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【市況】武者陵司 「新型コロナウイルスと米国株高シリーズ(1)」

武者陵司(株式会社武者リサーチ 代表)

―国家資本主義 vs.株式資本主義―

 いま世界で二つの相反する事柄(Fact)が、焦点になっている。一つは 新型コロナウイルスの蔓延で、生活者、ビジネスマンと投資家をパンデミックの恐怖で凍えさせている。あと一つの事柄(Fact)は米国の株高である。なぜ、この二つの事柄にフォーカスするのかだが、それは米中国家対立問題解決の鍵がそこにあるからである。その分析の結果何が見えてくるのか、を3シリーズにわたってお届けする。武者リサーチの結論は米国の隆盛と中国の退潮である。

●新型コロナウイルス蔓延下での米国株式史上最高値更新、MAGA主導

 新年早々、イラン革命防衛隊ソレイマニ司令官殺害、新型コロナウイルス蔓延などのネガティブニュースが相次ぐ中で、米国株式は3指数そろって史上最高値を更新し続けている。「疾風に勁草を知る(逆境で真価が分かる)」という故事にある通り、米国株式の地相場の強さをうかがわせる。

 2009年3月の底値6547ドルであったNYダウは、2020年2月2万9400ドルと、11年間で4.5倍、年率15%の株価上昇となった。トランプ大統領が当選して以降の3年3カ月(39カ月)で見ても1.64倍、やはり年率16%の上昇である。その牽引車がMAGA(マイクロソフト、アップル、グーグル、アマゾン)というハイテク革命の旗手でいずれも時価総額1兆ドル企業群である。トランプ大統領は自らのスローガン Make America Great Again になぞらえて、この4社をMAGAと呼ぼうと主張している。

 この二つの事柄(Fact)は世界の将来展望を考える上で決定的な材料である。まず第一の事柄、新型コロナウイルス肺炎の蔓延によって中国国家資本主義の根本的欠陥が露呈された。新型コロナウイルス問題は、ソ連崩壊の導火線となったチェルノブイリ原発爆発に匹敵する、体制的転換点にすらなり得る問題である、との論評がなされている。

 また第二の事柄、米国株式上昇により、米国株式資本主義の隆盛が顕著である。コロナウイルス蔓延にもかかわらず高進する米国株式を見て、慢心した楽観論の現れとするシニカルな見方もあるが、後述する通り、それは合理的とは言えない。

●米国の最重要国益、先端技術投資競争、勝利の鍵は資本力

 米国は米中覇権争いに勝つためには、何が何でも株式資本主義を成功させなければならない状況にある。米中覇権争いにおいては最先端ハイテク技術開発を制するか否か、がカギを握っているが、それは資本力の勝負と考えられるからである。AI量子コンピューターブロックチェーン、導電性高分子、自動運転再生医療などの先端技術分野における技術覇権を、米中のどちらが制するのだろうか。

 2月12日の日本経済新聞の報道「先端特許10分野、AIなど9分野で中国首位 日米を逆転」は、中国が国家資本主義(というよりは指令経済)の下での集中的資本投下を行い、多くの分野で米国を凌駕しつつあるという衝撃的事実を伝えている。進行中の5Gネットワーク技術とコストにおいては中国のファーウェイが圧倒的に先行し、米国の同盟国英国ですら米国のファーウェイ排除に同調できなくなっている。これらの事情は、もはや米国に猶予が残されていないことを物語る。

●米国は、何が何でも株式資本主義を強化せざるを得ない

 米国が先端技術分野における投資競争に勝ち抜く資本力を勝ち取るためには、株式資本主義を強化していかざるを得ない、という地政学上の要請がある。米国の株式資本主義は健全で持続性があり、米国の地政学的要請に応え得るだろうか。この問いは米国という覇権国の存在を左右する重さがあるといえる。

 武者リサーチは米国の株式資本主義は健全で持続性がある、と主張してきた。米国では株式が資金循環の中枢に座り、株価上昇が経済発展の推進力となる新たな時代が始まっている(可能性が強い)、と考える。悲観論者の言うように、米国の株価がバブルであだ花だという批判が正しいとすれば、中国の国家資本主義(社会主義市場経済)より先に米国経済が没落し、覇権争いは中国の勝利に終わる可能性が高まる。

 しかしそうではなく、株式資本主義という資本主義の新たな発展段階であるとすれば、明るい将来展望が描かれる。この大問題に対する究極の解を今断定することは尚早であるかもしれない。しかし、少なくともここ数年の間は米国株式資本主義の隆盛は止まらず、大きな投資機会を提供していると主張したい。そのためには、(1)なぜ新型コロナウイルス問題が中国の統治システムの躓きとなるのか、(2)なぜ米国株式資本主義がバブルではなく持続性があるのか、の二つの問いに答えなければならない。

(2020年2月17日記  武者リサーチ「ストラテジーブレティン244号」を転載)


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