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【市況】中村潤一の相場スクランブル 「好機再び! 走り出す“夢特急7銘柄”」

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

 フランシス・ベーコンいわく「海のほかに何も見えない時、陸地がないと考えるのは決して優れた探検家ではない」。これは、最近のAIアルゴリズム取引に翻弄される株式市場に当てはめても、正鵠(せいこく)を射た言葉といえそうです。

 前回7月4日配信の相場スクランブルで「今年の相場は最初から上下にボラティリティが高く、目まぐるしく地合いが変わるのが特徴。今、目に見えている風景で弱気に宗旨替えするには時期尚早といえます」と述べました。その時のマーケットは上空に暗雲がびっしりと覆いかぶさったような状況で、先行き悲観的な見方に支配されていた時です。ところがその後の東京株式市場は、今さら言うまでもなくV字反騰に転じました。

●一方通行相場はCTA高速売買の演出

 大勢トレンドが上向きという意識が投資家の多数を占めるのであれば、相場全般が緩む場面では押し目買いが基本。逆にトレンドの先高感が失われ、中長期保有は危険という認識が浸透してくれば、株価が上昇した際には必然的に戻り売りの動きが顕在化することになります。正直なところ、7月初旬の時点では全体のムードは押し目買い意欲よりも戻り売りニーズのほうが明らかに強く、これが常態化して中長期トレンドも弱気転換する可能性が少なくないと思っていました。しかし、ここをなんとか凌ぎ切った格好です。注目していた日経平均週足の一目均衡表では雲を下抜けることなく、片足を突っ込んだところから切り返して再び雲の上に浮上、結果的に今回もセリングクライマックスのステージに進むことなしに体勢を立て直すことに成功した形となっています。

 これは、ドル円相場が理外の理で円安方向に大きく振れたことが東京市場にとって慈雨となった格好ですが、それ以上にヘッジファンド系資金による株式需給面での要素が大きいと思われます。世界の経済実勢や金利などのマクロ指標に連動して機動的売買を行うグローバル・マクロに加え、先物やオプションに特化したトレンドフォローで高速売買するCTAなどが全軍躍動モードとなると、実需買いの動きに乏しい市場は否応なく振り回されることになります。これに乗じて投機資金が動き出せば文字通り燎原の火のごとしで、上にも下にも大方の予想を嘲笑うかのような一方通行相場が繰り広げられるわけです。

●2万3000円の3点天井回避できるか正念場

 米中貿易摩擦については引き続き警戒を緩めるわけにはいきませんが、通商問題を材料に売り叩いて下値での買い戻しを狙った動きは足もと沈静化しており、これも今年に入って何度となく繰り返されてきた光景で目が慣れてきた部分もあります。米中貿易摩擦は、保護主義路線を前面に押し出すトランプ政権が主導しているわけで、中国がよほど譲歩姿勢をみせない限り、そう簡単に落としどころが明確化するような類いのものではありません。米国の中国からの輸入額が5000億ドル超、対して中国の米国からの輸入額は1300億ドルに過ぎず、関税合戦では勝負にならないというのは既に言われている通りです。

 そして、相場復活の条件は決して貿易摩擦問題に委ねられているのではないということは、今回の経緯をみてもよく分かります。地合いを左右するのは需給悪の改善であって、これは株価水準の調整と時間の経過(日柄調整)がカギを握っています。ただ、その浮き沈みのタイミングは大袈裟に言えば神のみぞ知る領域であり、だからこそメディアでは株価動向を見てから、その理由として貿易摩擦問題などが、まことしやかに後付けされるというパターンが常となっているのです。

 とすれば、フランシス・ベーコンの言葉は、現在の様変わりの地合いについても当てはまる可能性があり、決して油断はできません。今度は日経平均株価で上値2万3000円近辺が鬼門。5月21日、6月12日に続いて今回もここで3点天井をつけるケースも念頭に置いておくところで、ある意味上昇トレンドの確立はここからが正念場ともいえます。

●4-6月期の企業決算発表は追い風ムード

 何はともあれ1ドル=113円台に入った円安は強力な援軍ですが、この方向性が継続するかどうかは、これから国内企業の19年3月期第1四半期(4-6月)決算発表期に突入するだけに大きなポイントとなることは間違いありません。直近ではパウエルFRB議長が上院議会証言で、米経済の強さに言及し「段階的な利上げ継続が最善」との見解を示したことから、日米金利差拡大の思惑が円安の流れを肯定するムードとなっていますが、果たしてどうなるでしょうか。

 4-6月期決算では東証1部ベースで小幅ながら増収・経常増益を確保できる公算が大きく、通期ベースでも増収増益が有望とみられています。最終利益については通期で2%程度の小幅減益がコンセンサスのようですが、これはトランプ減税効果の反動によるもので、マーケット的には織り込んでおりネガティブに捉える動きはないようです。むしろ最近の円安恩恵をバックに、最終利益段階でも増益に転じるとの見方が強まりそうで、これは全体相場にも有利な条件となります。

 また、マクロ面から中長期視野に立った場合、日本国内だけを見れば、引き続き日銀のリフレ政策の流れに変化はなくドル高・円安の根拠ともなっていますが、これはグローバルな潮流ではなく、米国に追随してユーロ圏も金融政策は引き締めへの道筋をたどり始めています。業績相場のステージの次に来るのは「逆金融相場」であり、世界株式市場を見渡した全体観として今は業績相場を謳歌するとしても、早晩冬支度を考えなければいけない時間軸にあることは確かでしょう。ただし、それは来年以降の相場であって、今年の相場ではないと個人的には考えています。来年日本では10月に消費増税が予定されており、これは株式市場にとってもかなりの難敵となる可能性があります。

