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【特集】「ビッグデータ」の波、農業に到来 “収穫”を得る銘柄は <株探トップ特集>

豆蔵HD <日足> 「株探」多機能チャートより

―産官学連携、効率的生産・収穫実現に向けプロトタイプ運用へ―

 ビッグデータ を経済活動に活用する動きが広がるなか、この流れが農業にも波及してきた。慶応義塾大学や民間企業など23機関と農林水産省をはじめとした関係省庁は5月15日、ビッグデータを活用した農業を世界に先駆けて実現するために「農業データ連携基盤(データプラットフォーム)」を構築すると発表。これは膨大な情報を集めて分析する手法を効率的な生産・収穫に生かすことが狙いで、2017年中をメドにプロトタイプの運用を開始するとしている。

●ソフトバンテク、井関農、クボタ、富士通、NTTなど参加

 「農業データ連携基盤」に参加するのは、井関農機 <6310> やクボタ <6326> など 農機大手のほか、日本マイクロソフトやソフトバンク・テクノロジー <4726> 、NEC <6701> 、富士通 <6702> 、パナソニック <6752> 、NTT <9432> 、NTTドコモ <9437> 、豆蔵ホールディングス <3756> グループのネクストスケープといったICT(情報通信技術)関連企業、全国農業協同組合連合会(JA全農)、日本農業法人協会など。

 例えば、井関農が農業ICTや農機に関するシステムの連携およびデータの活用に取り組むほか、ソフトバンテクは市町村コードと緯度・経度情報の提供および農地情報公開システム(全国農地ナビ)連携の検討を担当。ネクストスケープはアーキテクチャ(システムの基本的な骨組み)の設計およびシステムの開発を担う。

 「農業データ連携基盤」構築に向けて企業や組織が壁を越えて連携に動くのは、農家の長年にわたる経験や勘が高齢化によって失われつつあり、データの集積も進んでいないことがある。既にさまざまな企業・団体でICTを活用して生産性を高める取り組みが進んでいるものの、現状では各農業ICTサービス間の相互連携がないうえ、公的データが散在していること、ICT活用が困難な状態のデータが多いなど課題も多い。これを解決するためには、農産物の生育状況や価格などの統計情報、気象データなどを共有し、農家に提供する仕組みが必要不可欠となる。この仕組みを活用できれば、農家の経営改善や生産性の向上、農作物の安定供給、さらには技術継承やこの技術とデータを融合した高品質生産などが期待でき、このことから「農業データ連携基盤」に参加する各企業が果たす役割は大きいといえる。

●ビッグデータ活用で“スマート農業”市場が一段と拡大へ

 「農業データ連携基盤」に集約された各種情報は、オープンデータあるいは有償データとして提供するとされていることから、IT技術を活用した“スマート農業”の市場規模が一段と拡大する可能性がある。

 その恩恵を受けるとみられるのが、クラウドサービスを使って農業経営 に関わる業務を支援する企業で、クボタは農業機械に最先端技術とICTを融合させた「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」を、富士通は生産から経営・販売まで企業的農業経営を支援する「食・農クラウド Akisai(秋彩)」を、NECは「農業経営支援クラウドサービス」を展開。

 また、ネポン <7985> [東証2]は農業用ハウス環境の“見える化”につながる「アグリネット」を運用。これはハウス内の温度や湿度、照度、二酸化炭素濃度を数値・グラフ化し、スマートフォンやパソコンで見られるようにすることで作業を効率化できる。

 セラク <6199> [東証M]が提供している圃場(ほじょう)モニタリングシステム「みどりクラウド」は、自動的に圃場の環境を計測・記録。必要な機能に絞り込むことで、高いコストパフォーマンスを実現している。

 このほかでは、農業ICTソリューション「OGAL(オーガル)」を提供するキーウェアソリューションズ <3799> [東証2]、「i-農業」を目指してさまざまな取り組みを行っている大和コンピューター <3816> [JQ]、農産物流通事業や農業コンサルティング事業を手掛ける農業総合研究所 <3541> [東証M]、佐賀大学農学部などと農業ICTの推進に取り組んでいるオプティム <3694> 、トラクターなど各種農作業機械に搭載可能な自律走行システム「I-GINS」を開発済みのマミヤ・オーピー <7991> [東証2]などもビジネス機会が拡大しそうだ。

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