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【特集】新型コロナ相場第2幕、「院内感染防止」関連株にマーケットの視線 <株探トップ特集>

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、株式市場では院内感染防止をテーマに関連銘柄が投資家の関心を集めている。ここから株価上昇余地のある銘柄を探った。

―水際対策から感染拡大防止策に切り替わる政策、新たな切り口で注目される銘柄は―

 新型コロナウイルス 感染症の世界的な感染拡大が収束の兆しをみせないなか、実体経済への影響も大きくなりつつある。中国では既に、感染拡大で休止していた工場の稼働再開を官民一体で急ぎ始めているが、世界的なサプライチェーンの混乱は避けられず、この日も日本経済新聞朝刊で「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で必要な部品が中国から仕入れられなくなり、リコーが宮城県内にある事業所の生産ラインの稼働を一部止めていることが26日、分かった」と報じられ、影響の広がりが警戒されている。

 こうした状況を踏まえ、政府は2月25日、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」をまとめ、それまでの水際対策から感染拡大防止策へと舵を切った。同方針では、軽症者が医療機関に殺到することで、むしろ院内感染のリスクが上がり、高齢者や基礎疾患のある人など重症化しやすい人にウイルスが広がってしまう恐れがあるとして、軽症者には自宅療養を促すことで、院内感染のリスクを下げることなどを求めている。新たな方針の決定に伴い、これまで以上に「院内感染」関連への注目が高まりそうだ。

●新たな切り口の関連銘柄に注目

 株式市場でも、国内の複数地域で、感染経路が明らかではない患者が散発的に発生していることを受けて、院内感染関連への関心が高まっており、医療用衛生材料大手の川本産業 <3604> [東証2]や、防護服などを手掛けるアゼアス <3161> [東証2]、クリーンパーティションやクリーンブースなどを展開する日本エアーテック <6291> などは先行して注目を集めた。

 また、感染症発生時の消毒・汚染除去業務や感染性廃棄物の適切な処理など院内感染予防事業を手掛けるサニックス <4651> も今月後半にかけて上昇したが、既に人気の銘柄は絞られつつあり、利益確定売りで値動きが荒くなっている銘柄も見受けられる。こうした銘柄の投資タイミングをはかりつつ、ここからは新たな切り口を持った銘柄にも注目したい。

●医療用廃棄物分野に注目

 その一つとして、院内感染関連のなかで出遅れ感がある医療用廃棄物処理分野がある。

 政府の基本方針に先立ち、環境省は1月22日、医療機関から排出される感染性廃棄物を適切に処理して感染防止に万全を期すよう、自治体や日本医師会、業界団体などに通知した。医療機関から排出される廃棄物は、紙くず類からプラスチック、ガラス・注射針、血液や体液を含むガーゼ類など多種多様であり、感染性廃棄物を取り扱う清掃業者や収集運搬業者、処分業者など関係する事業者も多い。また、メーカーサイドから廃棄処理しやすい製品も開発されている。

 大研医器 <7775> は、真空吸引器などを手掛けているが、手術室などで派生する排液用に医療用吸引機「フィットフィックス」を開発している。こうした排液は、以前はガラスびんに集められ、汚物室の洗面台に流されていたが、びんをうっかり割ってしまうなどで院内感染リスクが高い作業だった。同製品は、凝固剤一体型の密閉方式で、吸引終了後にフタを開けることなく指一本で排液を凝固し、そのまま焼却処分できるのが特徴で、現在では同分野のトップシェア商品となっている。株価は1月31日の決算発表後調整しているが、これに伴う売りに一巡感も出ていただけに注目余地がある。

 天昇電気工業 <6776> [東証2]は、プラスチック成型品の専業メーカーで、自動車部品が主力だが、オリジナル商品として医療廃棄物専用容器「ミッペールシリーズ」を展開し注目されている。株価は、自動車部品の先行き警戒感などで冴えない展開だが、400円台前半の水準に落ち込んだ株価はPER面で割安感が感じられる。

 要興業 <6566> [東証2]は、一般・産業廃棄物の収集運搬・処理・リサイクルの最大手で、感染性廃棄物処理向けには専用容器と専用の保冷車による回収で対応しており、全体の顧客数増加にも貢献している。リサイクル事業における資源相場の変動や処理費用の増加などで20年3月期業績は20%営業減益見通しだが、株価には織り込み済みとの見方が強い。

●ITの活用に注目

 ITの活用により、院内感染を防止する取り組みも増えている。エムスリー <2413> 子会社アイチケットが運営する診療予約アプリの「アイチケット」は、国内医療機関1600ヵ所以上で受診を予約できるアプリで、病院での待ち時間を短縮することができる。診療までにかかる時間も大まかにわかるので、待合室が混まなくなることにより院内感染のリスクも低下する。アプリは順調にダウンロード数を伸ばしており、月間利用者数は50万人超に増加している。またエムスリーは、LINE <3938> との共同出資で設立したLINEヘルスケアが、オンライン健康相談サービス「LINEヘルスケア」の提供を開始しており、同アプリの成長にも期待が持てる。好業績を背景に、中長期的な株価上昇基調への復調も期待できそうだ。

 キーウェアソリューションズ <3799> [東証2]は、院内感染監視システム「Medlas-SHIPL(メドラス・シプル)」を展開する。細菌検査データを取り込み、科学的根拠に基づいた解析法により院内感染の疑いのある菌を自動的に検知。菌の発生件数を病棟マップに表示するなどの機能も有しており、院内感染の早期発見・早期対応によりアウトブレイクを未然に防ぐという。2月中旬以降の株価下落で割安感も台頭しており注目余地は大きい。

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