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2017年08月31日19時30分

【特集】9月8日発効「バラスト水管理条約」、“新市場誕生”活かす銘柄は <株探トップ特集>

三浦工 <日足> 「株探」多機能チャートより

―全船舶のバラスト水処理システム搭載で巨大需要、商機の行方―

 バラスト水管理条約(正式名「船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」)が発効されるのを控え、バラスト水処理関連が再び注目を集めている。同条約は、2004年2月にIMO(国際海事機関)により採択され、30ヵ国以上の批准、かつ批准国の合計商船船腹量が世界の商船船腹量の35%以上を発効要件としていたが、昨年9月8日にフィンランドが52ヵ国目の批准国となり、世界の商船総トン数の35.1441%を占めたことから、その12ヵ月後の今年9月8日に発効することになっている。条約発効を新しい市場の誕生とみる企業も多く、関連銘柄には注目が必要だ。

●ワカメが生態系を破壊!?

 バラスト水とは、船舶を安定化するために用いる水のこと。貨物船や客船などは総積載重量で設計されており、無積載量で出港する場合には、停泊港の水を重しとして内蔵タンクに積んでバランスをとっている。一方、寄港時に貨物などを積載した場合はこのバラスト水を船外へ排出することでバランスをとっており、そのため、バラスト水を取り込んだ地域の海洋生物や植物の胞子、プランクトンが他国の海域に流れ出し、その国の生態系を脅かすという問題が発生している。

 資源輸入大国である我が国はバラスト水の大量輸出国でもある。IMOによると、船舶によって年間30億トンから50億トンのバラスト水が国際移動していると推定されているが、日本海難防止協会によると、日本では年間約1700万トンのバラスト水が持ち込まれ、約3億トンが持ち出されているという。

 日本では今夏、強い毒を持つ南米原産の「ヒアリ」が確認され、特定外来生物の脅威が話題となったが、ニュージーランドやオーストラリア、アメリカ、フランス、イギリスなどでは、バラスト水によって持ち込まれた日本やアジア圏で生息しているワカメが、生態系破壊の原因として危険視されているという。

●中長期にわたり需要発生へ

 こうした生態系の破壊を抑制するためのバラスト水管理条約では、基準値を超えるバラスト水の排出禁止や船舶ごとの管理計画の作成・実施、バラスト水記録簿の常備、旗国(船籍国)における船舶の定期的検査や国際証書の発給、寄港国における国際証書・記録簿確認、バラスト水分析、違反船舶は抑留などが可能といったことが定められている。

 条約は段階的に厳しい基準を課すもので、最終的には新造・既存のほとんどの船舶が承認済みバラスト水処理システムを設置する必要があり、処理装置などに、世界的に巨大な需要が発生することになる。今年7月に開催されたIMOの海洋環境保護委員会では、排出基準の適用時期の見直しが行われ、既存船舶へのバラスト水処理装置の搭載期限が当初の5年以内から7年以内に延長されたが、その分、中長期にわたって需要が発生することになりそうだ。

●増産対応で事業拡大目指す三浦工

 国土交通省では現在、日本籍船に設置することのできるバラスト水処理装置の承認作業を進めている。17年3月末現在で承認されている企業は、住友電気工業 <5802> 、ジェイ エフ イー ホールディングス <5411> 傘下のJFEエンジニアリング、三浦工業 <6005> 、三井造船 <7003> 、栗田工業 <6370> 、パナソニック <6752> グループのパナソニック環境エンジニアリングの6社。なかでも、市場で関連銘柄として本命視されているのが三浦工だ。

 同社では、14年3月から大手造船メーカー今治造船(愛媛県今治市)と組んで、バラスト水処理装置市場に参入。現在では小・中型船向けのフィルターとUVリアクタによる処理装置を展開している。中期計画でも小・中型船を主なターゲットに拡販を図り、「18年度には売上高100億円を目指す」(会社側)と17年3月期の4倍近くに増やす方針で、それに対応するため、今年6月には北条工場(愛媛県松山市)にバラスト水処理装置増産のための新棟を建設している。

●パナソニックも参入

 一方、栗田工のシステムの特徴は、薬品で水を処理する点にある。取水と排水時にセンサーで薬品濃度を測りながら自動で薬品量を注入する仕組みで、フィルターや紫外線照射装置などを使わないことから、大がかりな改修が不要。その分、定期点検などでの取り付けも可能で、導入コストが低く抑えられるのも特徴だ。

 また、承認企業の中でも新顔のパナソニック環境エンジニアリングのシステムは、海水の塩分を電気分解して作り出した成分で微生物などを処理する方式を採用。微生物をより分けるためのフィルターが不要のため、清掃や交換費用を抑えることができるといった特徴があり、今後5年間で売上高100億円を目指している。また、パナソニックとバラスト水処理装置の販売契約を結んだ蝶理 <8014> は、他に中国メーカーなどとも代理店契約を結んでおり、条約発効による恩恵が期待できる。

●タクミナは関連製品が伸長

 前述のバラスト水処理装置承認企業ではないものの、12年5月に国土交通省の型式承認を取得した「マイクロフェード」バラスト水管理システムを手掛けるクラレ <3405> や、大型タンカーへの導入実績がある三菱化工機 <6331> などもビジネスチャンス拡大が期待できる。

 さらに、足もとでバラスト水の薬剤注入方式の処理装置に使われるスムーズポンプが伸長しているタクミナ <6322> [東証2]や、バラスト水処理装置に搭載される大型海水ストレーナーを手掛けるニチダイ <6467> [JQ]、船舶用システム製品バラスト水処理制御装置を手掛ける寺崎電気産業 <6637> [JQ]なども関連銘柄として注目したい。

株探ニュース

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