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【特集】TOKAI Research Memo(5):2021年3月期に連結営業利益で225億円を目指す

TOKAI <日足> 「株探」多機能チャートより

■今後の見通し

2. 中期経営計画について
(1) 基本方針
2018年3月期よりスタートした新中期経営計画 (IP20)では、基本戦略としてトップラインの成長を最優先に「守りの経営」から「攻めの経営」に転じることを打ち出した。今後4年間で顧客基盤の拡大につながるM&Aやアライアンスを積極的に推進し、総額1,000億円の戦略的投資を実行していく方針となっている。M&Aの対象としては、中核事業であるガス、CATV、情報通信サービス等で顧客基盤を持つ企業のほか、既存の生活関連サービスの周辺領域についても対象としていく方針となっている。TOKAIホールディングス<3167>では「Total Life Concierge」構想実現のため、また長期的に安定した成長を実現していくためには、新たな価値・サービスを提供していく必要があると考えているためだ。具体的には、ヘルスケアや教育、モビリティ、シェアリングエコノミー等の分野での事業展開が候補になってくると見られる。

(2) 経営数値目標
経営数値目標としては、2021年3月期に連結売上高で3,393億円、営業利益で225億円、親会社株主に帰属する当期純利益で115億円を目指す。2017年3月期との比較で見れば、売上高で1.9倍、営業利益で1.8倍、親会社株主に帰属する当期純利益で1.6倍の水準となる。また、グループ顧客件数は1.7倍の432万件以上を目指していく。財務面では、M&Aやアライアンス等により1,000億円の投資を実行していくため、有利子負債の増加を見込んでいる。有利子負債/EBITDA倍率で見ると、2017年3月期の2.0倍から2021年3月期には2.8倍とやや拡大するものの、財務の健全性には問題のない水準と言える。また、自己資本比率は31.6%、ROEは13.0%の水準を計画している。

なお、今回の投資1,000億円を実行するに当たって、対象案件の投資基準としてはROI(のれん償却前営業利益÷投資額)で約8%の水準を基準として検討していくことにしている。

3. 主力事業の取り組みについて
(1) LPガス事業
家庭・業務用のLPガス市場は、人口の減少や機器の省エネ性能向上等により、今後4年間で約7%の市場縮小が予想されており、競争激化により中小零細事業者が淘汰され、大手資本への集約化が進むとみられている。同社は現在、顧客件数で業界第3位だが、主要営業エリアである静岡県では22%とトップシェア、関東圏では7%で第2位となっている。各地域で多くの中小零細事業者があるため全国で上位10社のシェアを合計しても20%に満たない状況であり、市場全体が縮小してもシェアを拡大することによって成長を続けていくことは可能と言える。

中期経営計画では既存エリア内でのシェア拡大に加えて、営業エリアを拡大していくことで持続的な成長を目指し、顧客件数を4年間で3割増となる76万件まで拡大する計画となっている。新規営業エリアとしては、2016年3月期より中部エリア(岐阜県、愛知県)、東北エリア(宮城県)で合計5拠点(岐阜、豊川、西三河、仙台、いわき)に進出したほか、2017年9月には新たに岡山県(倉敷)にも進出した。岡山ではグループでCATV事業を展開する(株)倉敷ケーブルテレビ(顧客件数 放送9万件、通信3万件)があり、同顧客に向けてクロスセルを提案していくほか、サービスエリア内の約26万世帯に対する新規営業に取り組むことで、まずは1万件の顧客件数の獲得を目指している。また、2017年11月には岐阜県(多治見)に営業所を開設したほか、2018年3月までに福岡県(福岡)、2019年3月期には三重県(三重)、長野県(諏訪)にも進出する計画となっている。福岡については建物管理サポート事業を、諏訪ではCATV事業をそれぞれグループで展開しており、クロスセル戦略を推進していく。

同社はこれら新規エリアの顧客件数を、2017年3月期末の8千件から4年後には9倍増となる7万件まで拡大する計画で、エリア内での市場シェアは約2%の水準となる。一方、既存エリアについてもクロスセル提案や価格戦略等により、市場シェアを約8%から約10%まで拡大していくことを目指している。

(2) 都市ガス事業
都市ガス市場では小売の自由化が2017年4月に解禁されたことで、今後は大手資本によるグループ化が進むものと予想される。現在、都市ガス事業は全国で203社あるが、このうち大手4社を除く中小事業者の再編統合が進むものと予想される。

こうしたなかで、同社は積極的にM&Aやアライアンスを推進していく戦略となっている。導管延長投資や、新たな産業用の需要等も取り込みながら、契約件数を2017年3月期末比で2倍となる10万件を目指していく。新規進出エリアについては全国すべてを対象にしているが、グループ内でほかのサービスを展開しているエリアが望ましいことに変わりない。また、同社は水回りを中心としたリフォーム事業(セグメントは建築及び不動産事業に含む)も展開しており、業界内でも屈指の販売力を持っている。都市ガスの顧客件数が増加すればリフォーム事業の収益拡大期待も高まることになる。中小零細の都市ガス事業者は、他のサービス・商材を扱っていないところがほとんどであり、同社が資本を投入することでこうしたサービス・商材を扱えるようになれば、相手先企業にとっても経営面でプラスになるため、M&Aも比較的スムーズに進むことが予想される。

