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【特集】量子&エッジ「次世代コンピューター相場」起動へ、倍騰候補5銘柄 <株探トップ特集>

「エッジコンピューティング」と「量子コンピューティング」、次世代コンピューター相場が今始まろうとしている。株価2倍も夢ではない選りすぐりの5銘柄をエントリー。

―AI・IoT時代に注目必至の次世代コンピューター、その最前線の変身期待株とは―

 あらゆるものをインターネット空間と接合させる「IoT」、そして膨大なデジタル情報の海「ビッグデータ」、人間の知力の遥か上空を翔ける「人工知能(AI)」、これらIT新時代を先導するキーテクノロジーは、その礎となる次世代コンピューティングと切っても切り離せない。

●高速対応の切り札、エッジコンピューティング

 次世代コンピューティングでは、まず「エッジコンピューティング 」が脚光を浴びつつある。現在クラウドサービス分野の普及が著しいが、クラウドコンピューティングでは、ユーザーからデータセンターまでの距離が問題となるケースが生じることが課題に挙げられている。物理的な距離が送受信のスピードを遅らせ、自動運転や生産現場のロボット制御のようにほぼリアルタイムの情報処理が求められる状況において、クラウドでは対応が困難となるケースが頻発することになる。エッジコンピューティングはこのハードルをクリアする。エッジとは“末端”を意味するが、そのコンセプトはユーザーの近くにエッジサーバーを分散させ、距離短縮によって反応速度を高めるという技術だ。

 エッジコンピューティングではクラウドに比べ最大100分の1程度の時間短縮を可能とし、1ミリ秒単位のニーズに対応したコントロールを可能とする。例えば通信遅延の解消、いわゆる超低遅延が求められる分野として真っ先に連想されるのは、いま最強の投資テーマとして株式市場を賑わしている次世代通信規格「5G」だ。5G通信ネットワーク構築に際しても改めてエッジコンピューティングのコンセプトが日の目を見ることになる。

 トヨタ自動車 <7203> などをはじめ自動車業界が傾注するコネクテッドカーや、その延長線上にある自動運転車では膨大なデータ量とハードを即時連携させる必要に迫られる。遠隔手術でも医師の指示がマシーン・コントロールされたメスに届くまでの遅延解消は必須であり、これらのシーンでエッジコンピューティングは重要な位置づけを担う。

 株式市場でも同関連銘柄は、5G裏テーマ株としての側面も合わせ投資家の熱い視線が注がれることになりそうだ。

【アステリアは台湾AI大手とエッジウェア新展開】

 アステリア <3853> は5月中旬を境に一気に上放れ、株価を4ケタ大台に乗せてきたが、売り買いを交錯させる時価近辺は反騰相場の入り口に過ぎないだろう。17年7月には1745円の最高値をつけたが、当時の売り上げ規模はもちろん、利益水準も今期以降に大きく上回ってくる可能性が高く、株価も最高値奪回に向けた青写真が描ける。1000円トビ台の株価は願ってもない仕込み場だ。

 XML技術を基盤とするソフトサービスを展開、 ブロックチェーン分野に積極的に取り組んでいることは有名で、同社の平野社長はブロックチェーン推進協会の代表理事を務める。エッジコンピューティング分野でも持ち前の技術力を発揮、AI搭載IoT統合エッジウェア「Gravio」は昨年10月から出荷を開始しているが、早晩収益の成長エンジンとなる日が来そうだ。会社側では「直近、台湾AI技術最大手で、日本でいえばNEC <6701> のような存在であるゴリラ(Gorilla)社と戦略的業務提携を行ったが、同社が展開するGravioをゴリラ社のAI画像認識技術と合わせることで合理的かつ付加価値の高いソリューションを生むことができるようになる」としている。

 足もとの業績は好調だ。同社が前週末10日取引終了後に発表した20年3月期営業利益は前期比54%増の6億円とV字回復を見込んでいる。更に21年3月期に売上高50億円(今期予想41億円)、営業利益10億円の中期計画を掲げている。連結決算を開始した13年3月期以降、増収増益路線をまい進していたが、19年3月期は投資を戦略的に増加させた関係で営業33%減益となった。しかし、この“攻めの効果”が今期以降の成長シナリオに反映されることになる。