●理屈ではなく夢を思い描く視座を持つことが大切

 個別株に目を向ければ、全体の地合い以上に勢いのあるもの、また雌伏期間を経てここから本領を発揮しそうなものと色々ありますが、いずれにせよ、上値余地を大きく内包している銘柄を選別していくことが十分に可能な地合いとなっています。

 もっとも当コーナーがアップされる水曜日というのはSQ週でなくても、相場のトレンドが変わりやすい巡り合わせにあるようで、今年は特にその傾向が顕著です。前回の「需給相場の扉が開く、復活のキラ星7銘柄」において連続で注目銘柄として取り上げたマネックスグループ <8698> は、正直タイミングを見誤りましたが、足もとは漸く動きが軽くなってきた感があります。

 一方、Olympicグループ <8289> やリネットジャパングループ <3556> [東証M]については、その後強力な上昇波を形成、とりわけ前者は“特急モード”全開で需給相場が加速した形となりました。2銘柄とも目先は利益確定の動きに抗えず調整モードとなっていますが、押し目狙いで対処したいところです。

 株価は基本的に企業のファンダメンタルズを反映するものですが、至近距離で凝視するだけでは相場の醍醐味を味わうことはできません。本質を知るためには、あえて離れて全貌を眺め、夢を思い描く視座を持つことが変身銘柄に遭遇するための条件となります。理屈だけで上昇する株が抽出できるのであれば話は簡単ですが、理屈が正しくても皆が良いと思えば株価はそこで織り込み完了となってしまいます。強弱感の対立こそが株価が動く原動力であって、人気化の経緯をたどる銘柄には常にそれが感じられます。

●好業績で好需給のクミアイ化、再びの日本和装

 今回はまず、クミアイ化学工業 <4996> に着目。東証信用倍率が0.76倍と1倍を大きく下回り、日証金では株不足状態であり17日現在で逆日歩がついています。北米で畑作用除草剤アクシーブが好調に伸びて収益を牽引、18年10月期は本業のもうけを示す営業利益段階で22%増の46億円を見込んでいます。アクシーブ以外にも水稲用除草剤「エフィーダ」や「ノミニー」など期待を担う商品を有しています。

 昨年来、幾度となく紹介してきた日本和装ホールディングス <2499> [東証2]も改めてマークしたい局面。今年5月に678円の高値をつけた後、調整モードとなっていますが、25日移動平均線との上方カイ離修正が進んだ時価近辺は再び伸び上がるチャンスです。着物の販売仲介を展開しており、無料の「きもの着付け教室」運営や着物・帯の販売仲介の手数料が収益の源泉です。京都と松江の拠点開設に加え、首都圏2拠点を4拠点にして営業を強化、18年12月期営業利益は前期比18%増の5億9000万円を予想しています。インバウンド関連株としての切り口も引き続き株価の刺激材料です。

●キャッシュレスで高見サイ、復興を担う信和

 出来高流動性に乏しいものの、高見沢サイバネティックス <6424> [JQ]も好チャートで、動き出した時の足の速さは魅力的な銘柄です。券売機大手で高い技術力を武器にメカトロ分野にも展開しています。7ヵ国語対応のATM券売機などは東京五輪に向け需要拡大が期待されるほか、キャッシュレスシステムでも国策支援に乗る可能性があります。19年3月期営業利益は前期比2.6倍の4億円を計画するなど高変化率が際立ちます。

 信和 <3447> [東証2]は仮設資材や、物流機器の製造大手で建設業界向けに「システム足場」で圧倒的な国内シェアを持っています。豪雨被害からの復興を担う関連銘柄としても注目。動意含みですが、PER10倍前後と割安感があるほか、19年3月期は期末一括配当44円を計画、配当利回り3.8%台は特筆されます。

●AI絡みのMCJ、自動車整備需要でブロドリーフ

 MCJ <6670> [東証2]はパソコン関連製品の受注生産を手掛けネットで直販するビジネスモデルが特徴で、「乃木坂46」を起用したテレビコマーシャルで認知度を高めシェアを伸ばしています。連結子会社を通じて、AI開発・ディープラーニング向けパソコンシリーズを5月から投入しており、今後の収益寄与が期待されます。株価は800~850円のゾーンで売り物をこなしながら徐々に下値を切り上げており、5日・25日移動平均線のゴールデンクロスが目前で、上げ足を加速させる場面も想定されるところです。

 ブロードリーフ <3673> も25日移動平均線をサポートラインに下値を切り上げる展開が続いています。同社は自動車整備業者や部品商社向けなど自動車アフター市場向けに部品管理ソフトを開発。自動車のリコールが増えるなか、整備業向けネットワークシステム「.NSシリーズ」も展開し需要を捉えています。業績は18年12月期営業利益ベースで33億円と2ケタ近い成長を見込んでおり、株主優待に厚い点も特長です。

●うねりを見せ始めたロングライフHDも注目

 ロングライフホールディング <4355> [JQ]は施設型介護を主力に、在宅介護や介護専門学校など介護サービス事業を手掛けており、富裕層をターゲットに会員制リゾートホテルなども運営しています。リゾートホテルは函館、由布院、石垣島、箱根のほか、海外へも展開しており、中期成長期待が大きい。また、介護のノウハウを積み重ね、日本のケアサービスを中国で展開するという経営戦略にも将来性を見出すことができます。株価はここ売買高を膨らませながらうねりを伴う足で、上値指向を強めており注目といえそうです。

(7月18日記、隔週水曜日掲載)

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