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【特集】世界揺るがす「中国ゲーム規制」の衝撃、「ネクソン」買収説の深層<株探トップ特集>

2018年3月に中国では新規ゲーム審査が完全凍結された。「中国ショック」が世界に動揺を与えている。そして今、市場ではオンラインゲームのネクソン買収観測の行方に注目が集まっている。

―政府当局の統制が市場を翻弄、海外進出の拠点構築かそれともIP狙いか―

 「中国ショック」が世界のゲーム業界を揺さぶっている。2018年3月に中国では新規ゲーム審査が完全凍結された。更に8月には、販売が好調だったカプコン <9697> のゲームソフト「モンスターハンター」の中国版が配信停止となった。このことが報道されると中国のみならず日本のゲーム業界に激震が走った。その後、当局による緩和措置が取られたものの、巨大ネット企業の騰訊控股(テンセント)をはじめ、多くの中国ゲーム関連業界は停滞を余儀なくされた。そんななか、東京市場に上場するネクソン <3659> に買収説がにわかに浮上した。中国ゲーム業界にいま何が起こっているのか。その深層を探った。

●中国は世界最大のゲーム市場に躍進、君臨するのは王者・テンセント

 中国のゲームマーケットというと、日本の人気ソフトの海賊版が露天で並べられていて当局には内緒で楽しんでいるようなアングラ的なマイナスイメージがある。しかし、中国のゲーム業界はこの10年ですっかり様変わりした。中国ゲーム市場の2017年の売上高は前の年に比べ23%増の2036億元(約3兆2500億円)と世界最大市場に成長した。12年の603億元からは5年で市場は3倍強に拡大している。18年は規制の影響もあり前年比6%程度の成長に減速したとの見通しが出ている。中国のゲーム業界の内訳は、 オンラインゲームモバイルゲームで9割近くに達し、日本で普及しているような家庭ゲーム機は販売規制の影響もありシェアは1%にも満たない。その中国ゲーム業界に君臨しているのが、香港上場のテンセントと米ナスダックに上場する網易(ネットイース)だ。特に、テンセントのオンラインゲームでのシェアは17年時点で50%弱に達している。

●中国規制当局は昨春に許認可停止、年末再開も悲観ムード漂う

 中国ソーシャルアプリ「WeChat(微信)」のほか、メッセンジャーアプリ「QQ」、そしてオンラインゲームなどを手掛けるテンセントの株価は18年の年初にかけ急騰し、アリババと並ぶ世界的な巨大IT企業に成長した。しかし、テンセントの株価はその後に急落する。米国発のIT関連株の下落に加え、中国政府によるゲーム規制が同社を直撃したことが大きい。中国政府が、ゲームの審査批准を行う国家新聞出版広電総局を共産党の直接の管理下にするなど大きな改革を実施し、それに伴いゲームを管轄する規制当局は18年3月に新作ゲームの許認可を停止した。これが報道されるやいなや、オンラインゲームを配信するテンセントなどゲームメーカーの株価は軒並み暴落した。更に同年8月に、テンセントが発売していたカプコンの「モンスターハンター」の配信停止が言い渡されるという事態が起こった。この異例の展開に、業界内には悲観的なムードが漂った。昨年12月末、当局が新作ゲームの認可を再開したものの、テンセントの株価は既にそれまでの勢いを失い、1月末現在の株価は340香港ドル近辺と18年1月の高値から3割近く下落している。

●不適切コンテンツの取り締まりを強化、中国文化の普及へ海外進出促す

 なぜ中国当局は規制に乗り出したのか――。中国政府は、自動車や環境分野に加えゲーム業界に狙いを定めており、今回の取り締まりの目的の一つ目には、ポルノ、ギャンブルや暴力、そして政府が不適切と考えるコンテンツを含んでいるゲームの撤去がある。この不適切なコンテンツには、歴史を書き換えるようなものも含まれる。18年1月テンセントの大ヒットしたモバイルゲーム「王者栄耀」(日本名:伝説対決)は、中国の歴史上の人物について歪曲しているとして共産党機関紙「人民日報」から批判を浴びた。目的の二つ目としては、特にゲーム中毒や不法コンテンツから子どもを守るという点で、政府はゲームデベロッパー(開発元)に「確固たる社会的責任」を持つよう求めている。

 政府は子どもの視力低下を引き起こしているとしてゲームを非難さえしている。これを受けて、大手ゲーム事業会社の中ではテンセントとネットイースが積極的に海外市場への進出を図る一方で、中国の国内市場においては、未成年プレーヤーの実名登録とプレイ時間の制限を設けた。なかでもテンセントは顔認証で年齢確認や顔面距離を検知し、近づき過ぎると画面がぼやけるような機能をアプリに搭載した。9月、人民日報が2日間続けてゲーム業界に対する政府規制について、ただ押さえつけるのではなく、本質を見極める実効力の対策を練る必要があるとの旨の記事を掲載し、主流メディアのゲームに対する姿勢に変化の兆しが見え始めた。もともと、既に6億人以上のユーザーを持つ中国ゲーム市場において、一律に禁ずるというやり方には無理があったとの見方もある。また、政府が「量より質」を重視し海外展開をしている中国ゲーム企業に対しては、「中国の文化、価値観や審美趣味を広める」ためのエンジンとなりうるとしており、ゲーム市場の再編および制作会社の海外進出を促した。

●ネクソン持ち株会社の株式売却の観測、日本ゲーム業界に波紋も

 ゲーム認可の長い期間にわたる凍結は、世界最大のゲーム市場となった中国にとってこたえるものだった。同時に、中国政府による規制リスクは日本株市場でも強く意識されている。現地企業と組んで事業拡大をめざす日系ゲーム企業にはカプコン、コナミホールディングス <9766> 、スクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> 、ディー・エヌ・エー <2432> 、バンダイナムコホールディングス <7832> 、ネクソンなどが挙げられる。そんななか、テンセントによる「ネクソン買収説」が飛び出した。24日には「中国のテンセント・ホールディングスやPEファンドがネクソンの株式取得に向けた提案を検討している」との報道が流れた。ネクソンの創業者であり、持株会社NXCの代表である金正宙(キム・ジョンジュ)氏らの特別関係者が保有しているNXCの98.64%の株式が売却され、事実上ネクソンが売却されると複数のメディアによって伝えられた。NXCの保有するネクソンの株式は時価総額の約48%とみられている。その最有力候補とされている買い手が、世界最大のゲーム会社テンセントだ。

 既に、中国のテンセントらが同社と秘密保持契約を締結し、同社の財務情報が含まれる目論見書を受領したとの報道も韓国や中国では伝わった。「テンセントはネクソンを海外進出の拠点として活用したいのではないか」との憶測も飛び交うが、「ネクソン買収は純粋に同社のゲーム上のキャラクターなどIP(知的財産)が欲しいためだろう」との見方も根強い。ネクソンを巡っては、テンセントのほかネットイースやKKRなどPEファンド、米エレクトロニック・アーツ(EA)なども買収に手を挙げているともみられている。現時点では公表された事実はないが、ネクソンの買収が実現すれば日本のゲーム業界に波紋を投げ掛けるのは必至だ。中国ゲーム規制を経て、日本と中国のゲーム企業の関係は新たな局面を迎えようとしている。

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