【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─ 金融緩和の継続が株高を支える!
株式評論家 杉村富生
「金融緩和の継続が株高を支える!」
●メインストリートの現状は厳しいが…?
激動の2020年が終わろうとしている。コロナに明け、コロナに暮れた1年だった。しかし、ウォールストリート(株式市場→金融街)は悪くなかった。いや、絶好調と表現して良い。なにしろ、3月安値~12月高値(ザラバベース)では日経平均株価が64.5%、NYダウが66.6%の急騰劇を演じている。だれがこんな展開を予想できただろうか。
古来、パニックは政策の母、という。マーケットが動揺し、人々がパニックに陥る度に政策対応は強化される。最後は政策総動員態勢だ。そして、危機は必ず克服できる。これが、歴史の教訓である。株価はそれを先取りする。
今回は各国中央銀行の超低金利政策、流動性の供給、各国政府のドラスチックな財政出動(世界規模のコロナ対策費の総額は1300兆円)の効果だと思う。景気は4~6月が底になった。しかし、雇用の回復は鈍い。このため、金融緩和政策は継続されるだろう。
この結果、株高が続くことになる。半面、メインストリート(実体経済→商店街)の現状は厳しい。新型コロナウイルスのパンデミックは収束の兆しがみえず、変異種が出現している。医療関係者の苦労、サービス業関係者の苦境は察するに余りある。
国内的には菅政権の支持率が急低下しているのが気掛かりだ。この絡みでは解散・総選挙のタイミングがポイントになろう。さらに、東京五輪が開催できるかどうか、これは株価に大きな影響を与える。
●イノベーションは世界を救う!
テーマ的にはやはり、イノベーション(技術革新)がメインとなろう。AI(人工知能)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、EV(電気自動車)、自動運転、再生可能エネルギー、5G(次世代通信システム)、電子行政、EC(電子商取引)関連セクターは2021年の年間を通じ、物色されるだろう。
全固体電池、水素、電子認証、ビッグデータ、クラウド、 セキュリティ、ブロックチェーン、QRコード、IoT、MaaS、VR・AR、量子コンピューターなども見逃せない。筆者はイノベーションが世界を救う、と主張している。
自動運転にはLiDAR(センサー)が不可欠だ。この分野のトップ企業はナスダック上場のベロダインライダーである。ニコン <7731> はこの会社に出資するとともに、Lidarの受託生産を行っている。21年3月期の純利益は500億円の赤字予想だが、来期は間違いなく浮上するだろう。
豊田通商 <8015> は世界各国で再生エネの発電事業を展開するユーラスエナジー(風力278万KW、太陽光34万KWの能力を有し、国内の風力では79万KWとシェアトップ)を子会社(60%出資)に持っている。洋上発電事業(着床式)に参入する。
三井金属鉱業 <5706> には全固体電池向けの「固体電解質」の生産という材料がある。年明けには量産を始める。業績は好調だ。1株利益は21年3月期が223円、22年3月期が348円と一部調査機関では予想されている。この3銘柄は21年に株価水準を大きく変えることになろう。
小物では引き続いて、EV関連のインスペック <6656> [東証2]、水素関連の日本精線 <5659> 、5G関連のJTOWER <4485> [東証M]、情報セキュリティのバリオセキュア <4494> [東証2]、映像通報システムのドーン <2303> [JQ]などに注目できる。
2020年12月25日 記
株探ニュース