【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 金融、重厚長大株に底入れ感出るか
株式評論家 植木靖男
「金融、重厚長大株に底入れ感出るか」
●米株高、海外勢の買いで2万円大台回復
膠着状態にあった株価が6月に入って一変した。5月16日以来、10数日ぶりに高値を更新、2万円大台に乗せたのだ。
この間、決定的な材料に事欠き、もみ合いを強いられてきた。
2万円大台乗せの功労者は、いうまでもなく米国株価が3ヵ月ぶりに高値を更新したからだ。米国株高の背景は、格別新しい好材料が顕在化したわけではないが、一部景気に対して警戒感があり、その警戒感が民間雇用統計発表で薄らいだからと言える。
もっとも、ナスダック指数は連日のように高値を更新していただけに、いずれはダウ平均も、といった声はあった。いずれにしても、その結果として米国長期金利が上昇に転じ、円安も進んだことが2万円大台乗せをもたらしたといえよう。
もうひとつは、この間、高値もみ合いを維持できたのは需給にもよる。
海外勢が5月は現物・先物合わせて1兆円も買い越したことだ。よく日銀のETF買いが指摘されるが、5月は僅か5日間にすぎない。改めて海外勢が買わないことには大きなフシ目を越えられないことを痛感させられる。
●物色対象は主力株にシフト
では、今後どう展開するとみればよいのか。
2万円大台乗せの一翼を担った米国株であるが、3ヵ月ぶりの高値更新であり、経験則的には、当然ながら、この間買った建て玉のヤレヤレの利食い玉が出る。通常4~10日ぐらいのもみ合いが予想される。
むしろ強くなるとみられるのはわが国株価だ。先の高値は5月16日だから、その後の日柄はまったく“ノープロブレム”だ。案外すっきりと15年高値2万0868円に向けて挑むことになる可能性が大きいかもしれない。
09年3月から15年6月までの上昇を第1波動とみれば、いまは第2上昇波動入りしていると判断されるが、そうであれば、この2万0868円は、いずれは単なる一通過点にすぎなくなるとみることもできよう。
もっとも、極めて大きいフシ目であるから、その周辺では相当の抵抗を覚悟する必要があろう。
ところで、6月に入って一変した相場であるが、物色対象もこれまでと大きく変化し始めたことにも注目したい。
これまでは、中小型の好業績株が集中的に買われたが、2万円大台乗せとともに主力株にシフトを始めたかにみえる。
その典型例が、これまで軟調を続けてきた金融株に復活する兆しがみえてきたことだ。米国でも久し振りにゴールドマン・サックス株に動意がみられる。米長期金利に底入れ感が出ることを期待したい。それと注目されるのは、設備投資増に絡んで重厚長大株に底入れムードが漂ってきた。一過性かどうか見極めたい。
2017年6月2日 記
株探ニュース