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【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「二段下げ懸念、日米株価に変調兆す」

株式評論家 富田隆弥

◆10月から「つみたてNISA」が始まる。証券業界は新聞などマスコミを使ってアピールに一所懸命だが、できれば相場も活況になってほしいところだろう。だが、9月になっても株式相場は一進一退、盛り上がりに欠ける状況だ。

◆9月に入り日経平均株価は1日に1万9735円の高値を付けて始まったが、6日に1万9254円まで下げ200日移動平均線(1万9396円)や8月29日安値(1万9280円)を割り込み、日足は二段下げ突入を臭わす。アヤ戻りを終え再び下値模索という流れだ。6月以降の日経平均は月初めに高くなり、あと伸び悩むというパターンを繰り返しており、この9月もいまのところ似たパターンになりそうな雲行きだ。

為替(ドル円)は8月31日に110.67円まで戻し、25日移動平均線(109.98円)をクリアしたものの、110円台に集まる13週、26週、52週の各平均線に頭を叩かれ、直近7日は108円台半ばと流れは再び円高に傾いている。NYダウも1日に2万2038ドルまで戻し25日線(2万1916ドル)をクリアしたものの、5日は2万1709ドルまで下げ再び三角もみ合いの下値抵抗線に抵触した。

◆これら相場軟調の要因は北朝鮮のミサイル発射や核実験に伴う「地政学リスク台頭」だが、ここで問題になるのはチャートの崩れに伴う需給悪化。過剰流動性(カネ余り)を背景に上昇相場を長らく演じてきたが、8月から同時株安がジワリ進行しており、買い一辺倒の地合いもジワリ変調を来たしている可能性がある。相場の最大の材料は需給である。好景気、好業績など好材料があれども、流れ(基調)が変わるなら売り方の出番になることは否定できない。

◆ちなみに、日経平均が二段下げとなると下値メドは「N波1万8902円、V波1万8825円、E波1万8447円」などとなる。週足は26週移動平均線(1万9585円)を割り込み、52週線(1万8971円)を目指す流れにあることから、当面はN波1万8902円を想定しておく必要がありそうだ。

◆「つみたてNISA」とともに新聞紙上で目立つのが「ESG投信」だ。環境、社会、企業統治に優れた企業を組み込んだ投資信託を設定し、9月下旬にも上場(ETF)予定という。これも「つみたてNISA」の購入対象にする可能性があるが、日経400や日経225、日銀がETFで買うTOPIX型や設備投資・人材投資に積極的な企業群など、これまでにも多くのETFや投信が設定され、対象となる企業は似たところが多い。つまり、同じ中身のコーヒーをラベルだけ変えて新発売とするのと同じようなもので、売上の持続的アップは望めない。

◆あの手この手で個人マネーを投資に向かわせようとする政府・当局の意図を強く感じるが、この政府・当局の思惑に素直に乗るのはGPIFなどの年金と運用難に苦しむ地銀、そしてお金持ちの個人投資家だろう。コツコツ積み立てて行くNISAは非課税でもあり若者にとって有意義な手段だが、売買を繰り返す一般投資家が政府・当局の思惑に沿って行動するのがベストかどうかは疑わしい。

◆投資はタイミングが大事で、日米株価の流れに変調が見られるこのタイミングで「買い」に集中するのは疑問だ。

(9月7日 記、毎週土曜日に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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