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【特集】窪田朋一郎氏【Xデー“9月9日”説と世界の行方】(1) <相場観特集>

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

―全面安も押し目買い観測、Xデー通過後マーケットはどう動く―

 週明け4日の東京株式市場では日経平均株価が4日ぶりに反落し、一時は心理的なフシ目である1万9500円ラインを下回る場面もあった。3日に北朝鮮が核実験を強行、ICBM搭載用の水爆実験に成功したと発表したことで、投資家心理は一気にリスクオフに傾いた。しかし、東証1部の9割の銘柄が下落する全面安商状のなかで、下値ではしたたかに押し目買いの動きも観測されている。ここからの株式市場の見通しと為替の動向について、市場第一線で活躍する関係者3人の見解を聞いた。

●「目先波乱含みだが、谷深ければ戻り足も急に」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 北朝鮮が核実験を強行したことでにわかに米国との間で軍事的な緊張が高まり、目先的に株式市場は波乱含みの展開を強いられている。今晩の米国株市場がレーバーデーで休場であるため、その分だけ日本株のヘッジ売りがかさんだ部分もあろう。ただ、現時点で武力衝突が起こる可能性は低く、マーケットもそこまでは織り込んではいない。

 気をつけなければいけないのは、北朝鮮は9月9日の建国記念日に絡み、もう一度威嚇行動を起こす可能性が残されていることだ。東京市場は今週末8日にメジャーSQ算出を控えていることもあって、仕掛け的な売りにさらされ一段と値を崩す懸念があることは念頭に置いておく必要がある。日経平均は週内に、8月29日につけた取引時間中の安値を割り込み、1万9250円ラインを下に抜ける可能性も否定できない。

 しかし、地政学リスクのみによって大勢トレンドが下降転換するというケースも見込みにくい。上下にボラタイルな値動きが想定され、地政学リスクの後退に伴うショートポジションの巻き戻しとなれば、日経平均は一気に1万9800円前後まで急速な戻りを演じる可能性も内包している。

 一方、ファンダメンタルズ面からは、FRBが9月のFOMCでバランスシート圧縮を決定することが予想されるが、それでも日銀とECBを合わせた緩和金額がFRBの圧縮分を上回る状況にあり、世界ベースでみて実質的な流動性相場は続く環境にある。金融引き締めを手掛かりとした売り仕掛けは時期尚早といえそうだ。

 外国人投資家は8月第4週まで5週連続で現物を売り越し、先物は6週連続売り越しとなっている。これを、日銀のETF買いで吸収しているかたちとなっているが、海外マネーが中長期的に“日本売り”の姿勢を強めているわけではなさそうだ。先物の売りについては、早晩買い戻しを誘発し、全体株価を浮揚させる方向に働く可能性も考慮しておきたい。

 物色対象としては、世界的な景況感の回復というプラスの側面に加え、地政学リスクというマイナスの側面も含め、商品市況に絡む銘柄群に優位性がある。鉄鋼や非鉄セクターの銘柄に物色の矛先が向かうことが想定される(インタビューは4日の14時時点)。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

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