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【特集】アンジェス Research Memo(3):新型コロナウイルス感染症ワクチンはより大規模な第3相臨床試験も検討に入る

アンジェス <日足> 「株探」多機能チャートより

■新型コロナウイルス感染症向けワクチン及び治療薬開発について

1. 新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発状況について
新型コロナウイルスの世界の感染者数は2020年10月末時点で4,400万人超と8月時点の2千万人超から3ヶ月で2倍以上に増加するなど、再拡大期に入っている。ドイツやフランスでは一部エリアでロックダウンを再開するなど深刻な状況となりつつある。国内についても一時の状況と比べると感染者数や死亡者数は落ち着いているものの、予断を許さない状況が続いており、治療薬並びに予防用ワクチンの実用化が切望される状況であることに変わりはない。

こうしたなか、アンジェス<4563>は2020年3月に大阪大学と共同でプラスミドDNA※1製法を用いた予防用ワクチンの共同開発を行うことを発表した。ワクチンは、新型コロナウイルスの遺伝子をプラスミドに挿入し、このプラスミドを大腸菌で大量培養した後にDNAを抽出して製剤化する。無害化されたDNAワクチンを投与することで、新型コロナウイルスに対する免疫(抗体※2)を作り、感染症の発症や重症化を防ぐことが可能となる。

※1 プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。一般的に環状の2本鎖構造を取り、染色体のDNAからは独立して複製を行う。その独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして創薬などで利用されている。このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅する。プラスミド製法では、HGF遺伝子治療薬「コラテジェンR」が上市済みであり、製法そのものについての安全性は確認されている。
※2 ウイルスや細菌などの抗原が体内に入り込んだとき、そのたんぱく質に反応し、体から追い出すためにできる対抗物質。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するDNAワクチンの開発状況について、同社は2020年11月20日に第2/3相臨床試験について発表した。治験施設における治験審査委員会(IRB)で承認され、準備が整い次第、接種を開始する※。2020年10月12日に大阪大学医学部附属病院で実施していた第1/2相臨床試験において、予定の30症例全ての接種が完了している。これに先立って実施した大阪市立大学医学部附属病院での第1/2相臨床試験の成績も含めて、安全性及び有効性についての初期的な試験結果については、当初の見込み以上に時間がかかっているが、引き続き分析を進めている。第2/3相臨床試験で用法用量を確定したのち、新型コロナウイルス感染症予防効果を検証する大規模な第3相臨床試験を実施する予定としている。

※試験概要は、健康成人志願者を対象として、筋肉内接種における治験薬の安全性及び免疫原性の評価のための無作為化・二重盲検・プラセボ対照試験。目標症例数は500例(用量2.0mg:(1)250例による2週間間隔での2回接種、(2)250例による4週間間隔での2回接種、(1) (2)はそれぞれプラセボを50例含む)。関西・関東エリアの8施設で、試験期間は2020年11月~2022年3月を予定している。


ワクチン開発プロジェクトの発表以降、同プロジェクトには多くの企業が参画している。ワクチンの製造に関してはタカラバイオをはじめ、AGC Biologics S.p.A.、Cytiva、シオノギファーマ(株)、Kaneka Eurogentec S.A.が参画している。

こうしたワクチンの開発や量産体制構築に向けた費用については、国の助成金等で賄われることになる。AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に、2020年5月に採択されており、研究開発費20億円(直接経費、研究開発期間:2020年6月-2021年3月)の支援を受けることが決定しているほか、厚生労働省が公募した「令和2年度ワクチン生産体制等緊急整備事業」にも同年8月に採択され、約93億円の交付金(事業期間:2020年8月-2022年3月)を受けて、タカラバイオが中心となって大規模生産体制を構築していくことになっている。そして、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募)にも採択され(金額は非開示)、新型コロナウイルス(COVID-19)を標的とした DNA ワクチン臨床開発を推進している。そして、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募)にも採択され(金額は非開示)、新型コロナウイルス(COVID-19)を標的とした DNA ワクチン臨床開発を推進している。なお、2020年12月期第3四半期でAMEDから助成金の一部が入金され前受金に5億63百万円を計上した。

また、世界の新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発状況について見ると、英アストラゼネカ<AZN>や米モデルナ<MRNA>などが第3相臨床試験を実施中で、ロシアでは臨床試験中のワクチンが特定で承認されたという報道もある。こうしたなか、同社は出資先である米Brickellと共同でワクチンの共同開発を米国で進めていくことを2020年9月に発表している。


新型コロナウイルス感染症治療薬「AV-001」米国FDAよりIND(新薬臨床試験開始)承認取得。ワクチンと治療薬の両方のパイプラインを持つことに
2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「AV-001」の米国での臨床試験開始
2020年11月13日に、カナダのVasomuneと共同開発を進めている「AV-001」を中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬について、米国FDAからIND(新薬臨床試験開始申請)を行い、米国での臨床試験の開始許可を得たことを発表した。速やかな臨床試験開始に向けて準備を進めている。

「AV-001」は、中等度から重度のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)及びARDS(急性呼吸窮迫症候群)肺炎患者の治療を目的としたTie2チロシンキナーゼ受容体アゴニストであり、Tie2アンジオポエチン経路を活性化させることで、血管機能を正常化させ、血管内皮バリアを回復させる機能を持つ。

同社は2018年7月にカナダのバイオベンチャーであるVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品の共同開発契約を締結した。具体的には、Vasomuneが創製した化合物(Tie2受容体アゴニスト化合物)について全世界を対象とした開発を共同で進め、開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して、契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払うというもの。同社はHGF遺伝子治療用製品の開発を通じて蓄積した血管領域の疾患に関する知見とノウハウを、今回の共同開発で生かしていくとしている。

2020年8月に、Vasomuneが「AV-001」の開発について、米国国防総省からの「医療研究プログラム(PRMRP)」として280万ドルの助成金を獲得しており、米国でも注目度の高いプロジェクトである。

これにより同社は、新型コロナウイルス感染症を対象とする、ワクチンと治療薬の両方のパイプラインを持つこととなる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《NB》

 提供:フィスコ

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