【特集】街はいま“立ち食い立ち飲み”にあふれ、最高値株「隠れた理由」 <株探トップ特集>
気がつけば街は立ち食い・立ち飲み屋だらけ。新たなスタイル定着で株式市場でも、関連投資テーマが熟しつつある――。
―いきなり!ステーキ、晩杯屋…、立食業態が外食業態成長のカギに―
いま、「立ち食い・立ち飲み業態」に熱い視線が集まっている。かつては、小資本による個人経営の色彩が強い業態だったが、ここにきて大手企業もその効率的な店舗運営を再評価しており、続々と参入してきている。関連銘柄の株価も絶好調で、依然として方向感のない展開をしいられている株式市場において、立ち食い・立ち飲み関連銘柄は、どこ吹く風とばかりの上昇基調を続けている。温故知新の立ち食い・立ち飲み業態、現状と今後の行方を追った。
●ペッパーは「いきなり!ステーキ」でいきなり株価上昇
「立ち食いそば」に「立ち飲み」、まさに日本の飲食文化を代表する形態のひとつといえるが、株式市場において注目度は低かった。東京ではあちらこちらで目に付く大手立ち食いそばのチェーン店ですら株式市場に上場をしておらず、それもしかたがなかったといえよう。加えて、立ち飲み業態においては小資本の個人経営が多いなか大規模にチェーン展開を行う企業もほとんどなく、身近な存在でありながら株式市場においては“遠い異国の地”のような感覚だった。
その、立ち食い・立ち飲み関連株の潮流に大きな変化が到来している。株式市場で注目されるキッカケになったのが、立ち食い形式を取り入れた「いきなり!ステーキ」事業が急拡大しているペッパーフードサービス <3053> の存在だ。同社は、8月8日に東証1部への指定を発表して以降は物色人気が高まり、15日の指定変更日を挟みさらに株価は上げ足を加速、23日には年初来高値7750円をつけている。
いきなり!ステーキは、本場ニューヨークにも出店、マスコミでも取り上げられるなど話題豊富だが、もちろんペッパーフードの業績も好調だ。7月14日には、17年12月期連結業績予想の上方修正を発表。売上高を286億7300万円から334億8500万円(前期比49.9%増)へ、営業利益を13億7300万円から21億8500万円(同2.3倍)へ、純利益を7億6000万円から12億4600万円(同2.2倍)へ修正している。また、15日に発表した7月度実績で、主力のペッパーランチの既存店売上高が前年同月比8.6%増となったほか、いきなり!ステーキも同27.1%増と高い伸びとなっている。
この、いきなり!ステーキ人気が波及しホリイフードサービス <3077> [JQ]の株価も急動意している。同社は、北関東を地盤とし「隠れ菴 忍家」などを展開するが、今月2日にペッパーフードとフランチャイズ契約を締結。同社のいきなりステーキ1号店を10月下旬にも出店する予定で、これを好材料視した買いが入った格好だ。
立ち食い業態だけではない、サラリーマンの憩いの地ともいえる立ち飲み業界にも、この夏大きなニュースが入った。
●「晩杯屋」で攻勢掛けるトリドール
7月27日、セルフ式うどん「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングス <3397> が、首都圏で低価格の立ち飲み店「晩杯屋」などを運営するアクティブソースの株式を取得しグループ化すると発表したのだ。時代のニーズに適合した晩杯屋の業態力に同社のノウハウを加えることで店舗数の拡大を加速、早期に国内500店舗を目指す。
同社では「2025年には国内で2000店舗体制を目指している。丸亀製麺でおそらくは1000店舗は行けると思う。残り1000店舗を計画達成するにあたり、業態力のあるものを複数構築していかなければならない。こうしたなか業態開発を進めると同時に、今回の晩杯屋のようにM&Aをするなど、さまざまな方法で計画達成を目指す」(広報)としている。また、晩杯屋という立ち飲み業態を選択した理由として「丸亀製麺ではどうしても(製麺設備などがあるため)大きなスペースが必要になる。しかし、晩杯屋であれば、小さな店舗でも駅前立地で出店しやすいこともあり、当社の出店候補地が有効に活用できる点も魅力」(同)と語る。株価も異彩の上昇波を継続しており実質上場来高値圏を舞う。
●ハイデイ日高は「焼鳥日高」でちょい飲みに強力援軍
この立ち飲みに早くから着目している上場企業がある。それが“ちょい飲み”の代名詞ともなった「中華食堂日高屋」を展開するハイデイ日高 <7611> だ。同社は、立ち飲み業態の「焼鳥日高」を首都圏で23店舗(8月28日現在)運営、7月20日には神田西口店をオープンしている。「(焼鳥日高の)店舗展開については、今後も着実に進めていく」(経営企画部)としており、今後の動向から目が離せない。こちらの株価も実質上場来高値圏を走る展開が続いている。
ある大手飲食サイトの営業マンは、あくまで個人的な見解としながらも「ポイントは、トリドール、そして日高にしても専業ともいえる“総合居酒屋”ではないところ。ほかにも参入企業があるが、これもいわゆる主力が居酒屋業態ではないところが多い。成熟・成長した飲食企業において第2の柱を探すのは急務で、そんななか立ち飲み業態に目がいったのではないか」と話す。また、同業態に参入した多くの企業に取材をすると、やはり顧客の回転率の良さと、好立地、省スペースで速やかに店舗開設、展開できることが共通した魅力であるという。
●力の源「一風堂スタンド」、ホットランドは「ハイボール酒場」
そのほかでは、博多ラーメン店「一風堂」を主力とする力の源ホールディングス <3561> [東証M]が「一風堂スタンド」を展開。ちょっとつまんで気軽に飲んで、ラーメンで締めくくるスタイルを提案しており、立ち飲みもできる一風堂だ。店舗数は、まだわずかだが今後の展開に注目。同社は3月21日に上場、株価は同月24日に3655円の高値を付けたあとは一貫して調整を続けていたが、8月22日の直近安値1869円を底に切り返しに転じている。
たこ焼き「築地銀だこ」を展開するホットランド <3196> は、たこ焼きをハイボールと一緒に楽しめる「ハイボール酒場」(店舗により着席スタイルも)を展開。収益性の高い同業態の出店を首都圏中心に推進しており、台湾でも5月12日に「銀だこハイボール酒場」林森店をオープンしている。
いまや、日本の食文化の代表格となったすしに天ぷらだが、こちらも元々は江戸時代に始まる立ち食いスタイルだったといわれる。現代における立ち食い・立ち飲みの隆盛は、まさに日本独自スタイルともいえる食文化の再評価ともいえるのかもしれない。また、景気拡大がバブル経済期を超えたと言われながら、家計への波及はあまり実感できない状況が続くなか、リーズナブルで旨い立ち食い・立ち飲みに対する消費者のニーズは、さらに高まりをみせそうだ。
株探ニュース