【コアはエッジソリューションでIoT開拓】

 コア <2359> は4月に急動意して水準を切り上げた後1300円台で売り玉を吸収するする展開。2月に上ヒゲでつけた1528円奪回から中期的には17年10月の最高値1943円を払拭して2000円大台を目指す動きが期待できそうだ。独立系のシステムインテグレーター(SI)で家電や通信向け組み込みソフトに強みを持つが、最近では受託型のSIビジネスから提案型のソリューションビジネスに経営の重心を移し、高利益率を実現している。クラウド型医療や公共向けで実績を伸ばしている状況にある。

 同社は業界に先駆してエッジコンピューティングソリューション「IoT Secure」の提供を3年半前から行っており、暗号化や時限自動消去などを行い、IoTの普及でカギを握るIoT機器レベルからのセキュリティーとプライバシーを担保する。会社側では「当社が強化しているソリューションビジネスの一環として戦略を進めている」という。利益採算の高いソリューションビジネスでは、「公共、医療、AI・IoTなど重点推進する事業領域(6分野)を設定して、業績拡大に努めている」(会社側)という。

 19年3月期は売上高こそ微減だったものの、営業利益は24%増の16億1600万円と高成長を継続、20年3月期も前期比11%増の18億円と2ケタ伸長を見込んでいる。IT系成長企業にして株主還元姿勢も抜かりなく、19年3月期は前の期比5円増配の25円、20年3月期も更に2円上乗せして27円を計画、2%近い配当利回りが確保されている。PERも15倍と同業他社と比較すれば明らかに割安だ。

【DMPはエッジAIモジュールで需要取り込み】

 ディジタルメディアプロフェッショナル <3652> [東証M]も上値余地が大きい。株価は13週・26週移動平均線が収れんする5000円大台近辺に位置するが、時価総額150億円以下の小型株で急騰習性を考慮してここは強気に攻めたいところだ。

 ゲーム機やデジタル家電向けなどを中心とする研究開発型のファブレスメーカーでアミューズメント向けLSIなども手掛ける。最近はAI分野への展開に傾注しており、エッジコンピューティング分野が低遅延のニーズから注目度が高まるなか、会社側では「エッジAIモジュール(もしくはエッジAIプロセッサーIPコア)分野を開拓して業績面に反映していきたい」としている。経営方針としては「これまでの3D画像処理技術のIPライセンシングからAIに経営資源をシフトし、車載向けなどを中心に幅広く需要を取り込む計画」という。業績面では好採算のゲーム機向けロイヤルティー収入の減少、エンジニア確保などの人的コストが先行して足もとの利益は低調ながら、トップラインは2ケタ伸長を続けている。同社の技術優位性を象徴するエッジAIは中期的な業績牽引役を担う公算が大きい。

 株価は昨年1月に1万7470円の高値をつけており、仮に半値戻しでも上昇率換算で125%、つまり2.2倍高となる。直近5月相場では、10日に下ヒゲで4050円をつけてから急反騰、わずか3営業日で高値5720円まで1700円弱の上昇パフォーマンスを演じたことは記憶に新しい。

●神秘的な演算能力誇る量子コンピューター

 一方、歴史を塗り替えるかもしれない次世代コンピューターとして常にマーケットの注目度が高いのが量子コンピューター である。

 世界でとどまることのない開発競争が繰り広げられている半導体回路微細化(高集積化)の動きだが、微細化にも限界点が近いとの見方が強まっている。その際に、コンピューターの動作原理である「01」の世界から離れ、量子力学的な性質である“重ね合わせ”や“もつれ”など極微の世界で起こり得る物理現象により並列コンピューティングを実現させるというのが量子コンピューターのコンセプトだ。スーパーコンピューターですら千年単位の気の遠くなるような時間を要する演算を一瞬のうちに完結してしまうという神秘的な技術領域であり、今後AI技術の飛躍的進化に向けた新たな道を切り開く可能性がある。

