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【特集】オンコリス Research Memo(7):OBP-801は眼科領域で動物実験のデータ再現性を確認後に導出活動本格化

オンコリス <日足> 「株探」多機能チャートより

■開発パイプラインの動向

4. その他パイプライン
(1) OBP-801
OBP-801は、2015年5月より米国で進行性固形がん患者を対象に第1相臨床試験を開始したが、Cohort3(高容量群)で用量制限毒性が6例中2例発生したため現在は新規患者の組み入れを中断しており、今後はチェックポイント阻害剤と低容量のOBP-801による併用療法での開発を進めていくかどうかの検討を行っている段階にある。

一方、眼科領域においては加齢黄斑変性を対象疾患とした開発が進んでいる。共同研究先の京都府立医科大学で実施した加齢黄斑変性症の動物モデル実験では、症状の進行に影響する血管新生の阻害作用や網膜の線維化抑制効果が確認されており、同データの再現性を確認すべく2019年8月より米国にて動物モデルでの実験を開始している。2019年末までには実験が終了しデータがまとまる予定となっており、データの再現性が確認されれば眼科領域専門の製薬企業にライセンスアウトする方針となっている。オンコリスバイオファーマ<4588>は眼科領域での製剤開発ノウハウを持たないため、同領域を専門とする製薬企業に開発を委ねたほうが効率的と考えているためだ。開発早期段階でのライセンスアウトになるため、契約一時金に関しては小規模になると思われる。

加齢黄斑変性症治療薬としては、現在、抗VEGF薬となるルセンティスやアイリーアなどが上市されており、年間で5千億円を超える市場規模となっている。これら先発薬は血管新生阻害作用があるものの、いずれも網膜の線維化抑制作用はないため、OBP-801の長所となる。既に大手製薬企業とは一度、コンタクトを終えており、データの再現性確認がライセンスアウトにおける条件の1つになっていたと考えられるため、米国での動物モデルの試験結果が注目される。なお、同社は2018年7月に京都府立医科大学と共同でこれら研究成果に関する特許を出願している。

(2) OBP-601(センサブジン)
HIV治療薬候補のOBP-601に関しては第2b相臨床試験まで終了しており、現在はライセンス契約先を探索している段階にある。ただ、HIV治療薬は既に30種類以上の薬剤が販売承認され飽和状態となっており、新規ライセンスの可能性も低下している。このため、2019年までに交渉先が見つからない場合は、開発権を特許権者である米Yale大学に返上する意向を示している。特許権使用料として年間10百万円程度の費用が掛かっているが、同費用を有力パイプラインの開発資金に充当していく考えだ。

(3) OBP-AI-004
2015年7月に鹿児島大学と共同研究契約を締結し、B型肝炎ウイルス(HBV)の治療薬創製に関する共同研究を進めていたが、ようやく試験管レベルで効果が確認された候補化合物の絞り込みが終わり、前臨床試験を進めている。ヒト型のB型肝炎ウイルスを移植したネズミを使った試験となり、2019年末までに明らかとなる試験結果を見て今後の開発方針を決定することにしている。

B型肝炎については、治療薬を投与してもウイルスの遺伝子が残るため完治することはなく、再活性化した場合の治療薬はまだない。このため、再活性化後は時間の経過とともに肝硬変や肝臓がんに症状が進行することになる。同社は、再活性化の原因が治療薬投与後でもHBs抗原※の量がほとんど変らないことにあると考えている。OBP-AI-004はこのHBs抗原の量を半分程度に低減する効果が試験管レベルで確認されており、HBs抗原の量が低減すれば再活性化リスクの大幅な低減につながるものと見ている。

※HBVの外殻を構成するタンパク質。


B型肝炎の患者数は世界で3.5億人、うち70%がアジア太平洋地域に分布しており、国内の患者数は150万人と言われている。B型肝炎治療薬の市場規模は2021年に世界で4,200億円程度まで成長すると見られているだけに、開発が進めば市場の注目度も高まるものと期待される。


主要パイプラインの物質特許を各国で取得済み
5. 特許取得状況
主要パイプラインであるテロメライシンの特許権は同社と関西TLO(株)が共同保有しており、海外では同社が単独で保有権を持ち、現在は日米欧を含む24ヶ国で特許を取得している。また、テロメスキャンは同社が特許権を保有しており日米含む13ヶ国で、テロメスキャンF35については日米欧中韓を含む12ヶ国以上で特許を取得するなど、知財戦略についても重要な経営戦略の1つとして位置付けている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《YM》

 提供:フィスコ

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