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【特集】強烈“向かい風”のなか高成長、21年3月期「増収増益」企業を追う <株探トップ特集>

21年3月期の経常利益予想を非開示とする企業が続出している。こうしたなか注目されるのが、増収増益計画を明らかにした企業群だ。

―新時代“適応の証”か、業績予想未定続出のなか成長予想の価値―

 怒涛の決算発表ラッシュを通過し、先週までに3月期決算の8割近い企業が本決算発表を終えた。20年3月期は 新型コロナウイルスの感染拡大で終盤にかけて急速に業績悪化が進み、経常利益段階で2ケタ減益となる公算が高い。続く21年3月期は新型コロナウイルスの影響が見通せず、業績予想を未定とする企業が続出する異例の事態となっている。

 こうしたなか、具体的な会社計画を開示し、かつ業績成長を見込む企業はマーケットで高い評価を得ている。そこで今回は事業環境に強烈な逆風が吹き荒れるなかでも、21年3月期に売上高と経常利益がともに伸びる見通しを示し、かつ新型コロナウイルスの影響が軽微とみられる企業群を探った。

●IT関連に好決算銘柄目立つ

 15日までに20年3月期決算を発表した1783社を集計したところ、前期実績とともに21年3月期の経常利益予想を開示した企業は757社と全体のおよそ4割にとどまった。このうち、今期経常増益(黒字転換を含む)を計画する企業は274社。新型コロナウイルス感染拡大の影響による業績悪化が幅広い業種に広がるなか、数少ない利益成長株を業種別にみると、情報通信業の強さが目立つ。デジタル技術で事業を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業や自粛経済下の巣ごもり消費を捉えるIT関連企業が多くみられた。

 以下では、21年3月期に経常増益を計画する274社の中から、20年3月期に増収増益を達成し、新型コロナウイルスの影響が直撃する今期も売上高と経常利益が成長を続ける見通しの中小型株6銘柄をリストアップした。

●グレイスはマニュアルの見直し依頼が殺到

 グレイステクノロジー <6541> は膨大なマニュアルを電子化し、クラウド上で管理・制作する「e-manual」の提供を主力としている。20年3月期は利益重視の戦略を進め、売上高営業利益率50%を誇る超高収益企業だ。前期業績はe-manual導入企業と利益率の高いコンサルティング案件が増加し、売上高、経常利益ともに過去最高を更新した。21年3月期は好採算の大口案件獲得やAI搭載の眼鏡型次世代マニュアル「GRACE VISION」の販売拡大に注力し、経常利益は11億6600万円(前期比23.1%増)と9期連続の最高益更新を見込む。足もとでは テレワークの導入や業務改善のために業務マニュアルの見直し依頼が殺到するなど、コロナ禍においても躍進が期待できそうだ。

●キューブシスはDXビジネスの拡大に注力

 キューブシステム <2335> は金融や流通、通信向けに強みを持つシステムインテグレーター。20年3月期はクレジットカード会社や保険会社向け案件が拡大したうえ、消費税増税対応の特需があった流通業向けが増加し、3期連続の増収増益を達成した。21年3月期は4月にDX事業推進室を設立するなどDXビジネスの拡大に注力するなか、金融向けシステム構築案件を中心に受注が伸び、経常利益は11億2000万円(前期比14.8%増)と6期ぶりの過去最高益更新を狙う。指標面では、予想PER14倍台と同業他社と比べ割安感が強く、上値余地は大きいとみられる。

●Jエレベータは独立系で価格競争力に強み

 ジャパンエレベーターサービスホールディングス <6544> は独立系の エレベーター保守会社。高品質なサービスを低価格で提供することで高成長を続けている。前期は関西、東海、九州の営業拠点拡大などを背景に、エレベーターの保守契約と経年劣化によるリニューアル案件の受注増加が継続し、経常利益27億300万円(前の期比35.1%増)に膨らんだ。21年3月期は新型コロナウイルスの影響で企業の経費削減ニーズが高まるなか、メーカー系保守会社に対する価格面での優位性を前面に出して営業を推進し、保守契約を中心に受注を伸ばす計画だ。なお、同社の期初予想は慎重に見積もる傾向が強く、今期も一段の収益拡大に期待がかかる。

●日ガスは株主還元の切り口でも注目

 日本瓦斯 <8174> は新型コロナウイルス感染拡大の影響について、業務用の需要は減少する一方、主力とする家庭用ガス販売量への影響は限定的とし、自粛経済下で底堅い推移を見込んでいる。また、利益面ではLPガス原料価格の下落が強力な追い風となり、21年3月期の経常利益は122億円(前期比14.2%増)と4期ぶりに最高益を更新する見通しだ。好調な業績を踏まえ、今期配当は前期比30円増の100円と大幅増配を計画する。また、自社株買いなどの追加還元にも含みを持たせており、株主還元の切り口でも目が離せない。

●イーブックは巣ごもり消費が追い風に

 イーブックイニシアティブジャパン <3658> の20年3月期は親会社ヤフーと 電子書籍サービスを統合した効果で、売上高212億8100万円(前の期比43.9%増)、経常利益7億9500万円(同34.1%増)と業績高変化を遂げた。21年3月期はヤフーとの連携強化を通じ、電子書籍事業は2ケタ成長が続く見通しだ。マーケティング投資やサイト機能改善費用がかさむものの、増収効果とコスト効率化で吸収し、経常利益は8億8000万円(前期比10.7%増)と3期連続の最高益更新を目指す。新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が増加していることも追い風になりそうだ。

●エイトレッドはテレワーク移行加速で視界良好

 エイトレッド <3969> は紙の申請書類や決裁業務を電子化して業務効率化につなげるワークフローソフトの開発と販売を手掛ける。中小企業をターゲットした「X-point」を主力とするが、足もとではX-pointのクラウド版を導入する企業が急増している。21年3月期は働き方改革の進展や新型コロナウイルスの感染拡大を背景にテレワークへの移行が加速するなか、X-pointの上位版で中・大企業向けの「AgileWorks」とクラウドサービスの導入が伸びる見込みで、4期連続の2ケタ増収増益を目指す。今期配当は業績拡大に連動する形で、前期比4円増の20円に増やす方針としている。

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