【特集】鈴木英之氏【通過点“2万2000円”、上昇トレンドの向かう先】(2) <相場観特集>
鈴木英之氏(SBI証券 投資調査部長)
―日経平均きょうも騰勢維持、止まらない実需買いどこまで―
東京株式市場は日経平均株価が寄り付き高く始まったものの、その後は目先スピード警戒感から利益確定売りに押され、前週末の終値近辺を往来する膠着感の強い展開となった。騰落レシオは日経平均に限れば、前週末時点で160%弱と極めて過熱感の強い領域に達している。一方、押し目形成場面では日銀のETF買いや、出遅れていた国内外機関投資家の実需買いが厚く、深押しする気配もない。11月相場の見通しについて、市場第一線で活躍する識者の意見を聞いた。
●「業績好調で96年高値更新の展開へ」
鈴木英之氏(SBI証券 投資調査部長)
東京株式市場は上昇基調を強めている。日経平均は2万2000円台に乗せたことで、1996年6月につけた2万2666円の終値ベースの高値は今後、更新する場面も予想される。
96年当時に比べ、日経平均の1株当たり利益は3倍に増加しているほか、同純資産も2倍に膨らんでいる。それだけに、バリュエーション的に足もとの株価は説明が可能な水準と言えるだろう。96年当時は、金融機関が不良債権を抱えるなか消費増税を引き上げ、その後のアジア通貨危機を迎えた。しかし、いまは当時のような状況にはない。
今後、年末までを視野に入れれば2万3000円を意識する展開もあるかもしれない。ただ、2万2600円台の高値を抜ければ、92年年初以来といった水準となる。株価のフシが見当たらなくなる分だけ、株価の振れは大きくなり不安定さを増す可能性はあるとみている。
足もとで本格化しつつある中間決算は好調だろう。この点を相場は織り込んで上昇していると思う。ただ、前期は下期から円安が進行した。それだけに今下期以降は円安効果による業績の上乗せ期待が薄まる点には注意が必要だ。
また、米国の税制改革の動向や北朝鮮など地政学リスク、中国の景気回復がどこまで続くか、などの点は用心深くみておく必要があるだろう。
個別セクターでは、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> や三井住友フィナンシャルグループ <8316> といったメガバンクを中心とする金融株には出遅れ感があるとみている。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資調査部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て2009年5月より現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。
株探ニュース