(3) 情報通信事業
国内のブロードバンド市場は成熟化しているとはいえ、今後も年率1%程度の伸びが続くと予想されている。同社はISP事業の売上高で国内第4位に位置しており、市場シェアは静岡県内で約23%、関東営業拠点エリアで約4%となっている。同社は光コラボの新規獲得・転用を進めることで1顧客当たりの売上高、利益を拡大し、また、ISPのシェアについても維持拡大を進めていく考えだ。光コラボ率※に関しては2017年3月期実績の55.9%から4年後に85.1%まで引き上げていく。これにより、1顧客当たり月額収入は3,048円と2017年3月期比で21%上昇する見込みだ。ブロードバンドサービスの顧客件数に関しては、4年後に1.7倍増の134万件を見込んでいる。

※光コラボ率=光コラボ期末契約件数÷(フレッツ光+光コラボの期末契約件数)


また、MVNO市場については格安スマートフォンの普及により、契約件数(SIM型)で2016年度末の880万件から4年後には1,950万件と高成長が見込まれている。同社はこうした高成長市場を取り込むため、新規事業として2017年2月より「LIBMO」のサービスを開始し、4年後には顧客件数で13.8万件まで拡大することを目指している。LIBMOはデータ通信+音声プランで月額利用料が1,180円~2,980円と低価格のサービスだが、これにセキュリティサービスや保険サービスなど自社サービスを加えることで顧客売上単価をアップし、収益化を図っていく戦略だ。販売チャネルとしては、既存ISP顧客向けに加えて、家電量販店やWEB経由での販売が主力となっている。特に、家電量販店では光コラボとのセット販売などによる割引施策も導入しており、光コラボ顧客の新規獲得や解約防止等にも寄与している。

一方、法人向けの情報通信サービスについては、売上高で2017年3月期の206億円から2021年3月期は295億円と年率9%の成長を計画している。なかでも、市場が急拡大しているクラウド関連サービスを強化する。同社は自前で約6,000kmに及ぶ光ファイバーネットワーク網を構築しているほか、静岡と岡山の2ヶ所にデータセンターを保有し、成長を支えるためのインフラは既に整備されている。法人向けのクラウド接続サービス市場は、2016年度の53億円から4年後には3.7倍の195億円と高成長が予測されており、同社は最大手のAWSのほか、大手パブリッククラウドとの接続ソリューションをフルカバーしていることを強みに、売上拡大を目指している。また、11月10日には学校法人信学会(長野県)と業務委託契約を締結し、光インターネットサービスを信学会の自社ブランドとして同会の会員や教職員向けに提供を開始したと発表。このモデルは提携事業者は自らの顧客への販売に専念できることから、生活インフラサービスである光インターネットサービスを自社ブランドで展開したい事業者向けのサービス。既にエネルギー事業者(都市ガス・LP ガス)からも引き合いがあることから、今後さらに積極的に進めていく計画である。

拡大戦略の1つとして、2017年10月には「Google Cloud Platform(以下、GCP)の導入・技術サポートで国内トップクラスの実績を誇るクラウドエース(株)と戦略的業務提携を発表した。今後、両社でGCPの販売を協業して進めていく。同社にとってはGCP接続回線サービスの契約件数増加につながる取り組みとして期待される。

(4) CATV事業
CATV事業は現在、1都5県(静岡県、東京都、神奈川県、千葉県、長野県、岡山県)においてグループ会社8社で運営している。顧客件数は東京ベイネットワークを子会社化したことで2017年3月期末の73万件から2017年9月末時点では99万件(放送サービス75万件、通信サービス24万件)へと大きく拡大している。また、2017年11月には新たにテレビ津山(岡山)の株式を取得し、子会社化することを発表している(2018年1月より連結子会社化予定)。顧客件数は放送サービスで約1万件、通信サービスで4千件となるため、2018年3月期末までに100万件を突破することが確実視されている。今後は既存エリアにおいて年間2万件ペースで顧客を増やしていく計画だ。過去も2万件ペースで純増していることから達成は可能と見られるが、足りない場合は更にM&Aを行う可能性もある。また、同事業の営業利益については、2017年3月期の28億円から2021年3月期には49億円まで拡大する計画となっている。

同社のCATV事業の強みは、自前の光ファイバーを構築していることにある。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて高精細な4K/8K放送の試験・実用化放送が開始されるが、こうした高精細な放送を流すには光ファイバーや関連機器の投資が必須となる。同社では2020年度までに65億円をかけサービスエリア内の100%光化をほぼ達成する計画となっている。東京ベイネットワークについても光化投資を行うことでサービスの向上を図り、現在低水準にとどまっている通信サービスの契約件数拡大により収益性の向上を図る戦略となっている。

また、CATVネットワークの付加価値を高める取り組みとして、地域無線ネットワーク「BWA(Broadband Wireless Access)」の構築にも取り組んでいる。地域BWAとは専用帯域として確保された周波数の電波を利用して、地域の公共サービスの向上やデジタル・ディバイド(条件不利地域)の解消等、地域・公共の福祉の増進に寄与することを目的とした無線ネットワークシステムを指す。具体的には、地域行政と連携した防災ネットワークやWi-Fiスポットインフラの提供等に利用される。2017年10月には東京ベイネットワークでも地域BWA用の無線局免許を取得しており、こうした付加サービスを提供していく計画となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《MW》

 提供:フィスコ

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