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【特集】メシ新時代到来、大手食品参入の「植物肉」関連で注目の企業群を追う <株探トップ特集>

大手食品企業の間で、豆や小麦などの植物性たんぱく質を肉状に加工した「植物肉」への取り組みが加速している。国内の食品大手も参入が相次いでおり、関連銘柄はマークが必要となろう。

―植物肉の世界市場は2040年に50兆円規模に、株式市場の有力テーマに浮上―

 大手食品企業の間で、豆や小麦などの植物性たんぱく質を肉状に加工した「植物肉」への取り組みが加速している。これまでは、肉や魚だけではなく卵や乳製品、はちみつなど動物由来の食品を口にしない「ビーガン」向けの食品と思われていた植物肉だが、テクノロジーの進化により、それまで二の次とされていた「味」が向上したことで一気に広がりをみせている。また、環境意識の高まりも普及を後押ししており、2040年の世界市場は50兆円規模になるとの予測もある。世界的な食品大手だけではなく、国内食品大手も近年、植物肉への参入が相次いでおり、今後、株式市場における一大テーマになる可能性は大きい。

●人口増加と環境意識の高まりで関心高まる

 植物肉の普及の背景には、世界的な人口増加と環境意識の高まりがある。

 新興国や途上国の経済成長を背景に、世界の総人口は50年に現在の約77億人から97億人を突破すると予測されている。当然、食糧の需要も増加するが、特に増えるとみられているのがたんぱく質の需要だ。

 新興国では、豊かになった消費者が肉の摂取を増やすようになる。たんぱく質の世界需要は50年には現在から倍増するといわれているが、一方で従来の家畜型の食肉生産では、こうした需要拡大に対して、対応できないという見方が多い。

 また、飼料の製造・加工過程や家畜の排せつ物などから発生する温室効果ガスは温暖化の主な原因ともなっており、国連食糧農業機関によると、世界で排出される温室効果ガス全体のうち、畜産業から排出される割合は18%程度に上るとされる。穀物生産は家畜の飼育に比べて温室効果ガスの排出が少ないため、環境意識の高い欧州先進国などでは、植物肉を選択するケースが増えている。

●肉食文化のアメリカで植物肉が浸透

 肉食文化の代表ともいわれるアメリカでもバーガーキングやサブウェイなど植物肉を扱う飲食店が増加しているほか、ホールフーズ・マーケット、クローガーなどの食品スーパーでも販売を始めた。ファストフードで植物肉を食べる人の多くはビーガンではなく、普段から肉を食べている人といわれており、これが市場の裾野を広げている。

 こうした状況を受けて参入する企業も増えている。植物肉といえば、アメリカのビヨンド・ミート、インポッシブル・フーズのベンチャー2社が有名だが、世界的な食品大手も参入してきており、ネスレは昨年から欧州で大豆と小麦を原料にした植物肉のハンバーガーの販売を開始した。ユニリーバも18年末にオランダの食品販売会社を買収したことをきっかけに大豆やタマネギを原料としたパテを世界各国で販売している。

●不二製油Gなどに注目

 こうした世界的な動きに対して出遅れ気味である日本だが、ここ最近、スーパーの店頭などでも植物肉を利用した商品を目にする機会が増えている。まだ陳列棚のなかでも目の届きにくいところに並べられているものの、日本には古来より大豆を食べる食文化があることから、きっかけさえあれば、日常生活で目にする機会は更に増えそうだ。

 関連銘柄の代表格は、世界的な植物肉の先駆的企業でもある、不二製油グループ本社 <2607> だ。同社では1960年代から、大豆ミートの開発を開始し、2000年前後には調理すればおいしく食べられるレベルの大豆ミート(植物肉)を開発した。その後の味の改善もあって近年では需要が右肩上がりに伸びており、現在は千葉に新工場を建設中だ。また、食材として提供するだけではなく、18年には大豆ミートを利用したハンバーグを家庭向けに発売。更に19年には大豆ミートを使用したハンバーグや唐揚げ、サラダ、デザートなどを提供するレストラン「UPGRADE Plant based kitchen」を出店し、普及を図っている。

 大塚ホールディングス <4578> 傘下の大塚食品は18年11月、大豆を原料とする「ゼロミート」ハンバーグを首都圏で発売した。その後、全国展開すると順調に販売を拡大。19年6月にはソーセージタイプを投入したほか、今年3月からは、外食・中食向けの業務用タイプも発売する予定で、更なる販路拡大を目指している。なお、同シリーズはスターゼン <8043> が販売している。

 伊藤ハム米久ホールディングス <2296> 傘下の伊藤ハムは19年秋に業務用商品を投入し植物肉市場に参入した。1月の商談会では新たに家庭用向けに「まるでお肉!」シリーズを発表しており、今春からハンバーグなどを投入する予定だ。また、日本ハム <2282> も、これまで業務用では大豆を原料とした植物肉を手掛けていたが、3月からは「NatuMeat(ナチュミート)」のブランドで家庭用の植物肉市場に乗り出す。

●ニチレイは植物肉スタートアップに出資

 ニチレイ <2871> 傘下のニチレイフーズは今年1月、植物肉の開発を行うスタートアップ企業であるDAIZ(熊本市中央区)に出資したと発表した。DAIZは原料として使用するための大豆の発芽技術に強みを持ち、同技術により植物性たんぱく質の課題である「独特な風味」や「食味・食感の物足りなさ」を解決できる。ニチレイフーズの加工食品や冷凍食品の技術を組み合わせ、商品化を見据えた研究開発に取り組むとしており、今後の展開が期待されている。

 更に、森永製菓 <2201> は子会社SEE THE SUNが玄米と大豆で作った植物肉を使ったカレーなどのレトルト商品を手掛けており注目される。このほか、「やさいと大豆ミート」を販売するケンコーマヨネーズ <2915> や、18年に「ごちソイ」シリーズを発売した丸大食品 <2288> なども関連銘柄といえそうだ。

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