の手続きを行えば、その後のすべての申請・手続きは個人端末からインターネットで簡単に処理できること)、遠隔医療・介護、遠隔教育などを積極的に導入した便利で快適な最先端都市が想定されている。
国家戦略特区の区域指定に名乗りを上げている茨城県つくば市は、安藤・間 <1719> 、鹿島 <1812> 、アイサンテクノロジー <4667> [JQ]、楽天 <4755> 、三菱電機 <6503> 、CYBERDYNE <7779> [東証M]、凸版印刷 <7911> 、丸紅 <8002> など51事業者と連携。インターネット投票やドローンによる配送、健康寿命延伸・救急医療の高度化などのサービスを実現する構えだ。
同じく特区指定を目指している群馬県前橋市では、関電工 <1942> 、日本工営 <1954> 、チェンジ <3962> 、ユーザベース <3966> [東証M]、ニューラルポケット <4056> [東証M]、ドリームインキュベータ <4310> 、ギフティ <4449> 、サイボウズ <4776> 、日本通信 <9424> 、エムティーアイ <9438> 、学研ホールディングス <9470> 、NTTデータ <9613> など154の連携事業者が選ばれた。
また、長野県松本市はツクイホールディングス <2398> 、エア・ウォーター <4088> 、沢井製薬 <4555> 、ENEOSホールディングス <5020> 、エラン <6099> など59事業者と連携。神奈川県小田原市は教育分野でISID <4812> 、データ連携基盤でNEC <6701> 、医療・健康分野でJMDC <4483> [東証M]と長大 <9624> を選定し、香川県高松市はTIS <3626> 、エルテス <3967> [東証M]、穴吹興産 <8928> 、ソフトバンク <9434> 、ゼンリン <9474> 、富士ソフト <9749> などが連携事業者として名を連ねている。
●アイリッジ、スマバなどにも注目
これ以外の関連銘柄では、スーパーシティ向けセキュリティー構想を掲げるラック <3857> [JQ]、スーパーシティ実現に有益なデジタルツイン構築を目指して先進の道路計測車両システムの運用を開始したパスコ <9232> 、内閣府及びスーパーシティに取り組む企業を中心に設立されたスーパーシティ・オープンラボに参加しているHEROZ <4382> や自律制御システム研究所 <6232> [東証M]などにも注目したい。
加えて直近では、アイリッジ <3917> [東証M]が2月、子会社でフィンテック事業を展開するフィノバレーが熊本県人吉市のスーパーシティ構想の連携事業者に選ばれたと発表。同社はデジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」による地域経済活性化などのノウハウを生かした人吉市の復旧・復興に資する事業を提案している。
スマートバリュー <9417> は2月、まちづくりのDX化のためのデータマネジメント基盤「Open-gov Platform(オープンガブ プラットフォーム)」の提供を開始した。スーパーシティでは各種IoT・デジタルサービスから生じるデータを連携・利活用することが必須とされており、「都市OS」(都市に存在するエネルギーや交通機関をはじめ、医療、金融、通信、教育などのデータを集積・分析し、それらを活用するために自治体や企業、研究機関などが連携するためのプラットフォーム)をサービス化する。
日立製作所 <6501> は2月、NECやアクセンチュア(東京都港区)、データ社会推進協議会と共同で、内閣府が推進するスーパーシティ構想の実現に向けたデータ連携基盤に関する調査業務を受託した。
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