【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 物色銘柄に変化の兆し
株式評論家 植木靖男
「物色銘柄に変化の兆し」
●宣言解除が“逆回転”のトリガーとなるか
日経平均株価は4月第4週、あわやというところで首の皮一枚残して、その後、順調に戻り相場を続けてきた。4月第1週からの戻り相場だが、日柄でちょうど26日間、すなわち一目均衡表で言えば1期(26日)にあたる5月第3週に高値2万0390円をつけている。
この間、いうまでもなく4月7日、緊急事態宣言があり、これが部分的にしろ解除されたところで高値をつけたことになる。
これは単なる偶然かといえばそうではない。この間、政府は必死になって対コロナ対策を模索、実行に移してきた。つまり、わが国にしては珍しく、カネに糸目をつけずといった姿勢をみせた。裏を返せば流動性を供給したのだ。これはどんな好材料よりも株価にとっては最高のプレゼントといえる。
では、今後、株価はどう展開するのであろうか。
だが、ここへきて部分的に緊急事態宣言が解除。いずれ全面解除となれば過剰流動性は逆回転することになる。株価にとってはマイナスに作用する。これはなにもわが国だけではない。世界中、同じ状況といえる。
世界の市場は、そのお手本としてコロナの最大の被害国である米国の市場を注視している。
NYダウ平均は、わが国同様、折しも国家非常事態宣言のもと、すでに3兆ドル弱の財政出動をまとめ、さらに大型減税やインフラ投資などの追加策1兆ドル規模もと期待される中、戻り相場を続けてきたが、5月8日に2万4331ドルの高値(終値ベース)をつけたところで上昇は止まった。経済再開への動きが強まってきたからだ。
その後、株価は3日連続安、水準も1カ月ほど前のそれに戻ってしまった。
市場では、これで戻り相場は終わったとの見方が強まった。だが、米国株はしたたかだ。5月14日に急反発、首の皮一枚残った。大手金融機関が4月が景気の底との見通しを立てていることが株価を支えているようだ。
となると、日本株はコロナ問題に関しては、米国より耐性が強いとされる中、相対的に株価は堅調といえる。
つまり、戻り相場が継続される可能性も残されていることになる。その意味では、緊急事態宣言が改めて検証される5月21日、また月末がひょっとして戻り相場を決定づけるフシ目となることも考えられよう。
●個別材料から業績重視への転換
さて、当面の物色対象はどうか。ここへきて大きな変化をみせつつあるようだ。これまでは業績よりも個別材料を重視する展開であった。これはいうまでもなく過剰流動性相場の大きな特徴である。
だが、緊急事態宣言緩和のもとでは、本来の業績を重視する物色へと転換していく。これまでしっかりしていたトヨタ自動車 <7203> が80%減益を発表した途端、急落をみせているのはその典型であろう。
その観点から注目銘柄として、次の3銘柄をあげたい。
まず、武田薬品工業 <4502> だ。今期業績は最終36%増益としている。コロナ治療薬も7月に治験を始めるという。
次は伊藤忠テクノソリューションズ <4739> だ。テレワークや次世代通信規格5G関連のシステム受注が伸びるという。
最後に、エムスリー <2413> 。製薬会社向けマーケティング支援や治験支援事業、さらに中国では医療従事者向けウェブサイトに登録する医師会員数は300万人を超えるという。安心して持続できる銘柄だ。
2020年5月15日 記
株探ニュース