【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 上昇ピッチ速まるか!?
株式評論家 植木靖男
「上昇ピッチ速まるか!?」
●ウイルスとの戦いが押し上げる資産価格
コロナウイルス軍と人類軍との間で勃発した世界大戦争は、一段と激化しつつあるようだ。人類軍は切り札として期待されるワクチンを開発し実戦に投入し始めた。だが、ウイルス軍も変異して、新たな武器を得て人類軍に果敢に挑んでくる。ワクチン開発で戦況は人類軍優位に、とみられるものの、ウイルス軍も生き延びを賭けている。容易にこの戦いは決着しそうもない。
このため、人類軍は対ウイルス戦に際限なく軍資金を投入している。もはや、資金コントロールは統制不能の状況にあるとみてよい。
かくして、各国政府はウイルス戦に完全勝利するまでは資金を出し続けることになる。これは従来のカネ余りという一語では済まされない、とんでもない段階に入っているかにみえる。
こうした状況下で、市中に流れた資金が巡り巡って株式や債券、そして金(ゴールド)、あるいは仮想通貨に流入する。これが資産価格上昇の背景である。
しかし冷静に考えれば、各国政府は国債という証文を出してお金を借りているのだ。だが、借りたお金は返すのが世の習いだ。では、どのようにして返済資金を調達するのか。富裕層に対する資産増税か、国民一般からの消費増税による徴収か、はたまたインフレか。どの選択肢を政府は取るのであろうか。
ポピュリズム風潮の今日、答えは明白である。
であれば、株式市場にどのような影響をもたらすのか。1~2年後には市場は沸騰して手がつけられなくなる――これは夢か幻か。
●情報通信関連の出遅れ銘柄に注目
ところで、日経平均株価は昨年11月下旬からの1ヵ月に及ぶ高値もみ合いを離脱し、上昇トレンドに入った。だが、いままでのところ、二進一退といった段階だ。相場は水準が上がるにつれて上昇ピッチが速まってくるのが定石である。そのタイミングが刻一刻と近づいているのではないか。早ければ1月最終週からと期待している。折しも海外筋と信用取引の買い増加がみられるほか、米国では新大統領誕生でハネムーン期間(就任後100日間はメディアなどが政権批判を控える傾向がある)に入っている。当面、市場が嫌がるような手は用いないとみる。
さらに個別銘柄でも、市場が唖然とするような東京電力ホールディングス <9501> の急騰や、「なぜ?」との言葉が口をついて出てしまうほどの上げをみせるニコン <7731> のような銘柄の出現、これらは市況の強さの証しでもある。
ということで、いよいよ株価の急騰期に入るか。または可能性は低いが、ここで一服して3月相場に賭けるか。あるいは無念ながら、ここで高なぐれ現象(高値圏にきた相場が下落すること)に転じて上昇基調を終えるか。日遠からずして結論が出よう。
さて、当面の物色動向はどうか。ここ数日の動きで、この上昇基調が続く限り 半導体関連を含む情報通信関連株が主役であることが明確になってきた。ただ、決算発表を控えて、すでに好業績が株価に織り込まれている銘柄は避け、出遅れ関連株に注目したい。ウエハーの需要が急回復しているSUMCO <3436> 。パソコン部品や関連サーバーの受注が好調なイビデン <4062> 。さらに電気自動車(EV)向けフィルムコンデンサーの生産能力を倍増させるニチコン <6996> 。半導体関連の航空輸送が好調な近鉄エクスプレス <9375> などがその対象となる。
2021年1月22日 記
株探ニュース