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【特集】岡本昌巳が語る投資の極意、「40年稼ぎ続ける投資のプロの 株で勝つ習慣」 (中)

証券界で長年に亘り活躍する岡本昌巳氏の「40年稼ぎ続ける投資のプロの 株で勝つ習慣」(ダイヤモンド社)が話題を呼んでいる。株式投資に関する本は数多いが、ほとんどが著者の成功体験を基づくもので、万人に適した投資法とは限らない。本書は株の世界における一流のプロが持つ、どんな状況でも通用するテクニックや考え方を「63の習慣」として集大成。「株式投資の古典」になり得る書を目指したという渾身の一冊について、筆者の岡本昌巳氏に語っていただく。(前編はこちら


「プロの投資家は常に心理戦を仕掛けている」
text:岡本昌巳

●買い板が厚い銘柄は上がらない!?

 長年、株式投資で生活しているプロの投資家や、営業マン、ストラテジスト、アナリスト、投資顧問など証券界で生きて来たプロたちは私の取材先であり、また友人たちでもある。

 前回、そうした相場のプロのある習慣を書いた。

 「株式投資の世界の主役は私たち人間ではなく、あくまでも銘柄であるが、しかし、どんなに収益が大きく伸びる見通しの将来有望な銘柄でも、そのときの相場の流れに乗っていなければ、買われるのは後回しにされる。いつ上がるかは分からない。だから、彼らはその銘柄が相場の流れに乗るかどうかを常に考えている」という習慣だ。

 今回は長年、株式投資で生活しているプロの投資家の戦い方を見てみたい。

 彼らの重視するのは出来高であり、チャート&トレンドだが、それはあくまでもベース。これら基本を押さえながら、常に心理戦を念頭に置いて戦っている。

 まず、初歩的な心理戦の質問をする。

 「プロの投資家は『買い板が厚い銘柄は上がる』と考えているか?」

 買い板が厚い=買い意欲が強い=よって上がる可能性が高いと考えるのは素人だ。

 プロの投資家はこう言うだろう。

 「下値に買い指し値が厚いと言うことは『下げたくない』、つまり『自信がない』からというケースがある。上がる自信がないから下値に買い指し値を入れる。上がると思うなら、慌てて上を買ってくる。『買うな』と言っても、儲かると思えば、ストップ高まで買ってくる。それが投資家心理だ。つまり、買い板が厚い銘柄は上がらないケースも多いことも念頭に置いているのがプロだ」

 実際、上げている銘柄の出来高と売買の板を見ていただきたい。出来高が膨らんで上げているのに、意外と売り買いの板が薄いものが多いことに気づくはずだ。

●心理戦の生命線は「フシ」

 心理戦の生命線とも言えるのは、「フシ」である。

 相場のプロはフシを重視する。フシは心理の壁でもある。プロは株価がこの壁を越えてきたら、投資家心理も壁を越えてくると知っているからだ。

 フシとは350円、400円、800円、1000円など、切りのいい数字であり、直近の高値、昨年来高値、年初来高値、上場来高値、また、週・月足など中長期チャートを見て、なかなか抜けなかった株価ゾーン、さらに上ヒゲも立派なフシだ。

 プロの投資家の「売り買いの関ケ原」はフシを巡る戦いと言える。フシを越えることで買い方が有利になり、逆にフシを割ると売り方が有利となる。

 例えば、ある銘柄の年初来高値が350円とする。350円買い、351円買いとなれば、株価がフシを抜いてきた=投資家心理が買いに傾く=買い方が有利な戦いにという流れは容易に分かるはずだ。

●投資家心理に響かない素数は敬遠すべき数字

 さらにプロの投資家は「素数」を嫌う。素数とは1とその数字でしか割れない数字。彼らは「ラッキー7はアンラッキー7だ」と笑う。

 例えば、300円台で言えば、「307、311、313、317、331、337、347、349、353、359、367、373、379、383、389、397」がそれだが、プロにとって素数は鬼門。

 なぜかと言うと、347円買い、349円買い、350円買い、353円買いのどれが投資家心理に響くかを考えていただきたい。やはり、切りのいい350円買いだろう。フシの数字はイメージも沸きやすい。イメージが沸きやすいというのは、心理にも入り込みやすい。素数は中途半端な数字とのイメージが強く、投資家の心に響かないということだ。

 プロの投資家はそこまで考えている。

(次回、「後編」は8月26日に掲載予定)


岡本昌巳(おかもとまさみ)
1957年、東京都生まれ。82年に証券専門紙「株式市場新聞」に記者として入社。上場企業担当の経済部、証券会社担当の市場部で18年間、数々のスクープを連発。2000年に経済ライターとして独立。以降、新聞、雑誌、ネットで株情報や投資関係の記事を配信するとともに、継続的に株式セミナーを開催。ブログ「今日の岡本」を主宰。



  40年稼ぎ続ける投資のプロの 株で勝つ習慣
  岡本昌巳

  ダイヤモンド社



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