 量子コンピューターは、従来のコンピューターの論理ゲートに量子ゲート代替させて演算処理する、いわばコンピューター論理回路の拡張型である「量子ゲート方式」と、組み合わせ最適化問題に特化した量子アルゴリズムの一つである「量子アニーリング方式」に大別される。量子ゲート方式は米グーグルやIBMが研究開発で先行、両社とも試作機を開発している段階にあるが、普及に向け依然として課題も多い。一方、量子アニーリング方式は、今から20年ほど前に東京工業大学の西森秀稔教授らが提唱した国産技術で、2011年にカナダのDウェーブ社が世界で初めて商用化に成功したことで注目を集めた経緯がある。

 こうしたなか、日米両政府は今月2日に科学技術の担当閣僚による会合を約3年ぶりに開催、量子技術分野での連携を強化する方針を確認したことが伝わっている。世界に後れ気味の日本だが、安倍政権はこれを取り戻すべく本腰を入れ始めている。中核拠点新設に向けた検討を進めるとともに、「量子技術イノベーション戦略」を年内にも策定する方針という。

 株式市場でも量子コンピューターが、夢を乗せた投資テーマとして改めて脚光を浴びる局面が近づいている。

【Fスターズは高速化独壇場で量子にも対応】

 フィックスターズ <3687> は4月下旬を境に舞い上がるように株価水準を切り上げている。しかし依然として、大勢上昇トレンドの初動といってよい。量子コンピューター関連のシンボルストックといっても過言ではなく、投資家はここから同社株の上値余地の大きさを知ることになりそうだ。

 マルチコアプロセッサーの高速化ソフトを開発し、自動車や金融業界をはじめ幅広い業種で高水準の需要を捉えている。会社側では「高速化案件では競合する企業がいないことでリピートオーダー率はほぼ100%」としており、これが業績面でトップライン、利益ともに目を見張る伸びを継続する高成長の源泉となっている。18年9月期営業利益は前の期比32%増の11億円と一気に10億円の大台を突破、19年9月期は伸び率こそ鈍化するものの、12%増益の12億2600万円と2ケタ成長を確保する見通しだ。

 世界で初めて量子コンピューターを商用化したカナダのDウェーブ社と提携関係にあり、同関連銘柄としては最右翼。各種アニーリングマシンを活用した量子コンピューター導入支援ビジネスを展開するが、会社側では「量子コンピューターは選択肢の一つであり、当社の立場として導入を積極的に推すわけではないが、顧客側のニーズがあればそれに対応することができる」と自信をみせる。現時点での収益寄与はわずかだが、「ハードウェア技術が安定すれば、市場は広がる可能性がある」(会社側)とし、今後もバイオインフォマティクス分野などを中心に精力的な取り組みを続ける構えだ。

【スパークスGは量子アニーリング権威と連携】

 スパークス・グループ <8739> は200円台前半で売り買いを交錯させているが、早晩上放れ、3月18日に上ヒゲでつけた年初来高値284円奪回を視野に入れる強調展開が想定される。

 中小型株に強みを持つ独立系の資産運用会社でヘッジファンドにも通じ、不動産分野への投資ノウハウでも高い実績がある。19年3月期は成功報酬の減少で営業利益は39億100万円と前の期比4割減少したが、これは株価には織り込み済み。運用残高は増勢にあり20年3月期は巻き返しに転じる公算大だ。トヨタとの協業で立ち上げた未来創生ファンドはAIやロボティクス分野のスタートアップに投資、新時代の有望企業がここから輩出されることへの期待は大きい。

 量子コンピューティング分野への投資にも積極的で、同分野を深耕するため、量子アニーリングの権威である東北大学の大関真之准教授らと共同で新会社シグマアイ(東京都港区)を設立している。シグマアイについて会社側では「量子コンピューターによる分析・コンサルティング、ソフトウェア開発及びライセンスの取得、そして量子アニーリングを扱える人材の育成の3点を主眼に置いている」としている。高度なデジタル人材の払底が指摘される現在、人材育成への取り組みは重要で、株価も再評価されることになりそうだ。

 需給面では信用買い残が重荷となり売り板が厚いイメージはあるものの、昨年2月初旬には419円まで一気に上値を伸ばした経緯があり、日足一目均衡表の雲抜けを果たせば潜在的な急騰力が開花する可能性が十分にある。

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