【特集】カジノ関連株“回り始めたルーレット”、法案成立なら何が来る? <株探トップ特集>
今国会こそ「IR実施法案」、通称“カジノ法案”の成立なるか。投資家からも高い関心が寄せられている――。
―安倍首相は今国会にIR実施法案の提出表明、マーケットの関心高く―
第196回通常国会が22日に召集され、安倍晋三首相は施政方針演説で、今国会の最優先課題に据える「働き方改革」や教育の無償化などを柱とする「人づくり革命」を実現させる考えを強調。あわせて、観光立国推進の施策として、IR実施法案の国会への提出を表明した。みんなの株式と株探が集計する「人気テーマランキング」で“カジノ関連”が上位にランクするなど投資家の関心は依然として高く、これから迎えるIR実施法の成立やIR区域の認定、IR業者の選定などが関連銘柄の大きな刺激材料となりそうだ。
●区域数や入場規制が今後の焦点
IR実施法案とは、カジノや会議場、ホテル、レクリエーション施設などが一体となった統合型リゾート(IR)を整備するための具体的な制度設計を示す法案。2016年12月に成立した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(IR推進法)では、同法の施行から1年以内をメドに実施法案の策定が定められ、昨秋の臨時国会で審議される予定だったが、衆院選の影響で通常国会に持ち越された。
具体的なルールを決めるIR実施法案は、政府の有識者が17年7月末にまとめた報告書が土台となる見通し。この報告書ではカジノの事業免許を更新制にし、暴力団など反社会勢力の影響を排除することが盛り込まれているほか、日本人にはマイナンバーカードでの本人確認を徹底して入場回数を制限することや、カジノ施設内でのATM設置を禁止することなども求めている。一方、IRの区域数や入場規制(例えば1週間ごとの入場回数の上限や入場料の目安など)の具体的な数値や基準は示されておらず、今後の大きな焦点となる。
●熱帯びる各自治体の誘致活動
カジノの開業は20年代前半が見込まれ、政府は東京オリンピック・パラリンピック後の外国人観光客の誘致につなげたい考え。事業認定は当初2~3ヵ所にとどまる見通しで、観光の目玉づくりに悩む各自治体の誘致活動は熱を帯びている。直近では15日に和歌山県がIRシンポジウムを開催し、県市・議会・経済界が一丸となってIR誘致に取り組む姿勢をアピール。同県ではイントランス <3237> [東証M]が16年に和歌浦湾に浮かぶリゾート・アイランド「和歌山マリーナシティ」内の3施設を取得するなどIR開発を推進しており、株価は今月中旬に動意づく場面がみられた。
また、大阪府は「16年度IR立地による影響調査報告書」で、夢洲(ゆめしま)地区で大型のIR施設が開業した場合、開発で1兆3300億円、開業後は毎年6300億円の経済効果が見込めると試算した。夢洲に土地を所有する山九 <9065> や上組 <9364> 、近辺に土地を持つ杉村倉庫 <9307> [東証2]には思惑が働きやすい。
このほか、名乗りを上げている自治体は北海道や横浜市、長崎県などがあり、大阪本社で営業所が和歌山や横浜にある南海辰村建設 <1850> [東証2]は要マーク。北海道の関連ではゲームセンターやボウリングなどの複合施設を運営するSDエンターテイメント <4650> [JQ]、横浜市の関連では神奈川県が地盤の工藤建設 <1764> [東証2]、長崎県の関連では子会社がテーマパーク「ハウステンボス」を運営しているエイチ・アイ・エス <9603> が注目される。なお、6日付の毎日新聞は「ハウステンボス(HTB、長崎県佐世保市)の沢田秀雄社長は、長崎県や佐世保市などが推進するカジノを含むIRの誘致が実現した場合、HTBに接する大村湾に『海中カジノ』を開設する構想を明らかにした」と報じている。
●テックファームHDやピクセルに商機
今後、カジノ開設に向けた具体的なルールが決まってくれば、関連産業が大いに活気づくことが予想される。そこで、まず取り上げたいのが、グループ会社がカジノ施設向け電子決済ソリューションなどを手掛けているテックファームホールディングス <3625> [JQG]だ。17年2月からは世界のカジノゲーミング市場に関する調査サービスを国内企業向けに提供しているほか、同年12月にはカジノ業のアンチ・マネーロンダリング(資金洗浄対策)に関する調査リポートの一般販売も開始している。
また、グループ会社のLT Game Japan(LTJ)がカジノ用ゲーミングマシンの開発・販売を行っているピクセルカンパニーズ <2743> [JQ]からも目が離せない。同社は17年12月に発表した中期経営計画に、カジノ関連事業の拡大・発展を目指すことを明記。LTJは17年11月にマカオで開催された大型国際カジノ見本市に、自社開発したカジノ用スロットマシンを出展するなど積極的な姿勢をみせている。
セガサミーホールディングス <6460> は日本版カジノの展開を見据え、17年4月に韓国企業との合弁で同国にIRを開業した。同年12月にはグループ会社が米ネバダ州ゲーミング機器製造・販売ライセンスを取得したほか、京都大学とギャンブル依存症の発症メカニズムの解明を図る共同研究を行うことで合意している。
●オーイズミやインターライフにも注目
これ以外では、世界市場に向けてゲーミング機器およびカジノ・マネジメント・システムの開発・製造・販売・サービスを行っているコナミホールディングス <9766> 、フィリピンでグループ会社がIR施設を運営しているユニバーサルエンターテインメント <6425> [JQ]、遊技機用カード大手のゲームカード・ジョイコホールディングス <6249> [JQ]、紙幣鑑別機などを製造する日本金銭機械 <6418> 、メダル計数機大手のオーイズミ <6428> 、貨幣処理機大手のグローリー <6457> 、メダル払出機などを手掛けるマミヤ・オーピー <7991> [東証2]に商機。
アミューズメント施設などの内装工事を請け負うインターライフホールディングス <1418> [JQ]、パチンコチェーン大手のマルハンが筆頭株主のイチケン <1847> 、パチンコホール経営を支援するリアルタイムコンピューターシステムを開発・販売するサン電子 <6736> [JQ]およびダイコク電機 <6430> 、パチンコ・パチスロ向けのコンテンツ仲介事業を展開するNuts <7612> [JQ]、商業用映像看板を販売するアビックス <7836> [JQ]のビジネス機会の拡大も期待される。
株探ニュース