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【特集】2020年「教育ICT」変革の旅、見えてきた“拡大期”と注目の株 <株探トップ特集>

チエル <日足> 「株探」多機能チャートより

―大学入試のPC導入、プログラミング教育必修化など目白押しで広がる市場―

 5月18日から20日にかけて、東京ビッグサイト(東京都江東区)で「第8回 教育ITソリューションEXPO EDIX(エディックス)」が開催された。約800社が出展し、3日間で3万500人以上の来場者数を記録するなど活況のうちに終わり、教育分野におけるICTの活用に対する注目の高さがうかがえる。教科書をタブレット端末 などに収めた「デジタル教科書」を2020年度から紙の教科書と併用する形で導入する案も出ており、今後も引き続き要注目のテーマだ。

●2020年に大きな変革の時を迎える「教育」

 東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年に向けて、さまざまな分野で変革の時を迎えようとしているが、教育分野もその一つ。「教育の2020年問題」とも呼ばれ、20年度からは大学入試の際にセンター試験に代わる大学入学共通テスト(仮称)で、テストにコンピューター端末が導入されるのをはじめ、20年度をメドに全国の小・中・高等学校でタブレット端末などを活用した「デジタル教科書」の使用が認められる予定であることや、小学校でのプログラミング教育が必修となることなど、大きな制度変更が目白押しとなっている。

 これを控え、教育関連市場ではIT分野を中心に製品・サービスの開発が活発化しており、市場も一気に広がりつつある。

●教育ICT市場は5年で3割増へ

 マーケティング&コンサルテーションの富士キメラ総研(東京都中央区)によると、16年度の教育機関向けICT関連市場は1430億円だったもようだ。「第2期教育振興基本計画」により教育現場におけるICT環境の整備が進んだことが背景にあるが、ICT環境の整備は「第3期教育振興基本計画」でも引き続き進められていくとみられている。また、20年度以降に学習指導要領の改訂も控えていることから、指導者の育成や支援を可能とするシステムやサービスの需要も期待され、21年度には1920億円になると予測されている。

 特に、タブレット端末の導入に伴い、よりハイエンドな無線LANシステムの整備が進むとみられるほか、前述のデジタル教科書や教育コンテンツ配信などの分野で市場拡大が見込まれている。また、授業時に指導者や児童・生徒の端末と電子黒板などを連動させるシステムや、出欠管理や成績管理などの教務を支援するシステムなどの市場も大きく成長するとみられている。

●学校施設の無線LAN構築で実績伸ばすチエル

 20年まで時間的な猶予があることから、17年3月期の時点で大幅に需要が増加している関連企業はまだ少ないものの、その兆しは見え始めている。

 チエル <3933> [JQ]では17年3月期に札幌市の小中学校100校へ学校向けアプライアンスサーバーを納入したほか、無線LAN最適化ソリューション「Tbridge」の受注を伸ばした。今年に入っても語学学修プラットフォーム「CaLabo Language」が 東京都立高校50校の発音教育に採用されるなどしており、教育ICT関連における代表的な銘柄になりつつある。

 内田洋行 <8057> も近年、小中学校向けに1人1台タブレット端末を導入する商談が増えているほか、電子黒板やパソコン整備、無線LAN構築などと合わせた複合型・大型案件が増えており、業績の牽引役になっている。また、メルコホールディングス <6676> も子会社バッファローが手掛ける無線LANアクセスポイントが学校向けに好調で、18年3月期までに学校向けに2万台を販売する計画だ。

●デジタル教科書関連で関心の高いスターティア

 教育ICTに関連しては、ブイキューブ <3681> の関心も高い。子会社パイオニアVCが電子黒板の大手で、静岡県三島市では小中学校21校の全普通教室に電子黒板 「xSync(バイシンク)Board」を導入。今年4月には電子黒板とタブレット端末などを組み合わせた協働・一斉学習ソリューションを発売した。また、同じくブイキューブ子会社のアイスタディ <2345> [東証2]がeラーニングや企業向け学習管理システム「istudy」を手掛けていることから、デジタル教科書の導入・普及で需要拡大が期待されている。

 デジタル教科書に関しては、前述のチエルや、電子ブック作成ソフトなどを手掛けているスターティア <3393> も関心が高い。また、学校向けに入学試験業務のシステム開発・運営を行うODKソリューションズ <3839> [JQ]では、学研ホールディングス <9470> と提携してデジタル教科書に関するコンテンツ開発などを行っており、関連銘柄として挙げられる。

 このほか、資料や立体物を大画面に投影する「書画カメラ」で国内シェア8割を誇るエルモ社を傘下に持つテクノホライゾン・ホールディングス <6629> [JQ]や、15年に高等学校でタブレットを使ったICT活用教育の実証実験を実施したスーパーワンを子会社に持つフュートレック <2468> [東証2]などにも注目したい。

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