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【特集】2019年の原油価格は反騰へ、米中両首脳の思惑とイラン供給懸念で<コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 2019年は原油市場が反騰することを期待したい。昨年末にかけて売りが売りを呼ぶ展開となり、ニューヨーク市場でウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は42.36ドルまで下落した。10月に76.90ドルまで年初来高値を更新し、12月に年初来安値をつける荒っぽさで、下落率は約45%となった。世界的な景気減速懸念が下落の背景である。

 反騰を期待する根拠の一つは、原油を高値圏から叩き落とした景気見通しの変化である。米中貿易戦争を背景に中国やユーロ圏ではすでに景気が減速しており、その他の主要国の足を引っ張るリスクが高まっている。

 日本の景気はすでに不安定であり、英国は欧州連合(EU)からの離脱問題で揺れていることから、主要国が景気減速から持ち直すことができるとは想像しづらい。米国では製造業の景況感が弱含んでおり、堅調な米経済も減速の波が迫っている。ただ、米中両国は貿易戦争を長期化させたいとは思っていない。

●米中両首脳の思惑は早期解決で一致

 国家主席の任期が撤廃された中国で、現職の習近平氏が国家主席の座にとどまろうとするならば、景気減速の長期化や景気後退(リセッション)は避けなければならず、景気を犠牲にして米国と長々と殴り合っている場合ではない。2期目を狙うトランプ米大統領は、次の大統領選まで米景気をさらに拡大しなければ再選は危うい。さらに先を見据えているという点で、両首脳の思惑は一致している。

 米国は中国に対して、知的財産権の保護、強制的な技術移転の禁止、中国国営企業に対する補助金の削減など、西側と相容れない慣行の訂正を要求しており、どのような落とし所が待っているのか想像もできないが、妥協しなければ中国は一段と追い詰められる。トランプ米大統領にとって、この戦いの勝利が2期目への起爆剤となる。

 米国は中国に対して関税の引き上げを3月2日まで見送り、中国と協議を続けている。この期間で曖昧さを残すことなくすべてが解決し、合意が結ばれるとは全く思えないが、関税引き上げを再度見送りつつ、年内にも終戦を迎えることを期待できるだけの背景は整っていると思われる。

●イランからの供給は減少の一途

 反騰を期待するもう一つの手がかりは、供給見通しである。ロイター通信の調査によると、昨年11月以降のイランの輸出量は減少を続けており、節目の日量100万バレルを下回っているという。12月も日量100万バレル未満で、1月も同水準で推移しているようだ。米国の制裁開始前の輸出量では日量250万バレルを上回る月があったことからすると、イランの窮状は明らかである。

 米国は昨年11月開始のイラン制裁の第2弾で、石油制裁を一部緩和し、特定の国に限ってイランとの取引継続を認めたが、11月以降に各国がどれだけ原油を購入しているのか不明である。トランプ米政権がイラン制裁の一部緩和を、原油価格を抑制するための手段として利用した一方で、各国にイラン産原油の購入を限定的にしか認めず、一日でも早くイランの原油輸出をゼロにしようとしているのではないか。米国に取引継続を認められている中国、インド、日本などがイラン産原油の購入を見送っている可能性もある。昨年12月にかけて、韓国のイラン産原油の輸入は4ヵ月連続でゼロだった。

●イランをめぐって続く供給懸念

 今年5月以降、イランと石油取引を続けると米国の制裁対象となるため、各国はイランとの取引に消極的にならざるを得ない。仕入先の政治・経済情勢を憂慮することなく、エネルギーを安定的に確保するためには、イラン以外の新たな取引先が必要である。

 今年、イラン経済はまた一歩崩壊に近づく。イランの減産分は、米国のシェールオイル増産が遅かれ早かれ穴埋めし、石油市場の需給を眺めるうえで、イランの存在はかなり薄くなる。南米ガイアナの巨大油田が来年にも生産を開始することは、産油大国であるイランのシェアを完全に消し去るかもしれないが、イランの供給を完全に補填できるようになるまで、供給懸念はついてまわるだろう。

 ただ、反騰を期待するにしても、原油市場が2016年以降の上昇トレンドに回帰するとは思えない。供給懸念は、景気減速に伴う石油需要の下振れ観測に相殺され、ほどほどの戻りにとどまるのではないか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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