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【特集】巣ごもりで激増“通信量”、「データセンター関連」成長に拍車 <株探トップ特集>

テレワーク、オンライン学習、動画配信、オンラインゲーム――。ネットサービスの利用拡大が進み、データ通信量も急増している。それに伴って存在感を増しているのがデータセンター関連株だ。

―ネット利用さらに拡大で存在感、増設も進み関連株に脚光―

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛を受けて、データセンター の存在感が増している。テレワーク やオンライン学習の利用が拡大しているほか、外出自粛によりYouTube、Netflixなどの動画配信オンラインゲームを楽しむ機会が増え、それに伴いデータ通信量が急増していることが背景にある。

 政府は5月25日、東京都など5都道県への緊急事態宣言を解除した。これにより4月7日に東京都や大阪府など7都府県に発令され、16日に全都道府県に拡大した緊急事態宣言は約7週間ぶりに全面解除されたが、テレワークやオンライン学習の利用は今後も拡大するとみられている。また、5Gの商用サービスでそれに伴うさまざまなサービスも広がりを見せるとみられ、データセンターの存在感は更に増すことになろう。

●新型コロナ感染拡大でデータ通信量増大

 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(東京都千代田区)の発表によると、5月18日から22日の同社が運営するインターネット接続サービス「OCN」の平日昼間帯のデータ通信量は、新型コロナウイルス感染拡大による影響が出る前の2月25日から28日と比較して最大で48%増加した。この背景には、テレビ会議などテレワークの拡大や臨時休校中の子どもの動画視聴、SNSの利用などがあるとされる。

 緊急事態宣言の全面解除でこうした状況は一巡するとみられているほか、平日昼間のデータ通信量は増えている一方で、夜間帯のピークには至っていないことなどから、まだ通信インフラの容量には余裕があり、通信回線がパンクするような事態にはならないとみられている。ただ、5Gサービスの広がりなどに伴い今後、データ通信量の増加でサーバの処理能力が逼迫してしまう可能性もある。これを受けて、データセンター増設の推進や増設計画の前倒し、新設などの設備投資が進むと予測されている。

●データセンターの延床面積は年4.6%成長

 こうした状況を踏まえて、データセンター各社も能力の増強に動き出している。IT専門調査会社であるIDC Japan(東京都千代田区)は4月7日、国内事業者データセンター(DC)の延床面積予測を発表した。それによると、2019年末時点の国内事業者データセンターの延床面積の合計は225万400平方メートルだったが、24年には281万7000平方メートルに増加し、年平均の成長率は4.6%増に達する見通しだ。

 また、20年から24年に新設されるデータセンターは延床面積ベースで毎年10万平方メートルを超える見込みという。クラウドサービス事業者大手であるアマゾンやマイクロソフト、グーグルなどもデータセンターのキャパシティを急ピッチで拡張しており、これらを受けて、国内の大規模データセンターも建設ブームが続くとみられている。

●新・増設ラッシュで関連銘柄に注目

 データセンターの新・増設ラッシュは日本ばかりではなく、世界的にも同様の動きがみられているが、これを先取りする動きも出始めている。インテルやAMDなど半導体に関連する企業の株式で構成されるSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は、3月下旬頃までは調整していたが、足もとではデータセンター向け半導体需要の拡大期待から、アフターコロナの市況改善を先取りした動きとなっている。

 株式市場でも、既に半導体製造装置関連銘柄などを中心に半導体関連銘柄への関心が高まっているが、一方でそのもととなるデータセンター関連株への関心はそれほどではない。ただ、テレワークやオンライン学習、オンラインゲーム人工知能(AI)IoTビッグデータなどの広がりで、積み上がるデータを効率的かつ安定的に運用できるデータセンターの利用は今後も増加が見込まれる。関連する企業にとっては、増設に伴う償却負担の増加はあるものの、関連銘柄の注目余地は大きそうだ。

●BBタワー、さくらネットなどに注目

 ブロードバンドタワー <3776> [JQ]は、東京や大阪などに拠点を構える都市型データセンターの大手。19年8月に開設した大手町の新データセンターでは、20年3月末の契約率が約7割、稼働率が3割を超えたが、新型コロナウイルスの影響を考慮しても、今期末までに契約率は100%に近づくとの見方が強い。また、これまで培ってきたデータセンターの構築や運用ノウハウを生かし、データセンターの構築と運用をワンストップで提供する新サービスを始めたことも注目される。

 さくらインターネット <3778> は、東京や大阪、北海道にデータセンターを展開する業界大手。20年3月期は、大きな計算資源を高コストパフォーマンスで利用できる「高火力コンピューティング」の「さくらの専用サーバ 高火力シリーズ」の提供などで専用サーバサービスなどが伸長。また、VPS(仮想専用サーバ)・クラウドサービスも好調で営業利益は9億3900万円(前の期比66.6%増)だった。

 TIS <3626> は東京、大阪、富山でデータセンターを展開している。同社グループでは、足もとでクラウド・セキュリティー・データセンター・ネットワークなどのプラットフォーム事業の戦略見直しを実施。今後の競争力強化につながることが期待されている。

 このほか、全国17拠点で都市型・郊外型のデータセンターを展開しているほか、海外でもデータセンターを展開するインターネットイニシアティブ <3774> や、東京、神奈川、大阪、九州の5エリアでデータセンターを展開するシーイーシー <9692> 、埼玉にデータセンターを設け、ITインフラサービス事業を展開するAGS <3648> などにも注目が必要だろう。

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