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【特集】臨時国会“もう一つの焦点”、水道法改正案と「関連株」の行方 <株探トップ特集>

開催中の臨時国会でマーケットが密かに注目するのが水道法改正案だ。

―公営ガスにも民営化の動き、活躍の場広がるコンサル関連銘柄―

 現在開かれている臨時国会では、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案など重要テーマが目白押しだが、水道 法改正案の行方も見逃せない。水道法改正案は先の通常国会の衆議院で可決したものの、参議院では時間切れのため継続審議となった案件で、与党は今国会での成立を目指している。市町村などが手掛ける水道事業の広域化や民間企業の参入を促す内容とあって、同事業のコンサルティングを手掛ける企業などの追い風となりそうで、法案審議が本格化しつつある国会動向が注目される。

●耐用年数超過も更新進まず

 水道法改正案は、人口変動に伴う水需要の減少や水道施設の老朽化、深刻化する人材不足など、水道事業が直面する課題に対応するための基盤強化を図ることが目的。複数の市町村で事業を広域化して経営を効率化するほか、自治体が経営する原則を守りつつ、民間企業に運営権を売却する仕組みなどが盛り込まれている。現状では多くの自治体が一部業務に限って民間企業に委託しているが、この改正案では事業運営そのものを民間企業に委ねる内容となる。

 水道事業で喫緊の課題となっているのが、老朽化への対応だ。総務省が1月に公表した資料によると、40年の法定耐用年数を超えた水道管の割合は2016年に15.1%となっている一方、更新率は0.75%にとどまり、すべて更新するには130年以上かかると試算されている。更新が進まない理由としては、人口減や節水機器の普及などで料金収入が伸びず、赤字体質の自治体が少なくないためだ。

 6月に発生した大阪北部地震では、老朽化した水道管の破損により広い範囲で一時断水に追い込まれた。野党は水道事業の民営化に慎重な姿勢を示しているが、南海トラフ地震なども懸念されるなか、自治体側は対策の強化を迫られている。

●NSJ、オリジナル設など商機

 水道事業の経営を将来にわたって安定的に継続するためには、長期的視野に立った計画的な資産管理を行うことが重要で、水道事業のアセットマネジメントを手掛ける企業にはビジネスチャンスが広がりそうだ。関連銘柄の一角は足もと業績が好調で、こうした面からも注目したい。

 NJS <2325> は11月8日に、18年12月期通期の連結営業利益見通しを従来の16億円から26億3000万円(前期比2.1倍)に上方修正。売上高予想は従来通り180億円(同8.5%増)で据え置いたが、生産性向上による原価削減効果が利益を押し上げる。6月に愛知県豊田市から下水道管路施設の包括的維持管理業務を受託するなどの実績があり、今後の活躍が期待される銘柄のひとつだ。

 オリジナル設計 <4642> [東証2]が11月5日に発表した18年12月期第3四半期累計(1-9月)の単独決算は、営業利益が9億1200万円(前年同期比33.5%増)と通期計画の9億円を上回って着地。上下水道施設を中心とするコンサルティングで完成業務高が増加したことなどが貢献した。

 水道機工 <6403> [JQ]が11月2日に発表した19年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結営業損益は、2億6300万円の赤字(前年同期は5億6900万円の赤字)に縮小。7-9月期に限れば9700万円の黒字に浮上している。上下水道事業で老朽化に伴う施設更新・代替施設建設などの大口案件を受注したことや、メンテナンス案件での利益率改善が主な要因となっている。

 メタウォーター <9551> は10月31日、19年3月期通期の連結営業利益見通しを従来の70億円から72億円(前期比6.7%増)に上方修正。売上高予想は従来の1200億円(同8.2%増)で据え置いたが、足もとではO&M(運転・維持管理)事業やPPP(公共サービスの提供に民間が参画する手法)事業などが堅調に推移している。

 このほか、上下水道向けの設計・施工などを手掛ける荏原実業 <6328> は、18年12月期第3四半期累計(1-9月)の連結営業利益が18億2000万円(前年同期比31.5%増)で着地。上下水道工事を手掛ける大盛工業 <1844> [東証2]は、今19年7月期通期の連結営業利益を3億8600万円(前期比23.9%増)と見込んでいる。

●公営ガスに民営化の動き相次ぐ

 地方自治体は厳しい財政事情のもと、公営ガスを民営化する動きが相次いでいる。

 滋賀県大津市は10月24日、大阪ガス <9532> とジェイ エフ イー ホールディングス <5411> 傘下のJFEエンジニアリング、水道機工の3社で構成するコンソーシアムをガス特定運営事業者として内定したと発表。運営権は12月に設定され、19年4月からガス小売り事業および一般ガス導管事業、水道事業に関する業務などが開始される予定だ。

 また、福井県福井市は11月5日、ガス事業譲渡の優先交渉権者として関西電力 <9503> 、北陸電力 <9505> 、敦賀ガス(福井県敦賀市)の3社で構成するグループを選定した。12月下旬までに仮契約を結び、20年4月から事業をスタートする予定となっている。

 今後の焦点となりそうなのが、最大の公営ガス事業者である仙台市の動向だ。同市は10年4月に予定していた民営化を延期したあとも検討を続けており、民間企業による争奪戦が今後激しさを増しそうだ。

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