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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆中国、WTOに怒られる◆


〇中国の静かな姿勢、売り方に戸惑いも〇
10日、米当局は企業秘密の窃盗でアップルの中国人元社員を起訴した。自動運転車に関連した設計図を個人のパソコンにダウンロードし、中国行きの航空券を予約し、7日にサンノゼ空港で逮捕されていた。中国の小鵬汽車に転職する予定だったとされる。アップルの関連社員は約5000人、管理もタイヘンだ。

時事通信によると、11日、WTO(世界貿易機関)は中国の貿易政策に関する審査報告書を発表。「知財権の整備は中国の主要課題であり続けている」と批判し、知財関連法はほとんど変わっていないこと、政府の不透明な補助金支出に関する情報開示、鉄鋼の過剰生産などを問題点とし、是正を求める内容。

今回は問題となっていないが、中国最大の航空機製造グループAVIC(中国航空工業集団)も一つの焦点。111の企業、36の研究開発センターを持ち、56万人の従業員を抱える。戦闘機、爆撃機からドローン、民間旅客機などを一手に生産する。実態は中国空軍傘下の企業。ブラジル・エンブラエル、エアバスなどと合弁展開し、10年に米エビックエアクラフト、テレダイン・テクノロジー、11年にコンチネンタル・モータース、シーラス・エアクラフトを次々に買収した。独・英社も買収している。ここでもB2爆撃機などの機密情報を盗もうとして中国人スパイが逮捕・起訴された。こういった企業体の変革にまで至るのかどうか、注目されるところだ。

共同通信が3日に報じた中国軍内部資料によると、軍の大規模組織改革は、これまでの「国土防衛」から「外向型」に転換、軍事的影響力を海外に拡張する方針が明らかとなった。「中国の国益が国境を越え広がるにつれ、緊急にグローバルに国の安全保障を維持する必要がある」としている。「一帯一路」と両輪で、覇権主義を顕わにしつつある。そのための技術革新「AIによる軍事革命」を強力に進める姿勢にある。

米国は中国のこの覇権主義的膨張を止めるべく、貿易戦争を仕掛けているのであり、単なる貿易赤字の是正ではないことは市場も認知していると思われる。中国も承知しているのであろう、ロイターによると「国営メディアの報道を抑制」している。とりわけ、トランプ大統領への非難を禁止している。貿易の是正を求めているのであれば、数字の変化とともに市場の見方が変わるが、今回の攻防は落とし処が見えていない。50年戦争、100年戦争と言った見方が出る一方、ある日突然、両国が一定の和解をしても不思議ではない。売り方が攻勢を掛けているものの、今春ほどの大崩しに至っていない背景の一つと考えられる。

今後、欧州、ロシア、日本などを交え、綱引きが複雑化する可能性がある。それを睨みつつ、世界経済へのダメージを測って行くことになると考えられる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/7/12号)

《CS》

 提供:フィスコ

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