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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆焦点拡散の買戻し相場◆

上海総合 <日足> 「株探」多機能チャートより

〇英混乱、市場の焦点拡散〇
英国で離脱強硬派の2閣僚が相次ぎ辞任。メイ首相の柔軟路線に反対するもので、ブレグジットの行方が混沌としている。現状の世論調査で、メイ首相の対応評価は29%に低下(17年前半は55%あった)、対EU強硬派、そもそもブレグジット反対派と3分割された状態の様だ。一部には、ブレグジットそのものが中止に追い込まれるとの憶測も出ている混乱状況のようだ。

結果的に、英ポンドが売られ、ユーロが相対的に安定。ポンド安を好感し英国株が上昇、5月ドイツ輸出が予想以上に伸びたことで欧州株も全面高、アジア株高の流れを引き継いだ。米中貿易戦争に追加材料が無く、中国当局のテコ入れと見られる上海株急騰もあって、買戻しを急ぐ動きになったと考えられる。

米市場では金融株が牽引。S&P銀行株指数は+2.7%。上昇率は3月26日以来の大きさ。13日からJPモルガン、ウェルズ・ファーゴ、シティグループを皮切りに4-6月期決算発表が始まる。一部に18年米企業業績予想を上方修正する動きもあるようで、「好決算期待」が市場に戻って来た様だ。世界経済への懸念で売り込まれていたキャタピラーやシーメンスなど重工業関連株の上昇も目立ち、買戻しを急ぐ動きの象徴と見られている。

ただ、先行きのシナリオは一段と組めなくなっている。11日からはトランプ大統領の欧州歴訪が始まる。まずはベルギーでのNATO首脳会議で、防衛費負担を巡っての鍔迫り合いが想定される。その後、混乱の英国公式訪問、エリザベス女王との対談が予定されている。英米は南シナ海問題など、意外な接近を見せる公算もある。

週明け16日にはヘルシンキでプーチン露大統領と首脳会談を行う。最大の注目点は、9月ウラジオストクでの東方経済フォーラムにトランプ大統領が参加するかどうか。既に北朝鮮、中国、韓国、日本の参加が見込まれており、6ヵ国首脳が集まるヤマ場となる公算がある。

この過程で、欧州、主にドイツとの自動車戦争が高まるリスクがあり、対中国でも変化が出る(先回りして李克強首相が自由貿易を訴えたが)可能性もある。関連ニュースに神経質な状況が続こう。

9日の東証空売り比率は40.6%、6月15日以来の低水準となったが、まだ調整色は残っている。全市場ベースの新高値銘柄数58対新安値143。ドル建て日経平均は199.6ドル、従前の205ドル近辺まで戻せるかが次の焦点と考えられる。

以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/7/10号)

《CS》

 提供:フィスコ

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