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【市況】【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─「新型肺炎を警戒しつつ押し目をうかがう」

RAKAN RICERACA 代表取締役 会長 村瀬智一

「新型肺炎を警戒しつつ押し目をうかがう」

●感染ピークアウト後の切り返しも視野に

 今週の日経平均株価は膠着感の強い相場展開となった。先週の強い値動きの反動のほか、 新型肺炎の感染拡大への警戒感が燻ぶる中、やや売り優勢の展開ではあったが、テクニカル面では25日移動平均線レベルでの底堅さが意識された。

 もっとも、中国の認定基準の変更により感染者数が大幅に増加したことをきっかけに、先物主導で値を下げる局面がみられた一方、指数寄与度の大きいソフトバンクグループ <9984> が傘下のスプリントと同業TモバイルUSとの統合承認が好感され上昇すると、その影響を大きく受けるなど方向感は定まっていない。

 節目の2万4000円接近では戻り待ちの売り圧力も強く、新型肺炎の封じ込めが明らかになるまでは、上値を積極的に買い上がる流れは期待しづらい。一方で、終息宣言が出てくる可能性も排除できず、下へも売り込みづらい需給状況といったところであろう。

 個別では新型肺炎関連への物色が再燃しているほか、決算発表が後半戦ピークを迎える中、好決算企業に個人主体の資金が集中する流れが目立っていた。

 来週の株式市場は、引き続き新型肺炎の感染状況を睨みながらの相場展開になりやすいだろう。本来であれば決算発表を通過したことで、過剰反応を見せていた銘柄の見直しに向かいやすい時期でもある。また、3月末の権利・配当狙いの物色も次第に意識されてくる頃だ。

 しかしながら、新型肺炎の影響は読みづらく、終息に向かったとしても、経済面への影響などが警戒されやすくなるだろう。世界的な金融緩和政策の中、先進国市場は軒並み強いトレンドを形成しており、日本だけが出遅れている状況である。行き場を失った資金はいずれ株式市場に戻ってくるとの見方もあろうが、中国と地理的に近いうえ、国内でも感染者の死亡が伝えられており、楽観的な見方にはなりづらい。

 とはいえ、市場は当初のパニック的な状況からは冷静になっている。感染者数がピークアウトし、減少し始めたら、ヘッジファンドなどが押し目買いの好機とみてロングポジションを積み上げてくる可能性はあると考えられる。

 中国共産党は12日、最高意思決定機関である政治局常務委員会を開き、新型肺炎による企業活動停止で国内経済に下押し圧力がかかる中でも、今年の経済目標達成に向けて努力するよう呼び掛けている。今後、中国は財政政策の活用拡大などを打ち出してくる可能性が高く、それを見据えて終息宣言後の大幅な切り返しを意識したスタンスで、売り込まれていた銘柄の押し目を狙う動きを考えておく必要があるだろう。

●今週の活躍期待「注目5銘柄」

◆クレディセゾン <8253>
流通系クレジットカードで国内首位。クレジットカードをはじめプリペイド、デビットカードなど、取引先・顧客ニーズに即した決済ツールを提供する。同社は今秋にも原則としてカードを発行せずスマートフォンのみで決済できるサービスを開始すると各メディアが報じている。キャッシュレス化によって新たな顧客層の獲得が期待されるほか、ノンバンク業界の再編機運も高まりそうである。

◆GMOクラウド <3788>
クラウド・ホスティング事業、セキュリティ事業が中核。2019年12月期はオンラインゲーム開発エンジン「Photon」の販売の進捗の遅れや新規事業関連費用が重しとなり、経常利益は前の期比0.3%減にとどまった。2020年12月期は、IoT事業への新規事業投資の継続で費用増加を見込むが、引き続きセキュリティ事業が伸び4.4%増収・5.7%増益を計画。親子上場に対する関心が根強い中で、GMOグループ再編への思惑も高まりやすい。

◆SBテクノロジー <4726>
システムセキュリティや企業・官公庁向けクラウドに強みを持つ、ソフトバンクグループのIT技術会社。足元の20年3月期第3四半期累計(4-12月)業績は、営業利益が前年同期比42.4%増益で着地。働き方改革の実現に向けた有望な手段として期待される テレワークだが、新型肺炎の感染予防策としても関心が高まっている。なお、同社は昨年、厚生労働省のテレワーク普及推進策「テレワーク宣言応援事業」において「令和元年度のテレワーク宣言企業」に選出されている。

◆アセンテック <3565>
仮想デスクトップ関連を中核事業とする。仮想デスクトップは、ローカル端末内にOSやアプリケーションを置かずにサーバー上で一元化することで、外部からリモート操作を可能にする機能である。新型肺炎の感染拡大への警戒感が高まっていることから、「テレワーク」導入に向けた企業の取り組みが広がる可能性がある。足もとの20年1月期第3四半期累計(2-10月)業績は、 テレワークの導入およびサイバーセキュリティ対策需要の増加を背景に、営業利益が前年同期比20.9%増益と順調。

◆電算システム <3630>
独立系総合情報処理サービス企業。システム構築のSI・ソフト開発、情報処理サービスなどを手掛ける「情報サービス事業」と「収納代行サービス事業」の2つの分野において事業を展開している。2019年12月期決算は売上高および各利益いずれもが昨年10月に上方修正した数値を上回る好調な着地となった。4期連続で増収増益を達成、売上高・各利益項目ともに過去最高を更新した。昨秋から本格化させた全国の小学校向け教材販売での「コンビニ決済サービス」の提供に加え、決済関連での新規サービス立ち上げを控えており、今期以降も増収増益基調が継続する見込み。

(2020年2月14日 記)


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