【通貨】為替週間見通し:ドル・円はもみあいか、トランプ政策と米利上げ継続の可否を見極める展開
ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより
■北朝鮮情勢緊迫化などでドル・円は昨年11月以来の107円台に下落
先週のドル・円は下落。北朝鮮が3日に核実験を強行したことや、弾道ミサイル発射を準備しているとの観測から、朝鮮半島有事の可能性への警戒感が高まり、昨年11月中旬以来となる1ドル=107円台前半まで円高・ドル安が進んだ。
ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事の「インフレが軌道に乗るまで、一段の利上げに警戒」などの発言、タカ派のフィッシャー米FRB副議長の辞任表明を受けて、FRBの年内追加利上げ観測が後退し、ドル売りも強まった。
「トランプ米大統領が議会と債務上限の3カ月間引き上げで合意」との報道が好感されたものの、超大型ハリケーン「イルマ」への警戒感もあり、米国10年債利回りが昨年の米大統領選挙時の水準まで低下し、今年の最低水準を更新したことから、ドル売りが一段と強まった。8日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時107円32銭まで下落し、107円80銭でこの週の取引を終えた。取引レンジ:107円32銭-109円93銭。
■ドル・円はもみあいか、トランプ政策と米利上げ継続の可否を見極める展開
今週のドル・円は伸び悩みか。米朝間の緊張状態は続いており、地政学リスク増大に対する警戒感は低下していないことから、リスク選好的なドル買いは引き続き抑制されるとみられる。14日発表の8月消費者物価指数(CPI)など経済指標内容を点検し、米連邦準備制度理事会(FRB)による年内追加利上げの可否を見極めることも必要となりそうだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)が19-20日に開催する連邦公開市場委員会(FOMC)の会合では、政策金利は据え置きの公算だが、利上げ継続の方針を維持するかどうか注目される。ただ、大方の市場関係者の予想通り、FRBがバランスシートの縮小に踏み切った場合、ドル売りがさらに強まる可能性は低いとみられる。
一方、トランプ大統領は、連邦政府の債務上限問題で民主党執行部と12月中旬までの短期引き上げ案で合意した。これにより米国債の債務不履行(デフォルト)懸念はひとまず後退し、トランプ政策実施への期待が広がっている。ただし、欧州中央銀行(ECB)理事会は債券買入れプログラムの縮小を10月の理事会で決定するとみられており、ユーロ買い・ドル売りが活発となっている。この動きはドル売り・円買いを促す要因になるとみられており、ドル反発を抑制する可能性がある。
また、引き続き北朝鮮による核・ミサイル開発を巡って米朝の対立は続いており、東アジア情勢の緊迫化が意識されていること、複数の大型ハリケーンによる被害の大きさを考慮するとリスク回避的なドル売り・円買いがただちに弱まることはないとみられる。
【米・8月消費者物価コア指数(CPI)】(14日発表予定)
14日発表予定の8月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+1.6%と、インフレ率は7月の+1.7%をやや下回る可能性がある。コア指数は2月に前年比+2.3%となった後は伸びが鈍化。8月のコアインフレ率が7月実績を下回った場合、年内追加利上げ観測はさらに後退するとの見方が多い。
【米・8月小売売上高】(15日発表予定)
15日発表の米8月小売売上高は前月比+0.1%と、7月の+0.6%を小幅に下回るものの、2カ月連続のプラスが見込まれている。8月の小売売上高が市場予想を上回った場合、年内追加利上げの可能性はやや高まることが予想される。米長期金利は伸び悩んでいるが、8月の小売売上高が予想を上回り、米長期金利が反転した場合はドル買い材料となる。
予想レンジ:106円00銭-109円00銭
《FA》
提供:フィスコ