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【特集】損切り一辺倒では「安値覚え」と、リベンジ買いのゴング鳴らす

コロナ相場でしくじり、とりでみなみさんの教訓~第3回

登場する銘柄
富士フイルムホールディングス<4901>

文・イラスト/福島由恵(ライター)、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)

とりでみなみとりでみなみさん(ハンドルネーム・40代・男性)のプロフィール:
普段は残業&休日出勤に追われる多忙なサラリーマン。使用中の証券口座のパスワードを忘れること5回以上という、自称「超長期投資家」。投資に割く時間の最小化を図りながら、最大の投資効果が出るよう目指す。長期で伸びそうな産業に着目し、10~20年で株価が上昇する銘柄をじっくり探す。投資歴は17年。200万円を元手に資金を追加しながら、「50歳で資産3億円」を目指している。現在の運用資産は計画より1年半遅れだが約1.4億円に。相場が荒れようがその場に居続けることが大切と、足元のような不安定な状況になっても継続投資の姿勢は揺るがない。

第1回「資産半減、億り人陥落の憂き目から生還した『とりでアラート』とは」を読む
第2回「『俺ってまだ買えるじゃん』と勘違いしてハマった悪魔の取引」を読む
 1億6000万円もあった資産が2カ月も経たないうちにその半分まで削られたとりでみなみさん(ハンドルネーム、以下、とりでさん)だが、わずか3カ月ほどで資産を再び1億4000万円にまで到達させるというリベンジを果たしている。
 もちろん日経平均株価がコロナの大暴落前の水準から9割程度まで戻していることを踏まえれば、相場の上昇が追い風どころか神風になった。とはいえ、これはあくまで市場平均の話で、個別の銘柄の中には暴落前から半分程度にとどまるといった回復が鈍い銘柄もある。
 
 ではいったい、とりでさんは、どんなふうに個別株投資で、窮地を乗り越えたのか。その鍵になったのは、窮地に追い込んだ「信用買い」の使い方を知ったことだった。
窮地でもしぶとく買い向かいを続行
 そもそもの失敗は、大暴落の中でレバレッジを効かせた信用取引で、底値を拾おうと買い向かったことだった。現物株でも大きな痛手を被りやすいのに、レバを掛けた信用はダメージに拍車を掛けてしまう。
 例えば、全体資産が100万円の人がA株に10万円を投資した後に、その株が30%下落したとする。この場合の含み損は3万円となり、全体資産の評価額は3%減の97万円になる。
 
 しかし、現金10万円を委託保証金に入れて、信用取引でA株について30万円の買いポジションを持ったとしよう。この場合の含み損は9万円と上の例の3倍になり、全体資産の評価額も9%減の91万円になる。
 
 加えて、この保証金に現金のみならず現物株を入れると、今回のような相場の大暴落局面では、さらに資産を減らしてしまう。担保に入れた現物株に含み損が生じ、その影響が担保の価値を下げることになるからだ。
 資産を半減させた諸悪の根源は信用買いにあったが、不思議なものでこの窮地から脱出するポイントになったのも信用買いだった。同じ「信用買い」が諸刃の剣になるのが、株式投資の奥深さであり、恐ろしさでもある。
 
 とりでさんにとって悪魔の存在になっていた信用買いが、救いの神に変身したのはなせか? そこには、2つのポイントがあった。
 
とりでさんに舞い降りた大きな幸運
 
 1つは、本人がかねて「投資の師匠」として信頼しているwww9945さん(ハンドルネーム、以下9945さん)から、的確なアドバイスをもらえたこと。9945さんは、『株探』プレミアムの連載に何度か登場している億万投資家のすご腕さんだ。
 
 得意な投資法は、自身の「街角ウォッチング」で見つけた有望銘柄を対象に、信用取引を使い、株価上昇にともなって徐々にその銘柄を買い増す手法。いわゆる「増し玉」「ピラミッティング」と呼ばれるトレンドフォロー型のやり方だ(参考記事)。とりでさんにとっては、投資のよきアドバイザー、そして気の合う飲み友達でもある人だ。
 
 そしてもう1つのポイントは、初回の記事で紹介したように富士フイルムホールディングス<4901>という短期の急騰銘柄をつかめたことだ。これは幸運といえば幸運だが、「運も実力のうち」と言われるように、運を呼び寄せる結果となったのは、必死の努力があってこそのことだ。
 
 とりでさんも今回の暴落にただ呆然としていたのではなく、「これはやばいかも」と感じたときにも、焦りつつも冷静に対処法を講じていた。これなしに、"リベンジ投資"のゴングは鳴らなかった。
師匠からの教えは「66%の警告」と守りながらも攻める姿勢
 まず1つ目のポイントを振り返ろう。9945さんがくれたアドバイスは、主に2つあった。
 
それは  
1.  委託保証金(信用)維持率は、最終ボーダーラインの33%に達する前に、「66%」の水準を意識。ここに達したら危険水域と心得て、急いで何らかの対処をすべき
2.  同維持率向上のためには信用取引のポジションを落とすことが急務だが、単に損切りをするだけではなく、後の株価リバウンドを狙う「攻めの買い」にも並行して挑み次につなげる

 ――というものだった。
 
 このアドバイスをしっかり飲み込み、実践したことが、とりでさんの活路を開くことになる。では具体的にどんなステップでリカバリーをしていったのか。
300%以上あった維持率は最悪50%割れまで悪化
 まず信用買いを本格的に開始する今年の年初には、300%以上あった(2回目記事)。この維持率は、信用取引で建てた商いに対しての保証金の割合を示し、
 
 「保証金の価値 ÷ 信用取引で建てた商いの金額」×100で算出される。この数字が大きいほど、手持ち資金に対して健全性の高い取引をしている状況と言える。
 
 とりでさんは暴落相場の中で信用取引のレバレッジを効かせて買い向かった結果、当初の300%超が、50%を割り込むまでに転落してしまった。
維持率33%がボーダーラインという意識はあったが…
 この保証金維持率の最低ラインは証券会社によって異なるが、「33%」や「30%」辺りで設定されているのが一般的だ。そして、この、ボーダーラインを割り込むと、「追証」と呼ばれる決められた期日までの追加の保証金の差し入れが必要になる。
 それが用意できないと現在建てている信用ポジションを強制決済されたり、保証金に差し出している現物株の一部を強制売却されたりする事態に追い込まれてしまうのだ。
 これは信用取引のイロハのイともいえる基本事項で、とりでさんも「ボーダーの33%は下回ってはいけない」という認識を念頭に置きつつ取引に乗り出していた。
 
 ただし、開始当初の維持率が300%以上だったことから、簡単には33%割れにはならないと、本人は高をくくり、知らないうちに「維持率は十分だから、まだ余裕で買える」と気持ちのゆるみが生じていた。そして気づいたときには、維持率が50%割れになっていた。
維持率66%割れするとメンタルにも響いて悪循環に
 
 そこまで下がると、かなりヒヤッとするが、冷静に考えれば、50%はまだゲームオーバーの状態ではない。50%割れ程度で収まったのは、師匠である9945さんから「維持率66%」についてのアドバイスを受けたことがある。
 
 9945さんが「66%は危険水域」とするのは自身の経験による。それは、
 
ここから先は資金状況の悪化に拍車がかかりやすくなる
さらにメンタル面のダメージが大きくなり、冷静な判断ができずドツボにハマりやすくなる

 ――からだ。
 
 これはあくまでも数字的な裏付けや理屈が伴うものではなく、9945さんが信用取引で幾多の失敗と成功体験を重ねる中で獲得した体感的セオリーだ。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。


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