【市況】【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─目先過熱警戒も、中小型株の修正リバウンド意識か
RAKAN RICERACA 代表取締役 会長 村瀬智一
「目先過熱警戒も、中小型株の修正リバウンド意識か」
●外部環境の変化を背景にセンチメント改善へ
今週の日経平均株価は連休明け後にギャップスタートで400円を超す上昇をみせ、その後は膠着感が強まるも底堅い値動きを続け、週末には米中交渉第1弾合意報道をきっかけに2万3500円を回復してきた。この水準は昨年10月以降の調整局面で空けていた週足マド(2万3590-2万3730円処)下限を捉えてきたことになる。そのため、目先的には強弱感が対立しやすく、いったんは達成感も意識されやすいところであろう。
とはいえ、日経平均の10月以降のリバウンドをみると、2万2000円、2万2500円、2万3000円、2万3500円とそれぞれの節目をギャップスタートで超えてきており、これまで弱気に傾いていたセンチメントの巻き戻しを誘い込みやすい。足元での上昇は先高期待を高めたニューロングのポジションではなく、ショートカバーが中心であるということだ。
こうした需給状況の中、外部環境には変化もみられる。米中交渉の先行きについては楽観視はできないだろうが、一方で米大統領選が来年に迫る中、トランプ陣営としては泥沼化は避けたいところ。また、足元の米雇用統計はゼネラルモーターズのストの影響を考慮しつつも予想を上回る増加だったほか、10月のISM非製造業景気指数が予想を上回るなど、米経済に対する過度な警戒感は後退している。
さらに、米長期金利も上昇をみせてきているほか、円相場は足元では円安基調が継続。原油先物相場はボトム圏で推移するものの、サウジアラビアが国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)を控え、減産目標未達の石油輸出国機構(OPEC)加盟国に対し圧力をかけてさらなる減産を目指す構えであり、今後リバウンド基調をみせる可能性がある。
このように外部環境の反転もみられる中では、センチメントの一段の改善が見込まれる。来週も決算発表が本格化するため積極的な売買は手控えられようが、概ね主力企業の決算は通過した。今週はソフトバンクグループ <9984> の上期営業赤字転落が悪材料視されたが、決算発表後も株価は直近安値を割り込んでおらず、これも現在のセンチメントを映し出しているとみられる。
さすがに短期過熱感は意識されやすく、強弱感が対立しやすいだろうが、年末高を意識したスタンスが次第に勢いを増してくるだろう。日経平均が足元で一服をみせたとしても、望まれた調整との見方になりやすく、外部環境に変化がみられる中では押し目買い意欲も強まってこよう。
足元ではインデックス売買が中心であるため、主力処が牽引する相場展開であるが、保ち合い局面では相対的に出遅れているセクターや銘柄にも見直し買いが向かいやすい。とりわけ、来週はそーせいグループ <4565> [東証M]などの中小型株の決算が相次ぐため、いま一つ盛り上がらないマザーズ銘柄など中小型株の修正リバウンドが意識されてくる可能性がありそうだ。
●今週の活躍期待「注目5銘柄」
◆CYBERDYNE <7779> [東証M]
11月14日に第2四半期決算を発表予定。赤字企業ではあるが、直近の20年3月期第1四半期(4-6月)の最終損益は1.56億円の黒字と前年同期1.95億円の赤字から黒字浮上。最近では、日本医療研究開発機構(AMED)が公募した「医療機器開発推進研究事業」で筑波大学との共同提案が採択された。また、台湾の大手 医療機器専門商社グループと提携し、同グループの病院に医療用ロボット「HAL」を導入すると発表している。株価はボトム圏での膠着が続くが、足元では集中する13週、26週、52週移動平均線が支持線として機能している。
◆みらかホールディングス <4544>
11月11日に第2四半期決算を発表予定。直近20年3月期第1四半期(4-6月)の営業利益は前年同期比9.8%減の31億円だったが、前年同期の52%減から減益幅が縮小。受託臨床検査事業では、新規獲得の顧客や遺伝子関連検査をはじめとした特殊検査等の新規項目の売上が貢献。臨床検査薬事業で日赤事業の契約終了による減収影響があったが、その他の事業で吸収している。最近では10月13日付の日本経済新聞が「バイオスタートアップの朝日ゲノミクス(東京・千代田)は がん免疫薬の効果を予測する技術を、臨床検査大手みらかホールディングス子会社のみらか中央研究所(東京都八王子市)に供与する」と報道。「みらかは、小野薬品工業のがん免疫薬『オプジーボ』などの効果予測サービスにつなげたい考え」としている。株価は長期的な調整トレンドを継続しているが、足元のリバウンドで上値抵抗の52週線を捉えてきている。
◆メイコー <6787> [JQ]
11月6日に発表した20年3月期第2四半期累計(4-9月)決算は、営業利益が前年同期比4割減の34億円だったが、通期計画に対する進捗率は45%とほぼ計画通りの進捗。 スマートフォン市場の低迷の影響を受けた格好だが、車載向け基板は好調に推移している。5G向けスマートフォンは来年以降、普及が加速するとみられ、見直しの流れが今後意識される。株価はボトム圏での推移であるが、直近のリバウンドにより、13週、26週、52週線をそれぞれクリアしてきている。週足の一目均衡表では「雲」下限に到達してきており、シグナル転換に期待。
◆ノーリツ鋼機 <7744>
11月13日に第2四半期決算発表を予定。直近20年3月期第1四半期(4-6月)の営業利益は前年同期比4.5%増の15.46億円で着地。通期計画に対する進捗率は25%と計画に沿った進捗。ペン先部材・コスメ部材などのものづくりに関する事業の売上が堅調に推移したほか、ヘルスケアセグメントも好調だった。株価は昨年10月高値3240円をピークに調整を強め、昨年12月末には1362円まで下落。その後はリバウンドをみせているが、下降する13週、26週、52週線が上値抵抗として意識されている。ただし、直近のリバウンドで13週線を捉えてきており、リバウンドを意識したスタンス。
◆ニチコン <6996>
11月5日に発表した20年3月期第2四半期累計(4-9月)決算では、営業利益が前年同期比14.6%減の19.63億円で着地。通期計画に対する進捗率は32%にとどまったが、第2四半期以降に利益が積み上がる傾向があるため、ほぼ計画通りの進捗だろう。EV普及機運の高まりを背景に、蓄電システムの需要は今後高まってくると考えられる。また、IoTやウェアラブル機器、情報通信端末などに最適な小形リチウムイオン二次電池は安定成長。株価は昨年12月安値720円をボトムにリバウンドが継続しており、直近の上昇で4月につけた戻り高値1098円をクリアしている。
2019年11月8日 記
株探ニュース