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【特集】桂畑誠治氏【“実りの秋”はやって来る? 展望9月相場】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―ジャクソンホール会合は無風で通過、膠着相場いつまで―

 東京株式市場は1万9000円台半ばで依然として方向感が定まらない展開を強いられている。注目されたジャクソンホールでの経済会合は無風通過となり、為替動向に若干の波紋を広げたものの株式市場への影響は限られた。気が付けば“夏枯れ”と言われ続けた8月相場も実質最終商い日を迎え、9月相場入りが目前。夏枯れ相場の後に果たして“実りの秋”が待つのか否か、経済や市場分析に定評があるマーケット関係者2人に見通しを聞いた。

●「国内経済良好で内需系銘柄に優位性」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 世界の耳目を集めた米ワイオミング州ジャクソンホールで開催された会合では、イエレンFRB議長、ドラギECB総裁ともに金融政策についての言及は避けた格好となったが、イエレン氏が利上げについてのコメントを控えたことで「ハト派的」と市場は受け止め、対ユーロ、対円でドル安を誘発した。その後のドラギECB総裁の講演でも金融政策だけでなく通貨高にも触れず、今度は「ユーロ高容認」と受け取られ、結果として現状はユーロ、円、ドルの順番に強い展開となっている。

 ドル円相場が1ドル=109円近辺を軸に、方向性が伴わない動きを続けるとすれば、日経平均株価の上値も重くなるのは仕方のないところ。今週末に米8月の雇用統計発表を控えるが、6月、7月に続き強い数字が予想されるとはいえ、金融政策に大きな変化を与える材料としてのインパクトは限定的とみられ、ドル高にはつながりそうにない。株式市場にも新たな方向性をもたらせるには至らないだろう。

 日本国内に目を向ければ企業業績は良好である。そのなか黒田日銀総裁は低金利政策を続けることを表明しており、日本経済にとってはポジティブな環境が継続する。したがって、株式市場も米国主導の流れは変わらないものの、ファンダメンタルズ面から下値に対してのリスクは小さいといえる。9月相場では上値の重さが急速に解消されることも見込みにくく、日経平均1万9000~2万円のボックス圏での推移が続きそうだ。

 セクター別では、堅調な国内経済を背景に内需株に優位性がある。2部やジャスダック銘柄が買われていることもその証左だ。東証1部では好収益環境を享受する業態として建設株が挙げられる。一方、円高警戒から輸出株は手掛けづらいが、自動車株については見直し余地がありそうだ。国内外で好調に売り上げを伸ばしており、米国市場でビッグスリーよりも日系メーカーのシェアが拡大している点に注目したい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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