【特集】開幕・2017年秋“IPO”戦線、「UUUM」に続く期待の株は? <株探トップ特集>
IPOシーズンが開幕、フィンテック中核銘柄候補マネーフォワードから東大発AIベンチャーPKSHAまで注目企業が続々と登場
―波乱相場の突破口なるか、新規上場企業の事前人気と高成長候補を探る―
5日の東京株式市場は北朝鮮リスクに揺れ、連日の大幅安。東証マザーズなどの中小型株を含め利益確定売りが膨らみ、先行き不透明感が強まる状況にある。そんななか、来週中盤から9月のIPOが始まる。IPO銘柄は株式の需給関係も良く高成長性が見込めるだけに、「波乱相場の突破口」として期待は強い。AI(人工知能)やフィンテック 、外国株、クールジャパン など多彩な顔ぶれが揃う9月IPOの行方を探った。
●マザーズ急落もIPOへの期待高い
5日の東京株式市場は、北朝鮮リスクが意識され日経平均株価が連日の下落。特に、東証マザーズ指数は一時前日比5%安と急落した。マザーズなどの中小型株が売られた要因としては、「第1四半期決算で業績が良かったのは製造業であり、東証1・2部に比べてサービス産業が多い東証マザーズは売られやすい面がある」(アナリスト)との見方も出ていた。また、「仮想通貨も手掛けている個人投資家が、ビットコイン価格急落で新興企業株に利益確定売りを出したのでは」との観測もある。もっとも、「新興企業株の下げは、個人投資家の投げ売りが中心で、近日中に売りが一巡し戻りに転じる可能性がある」(ネット証券)との見方は少なくない。こうしたなか、「手詰まり相場の突破口」として期待が高まっているのが、IPO銘柄だ。
●AI関連から外国企業まで9月IPOはバラエティーに富む
9月は来週13日のエスユーエス <6554> [東証M]を皮切りに9社のIPOが登場する。今年は8月までに40社強のIPOが実施されているが、このうち4月上場のLIXILビバ <3564> を最後に初値割れはなく、直近では8月30日上場のUUUM <3990> [東証M]は、初値が公開価格の3.2倍に高騰するなど高人気を誇っている。YouTuber(ユーチューバー)を中心とするクリエイターのマネジメント業務を手掛け人気化したUUUMは、急伸後の反動安に見舞われているが、直近IPO銘柄は全般相場が落ち着けば、再度上値を探る展開が期待されている。
AI系からフィンテック、外国企業まで業容も顔ぶれも多彩な9月IPOだが、その先頭を飾るのが、13日に東証マザーズに上場するエスユーエスだ。同社はITや電子・バイオ分野などの派遣・請負業務を手掛ける。業態自体に目新しさはないが、「着実な成長が見込め株価は堅調な展開が予想される」(中小型株アナリスト)という。
●マネーフォワードに視線集中、PKSHAに関心高まる
とりわけ、注目度が高いのが22日に東証マザーズに上場するPKSHA Technology(パークシャ・テクノロジー) <3993> [東証M]だ。同社は機械学習技術などを利用したアルゴリズム開発を手掛け、東大発のAIベンチャーとして知られる。自動運転などにも関係しトヨタ自動車 <7203> からの出資が予定されている。「時流に乗り市場の関心を集めそう」(同)だ。
一方、抜群の知名度を誇るのは29日にマザーズに上場するマネーフォワード <3994> [東証M]だ。スマートフォンを使った自動会計簿アプリなどを展開。利用者は500万人を超える。金融とITを融合した「フィンテック」を主力とする初の上場案件との見方もあり、IPO時はもちろん上場後も高い関心を集めるのは必至だ。ただ、業績は17年11月期も最終赤字の見通し。また、通常のIPO企業は目論見書で最初に想定発行価格が提示されるが、同社は想定仮条件(1110~1550円)が打ち出され注目された。その仲値で弾いた想定上場時時価総額も200億円超と大きい。同じく赤字で上場し株価が上昇したCYBERDYNE <7779> [東証M]のように、フィンテック関連の中核銘柄として人気化するかが市場で注目されている。「長期的な成長が見込め、安い水準でスタートすれば格好の拾い場となる」(ファンドマネジャー)との期待も強い。
●10月以降は平均10社前後のIPO登場も
また、28日に東証マザーズに上場するロードスターキャピタル <3482> [東証M]は、クラウドファンディング経由の不動産投資を実現しているほか、26日にジャスダックに上場する壽屋 <7809> [JQ]は、フィギュアやプラモデルなどホビー製品を手掛け「クールジャパン関連として注目する見方もある」(アナリスト)という。テックポイント・インク <6697> [東証M]は29日、東証マザーズ(外国部)に上場する。外国企業の上場は約3年半ぶり。米カリフォルニア州を本社とし外国株信託受益証券(JDR)での上場となるが、監視カメラや車載カメラ向け半導体の開発・製造・販売などを手掛け、「業態は時流に乗っている」(同)という。
10月はすでに3社のIPOが発表されている。17年は年間で80~90社の新規上場も予想されており、10月以降は毎月平均10社前後のIPOが発表されそうだ。注目IPOではフリーマーケットアプリの「メルカリ <4385> 」などの登場観測もあり、その動向が注目される。
◆9月以降のIPO予定企業◆
上場日 コード・市場 銘柄名 主幹事
9月13日 6554・東マ エスユーエス 野村
9月14日 3991・東マ ウォンテッドリー 大和
9月20日 3992・JQ ニーズウェル みずほ
9月22日 3993・東マ PKSHA Technology SMBC日興
9月26日 7809・JQ 壽屋 大和
9月28日 3482・東マ ロードスターキャピタル みずほ
9月29日 9260・東証 西本Wismettacホールディングス 野村
9月29日 6697・東マ・外国部 テックポイント・インク みずほ
9月29日 3994・東マ マネーフォワード SMBC日興
10月5日 6556・東マ ウェルビー みずほ
10月5日 6555・東マ MS&Consulting SMBC日興
10月5日 4124・JQ 大阪油化工業 野村
注:西本Wismettacホールディングスは上場市場が未定。
株探ニュース
編集部注:メルカリの上場決定を受け、コード番号を5月14日に追記