【材料】リスクを流動化する「マーケットメーカー」イー・ギャランティ江藤公則社長インタビュー(前半)
イー・ギャラ <日足> 「株探」多機能チャートより
コロナ禍のなかでも株価が上昇し、5月19日に上場来高値を更新している企業がある。年間30万件の企業の審査依頼、累計14万超えの信用保証をし、220万社を超える信用情報データを持つ、イー・ギャランティ<8771>。データを根拠として「信頼を可視化」されることが、より重要なっている時代において、同社の存在感はコロナ以前から光っている。今回は、同社の江藤公則社長にお話を伺いました。
■企業間取引におけるリスクヘッジニーズは高まりコロナ以前から
直近の新型コロナウイルス感染症による急激な経済環境の変化で、企業活動における不確実性が大きく増加しています。需要減や供給網の混乱への対応に加え、将来予測ができない状況のなか、企業は中長期的な計画が立てにくく、自らリスクを取りにくい状況になっています。しかし、コロナ以前から、企業間取引におけるリスクヘッジニーズは高まっており、同社の業績は堅調な推移が続いています。
「顧客企業を増やすほど保証残高が積み上がり、受け取る保証料収入が増えるビジネスモデルで、保証残高は2010年の998億円から2020年には4391億円へと拡大し、コロナ以前から堅調に拡大しています。さらに、新型コロナの影響により対面接触が制限されるなかで仕事の仕方も大きく変革し、取引相手とリモートで接触する企業間取引が急速に浸透しました。このような事象を背景に、企業間取引におけるリスクヘッジニーズは高まりを見せており、今後もこの傾向は継続すると考えております」(江藤氏)と話す。
■リスクを流動化する「マーケットメーカー」
企業間で取引すれば、売掛債権などの債権が発生します。ただ、売掛債権は後から支払われるもので、回収できない場合があります。その回収できないリスクを保証する役割を果たしているのがイー・ギャランティ。同社は、世の中になくてはならない存在になってきているのです。江藤氏によると、「引受けたリスクは、定性的な情報を含む当社独自の情報データベース等を活用して分析・審査し、リスクをヘッジしたい金融機関やファンドに信用リスクの流動化を行います。リスクをすぐに流動化することで、当社はマーケット(市場)の役割を果たしています。さらに、流動化にあたっては、あたかも信用リスクを運用手法の一環として投資することができるよう、各機関が引受けやすい形に変換し、リスクポートフォリオを再組成しています」と述べています。
また、新型コロナウイルスの影響による環境変化に対応した商品をタイムリーに開発し、リリースしています。取引先からの支払いサイト延長を受諾した企業に対する、売掛債権の増加をカバーする商品やテレワーク実施下においても支障なく業務が進められるよう、企業の審査・申し込み・請求書発行までがオンラインで完了するサービスの提案、債権買取サービスの提供など、環境の変化に柔軟に対応した商品を展開しています。
なお、リーマンショック当時の保証料率は3.2%まで上昇しています。今回のコロナの影響を受けて、新規契約においては直近の倒産動向を反映し、保証料率は2019年12月時点の1.62%から2020年3月2.13%に引き上げを行っています。今後、新規顧客に関しては3%ぐらいまでの上昇を見込んでいる。リスク量に応じた、保証料率の設定を慎重に行っていきたいとのことです。
■リスクを引き受ける経済インフラとしての機能を果たす
リスクを引き受けて欲しい側とリスクを引き受けたい側をマッチングさせ、すぐに流動化するマーケットメーカーの役割を果たしているイー・ギャランティ。「景気の良かった時期に多くの長期ファンドを組成していたことから、現在も多くの引き受け先がある」(江藤氏)。
コロナ禍において、消毒液、人工呼吸器などの需要が拡大し、大きな受注があるものの、発注先が大きな医療法人ではなく、小さな卸の企業である点に不安を感じる医療機器メーカの保証を引き受けています。「保証をすることで、世の中に必要なものが、必要なところに届く経済インフラとしての役割を果たすのも当社の役割だ」と江藤氏は述べる。
■ストック型のビジネスモデル
同社のサービスを利用したい企業は、イー・ギャランティに一定の保証料を支払うことで、もし債務不履行が発生した場合に同社から保証額を支払われる形になります。これによって、企業は売掛債権等の未回収リスクを最小限に抑えることができます。一方、イー・ギャランティは、企業から一定の保証料が入ってくるため、「ストック型のビジネスモデル」となっており、同社の業績が底堅い理由になっています。売掛金が回収できなくなるリスクを回避したい企業のニーズに応え、高成長を続けているイー・ギャランティ。後半は直近の業績と今後の見通しについて詳しく見ていきます。
(フィスコ 馬渕磨理子)
《SF》
提供:フィスコ