【通貨】為替週間見通し:ドルは上値の重い状態が続くか、大幅利下げ観測が再浮上
米ドル/円 <日足> 「株探」多機能チャートより
【先週の概況】
■米中対立激化でドル売り強まる
先週のドル・円は弱含み。米トランプ政権が中国通信機器メーカーの 華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置の適用をさらに90日間猶予すると発表したことや、ドイツ政府による財政出動の可能性が浮上したことからリスク選好的なドル買い・円売りが一時優勢となった。米国の大幅利下げ観測が後退したこともドル買い材料となり、一時106円74銭までドル高・円安が進んだ。
しかしながら、中国政府が23日、対米報復関税を発表したことを受けて米トランプ政権は対中関税の新たな引き上げを発表したことから、リスク回避のドル売りが再び活発となった。トランプ大統領は米企業に対し中国からの事業撤退も要求しており、通商問題などを巡る米中の対立は一段と深まり、米中貿易摩擦は長期化するとの見方が広がった。米国経済は2020年に景気後退入りするとの思惑も広がり、世界経済のさらなる減速が懸念されたことから、23日のニューヨーク外為市場でドル・円は、106円74銭から105円26銭まで反落し、105円42銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:105円26銭-106円74銭。
【今週の見通し】
■ドルは上値の重い状態が続くか、大幅利下げ観測が再浮上
今週のドル・円は上値の重い状態が続くとみられる。米中貿易摩擦の激化・長期化の可能性は高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利下げへの思惑が再浮上していることから、ドルは買いづらい展開となりそうだ。
パウエルFRB議長は8月23日の講演で「貿易政策の不透明性が世界経済の成長減速をけん引」、「FRBは世界の状況、市場動向、貿易政策を注意深く監視する」との見方を伝えており、米中貿易摩擦の激化が米国経済に与える影響を考慮して、次回9月17-18日開催のFOMC会合で0.50ポイントの追加利下げが決定される可能性が再浮上している。21日に公表された同会合の議事要旨では、長期にわたる利下げサイクルに入ったとの認識は示されていなかったが、米中対立が続いていることから、市場参加者は米金利見通しを引き下げる可能性がある。ただ、米国経済の悪化に備えてトランプ政権が新たな財政出動を検討する可能性は残されており、その可能性が高まった場合、大幅利下げ観測は後退する見込み。
今週発表予定の米経済指標では29日発表の4-6月期国内総生産(GDP)改定値や30日発表の7月個人消費支出(PCE)が注目されそうだ。市場予想と一致、または上回った場合、大幅利下げ観測はやや後退し、ドル買い材料となる可能性がある。
【米・4-6月期国内総生産(GDP)改定値】(29日発表予定)
29日発表の米4-6月期国内総生産(GDP)改定値は、前期比年率+2.0%程度と予想されており、速報値の+2.1%からやや下方修正される見込み。GDP改定値が市場予想と一致した場合、10月以降における追加利下げ観測はやや後退し、ドル買いに振れやすい。
【米・7月個人消費支出(PCE)】(30日発表予定)
30日発表の米7月個人消費支出(PCE)のコアデフレータは前年比+1.6%と、前回から横ばいの見通し。連邦準備制度理事会(FRB)の目標でもある前年比+2.0%を下回っており、9月大幅利下げの思惑が広がりやすい。
予想レンジ:104円00銭-107円00銭
《FA》
提供:フィスコ