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【特集】検証「脱ハンコ」関連株、ニューノーマルは“印鑑なき世界” <株探トップ特集>

遅々として進まなかった日本の紙・ハンコ文化がついに変わろうとしている。変化あるところに関連株あり。脱ハンコ銘柄を追う。

―制度改革今度こそ本気、「紙・ハンコ」デジタル化加速の恩恵受けるのは―

 新型コロナウイルスの感染拡大で人々の普段の生活にも大きな変化が生まれつつある。マスクの着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)保持、「密閉」「密集」「密接」の「3密」を避けるなどはその一例で、仮に現在の感染拡大が一服して新型コロナウイルス と共生する「ウィズ・コロナ」局面でも、こうした行動変容は続くとみられている。

 人々の生活だけではなく、企業や行政の場でも行動変化が生じているが、最も顕著なものがテレワーク の利用拡大だろう。テレワークは、働き方改革の一環としてその推進が唱えられてきたものの、新型コロナウイルス感染拡大前は普及率はあまり高くなく、2018年の総務省「通信利用動向調査」によると19.1%に過ぎなかった。しかし現在は、新型コロナウイルスの感染予防策としてテレワークの推進が政府によって要請されたこともあり、その利用は急増している。

 ただし、全ての作業がパソコンやインターネットでは済まない場合も多い。日本では、商いの決済などの場面で、紙の契約書や証明書に印鑑を押す慣行があり、テレワーク導入企業でも、印鑑を押すために出勤を余儀なくされるケースもある。

●国を挙げて進められる「脱ハンコ」

 新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴うテレワークの普及により、こうした行政上の手続きや、民間の商慣習で根強く残る「紙・ハンコ」をデジタル化する動きが加速しようとしている。安倍晋三首相は4月27日に開催された経済財政諮問会議で、関係閣僚に向けて「テレワークの推進に向けて、押印や書面提出などの制度・慣行の見直しについて、緊急の対応措置を規制改革推進会議で早急に方針を取りまとめ、IT総合戦略本部と連携しつつ、着手できるものから順次実行していただきたい」と指示した。

 また、政府の規制改革推進会議も4月28日、さまざまな行政手続きの「脱ハンコ」とオンライン化に関して議論を開始した。5月18日には、民間企業同士の契約で、不必要な押印を削減するためのガイドラインを作成するよう関係省庁に提言している。

 また、総務省は文書が改ざんされていないことを証明する「タイムスタンプ」の事業者認定の運用を従来予定していた21年度開始から20年内に早めるほか、電子的な社印である「eシール」についても22年度から1年の前倒しを目指すと伝わっている。こうしたことにみられるように、これまで進まなかった「脱ハンコ」の動きが新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに一気に加速する可能性が高まっている。

●電子契約を進めるGMOグループ

 民間企業では既に、IT企業を中心に「脱ハンコ」の動きが始まっている。今回のコロナ禍に際し、いち早く全従業員の9割にあたる約4000人を対象に在宅勤務に踏み切ったGMOインターネット <9449> グループでは、4月17日にグループのサービスにおける顧客の各種手続きから、印鑑を完全撤廃する印鑑レスと、取引先との契約を電子契約のみとするペーパーレスを決定した。

 同社グループでは、GMOクラウド <3788> が、契約の締結から管理までをクラウド上で実現する電子契約サービス「GMO電子印鑑Agree」を展開している。アメリカやヨーロッパでも利用されているGMOグローバルサイン(東京都渋谷区)の電子署名サービスと、GMOクラウドが20年以上にわたって提供してきたクラウド・ホスティングサービスの実績とノウハウを生かして開発したもので、既に11万社以上で利用されているという。

●弁護士COMは導入企業数を順調に拡大

 電子契約でシェアを拡大しているのが、弁護士ドットコム <6027> [東証M]のクラウド契約サービス「クラウドサイン」だ。インターネットを通じた弁護士へのマーケティング支援が主力事業だが、契約締結から管理まで可能なクラウド型の電子契約サービスとして、15年10月にスタート。20年4月には導入企業数が8万社を突破した。テレビCMやサポート体制の強化などで更に導入企業数を増やしており、今後も契約書管理機能の充実などを進める方針だ。

 NECネッツエスアイ <1973> は5月11日、米ドキュサイン社の販売代理店として電子署名サービス「合意・契約プラットフォーム DocuSign Agreement Cloud」の提供を開始したと発表した。米ドキュサインのサービスは、世界180ヵ国以上、56万社以上の企業で利用されており、日本でも大手企業を中心に顧客が多い。NESICでは、サービスの提供に先立ち、年間約8000件ある取引先との契約書類のペーパーレス化を行っており、ここで得たノウハウの提供も含め、「ドキュサイン」を含めた文書管理関連のソリューションで22年度までに累計売上高10億円を目指すとしている。

●インフォMTやサイバーリンなどにも注目

 このほか、電子契約サービス「BtoBプラットフォーム 契約書」を手掛けているインフォマート <2492> や、ペーパーレス/電子文書に関するソリューションの一環として、「電子契約サービス」を展開しているAGS <3648> 、日本データ通信協会の時刻認証業務認定事業者として、タイムスタンプの関連サービスを提供するサイバーリンクス <3683> 、19年10月からクラウドベースの電子サインサービス「Adobe Sign」の導入を支援する「Adobe Sign スターターパック」を販売している大塚商会 <4768> 、子会社セコムトラストシステムズが、高セキュリティーな電子契約サービス「あんしん電子契約ライト」を展開しているセコム <9735> なども関連銘柄として注目されている。

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