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【通貨】為替週間見通し:ドル弱含みか、日本の円安誘導策は転換を迫られるとの思惑も

ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより

■ドル弱含み、地政学的リスク増大が嫌気される

先週のドル・円は弱含み。地政学的リスクの増大がドルの上値を抑えた。北朝鮮の長距離ミサイル発射、サンクトペテルブルク(ロシア)の地下鉄での爆弾テロ事件を受けてリスク回避的な円買いが優勢となり、ドルは111円台半ばから110円台前半まで下落した。

4日発表の2月の米貿易赤字が大幅に縮小したことや、5日に発表された3月ADP全米雇用報告は市場予想を大幅に上回る雇用増を記録し、ドルは111円台に戻した。しかしながら、米軍は6日にシリアに対するミサイル攻撃を行ったことでリスク回避の円買いが再び強まり、ドル・円は反落。7日発表の3月米雇用統計で非農業部門雇用者数は市場予想を大きく下回る前月比+9.8万人にとどまり、ドル・円は一時110円13銭まで下落する場面があった。

ただ、3月失業率は約10年ぶりとなる4.5%に低下したことや、ダドリーNY連銀総裁が年末から来年初めにかけてバランスシートの縮小を開始すると示唆し、利上げ休止期間は非常に短いとの見方を示したことから、ドルは111円37銭まで反発し、111円09銭でこの週の取引を終えた。取引レンジ:110円13銭-111円59銭。

■ドル弱含みか、日本の円安誘導策は転換を迫られるとの思惑も

今週のドル・円は弱含みか。6日-7日の米中首脳会談を経て、対米貿易黒字を続けている日本などに対してトランプ政権が何らかの是正を求める動きが出てくる可能性がある。市場関係者の間では「日本の円安誘導策は転換を迫られる」との思惑が浮上しており、思惑的な円買いは継続するとの声が聞かれている。

米国によるシリア攻撃は地政学的リスク増大の要因となりうる。米国防当局者は「米国によるシリア攻撃は一度限り」との見方を示しているが、7日に開かれた国連安全保障理事会の緊急会合でヘイリー米国連大使は、「米国はシリアでさらなる軍事行動を取る用意がある」と述べている。米国の軍事行動がエスカレートした場合、米国株を圧迫し、米長期金利の低下につながる可能性があることもドル上昇を抑える一因となりそうだ。

ドルは111円台に戻したが、昨年11月9日の101円20銭から12月15日の118円66銭までの上昇の半値戻しとなる110円レベル(109円90銭近辺)を割り込む可能性は残されている。また、トランプ政権による国内向けの景気テコ入れを柱とする経済政策の導入はかなり遅れるとの見方が浮上しており、米国株が上げ渋る展開も想定されている。税制改革(減税策)への期待はあるものの、ドルの下支え要因にはなりにくい。

一方、米経済指標は引き続き堅調な内容が予想されている。2月の貿易収支は予想以上に改善した。3月の非農業部門雇用者数は市場予想を下回ったものの、失業率は4.5%まで低下し、平均時給の伸びは市場予想と一致した。米国は完全雇用の状態に近づいていることを考慮すると、米連邦準備理事会(FRB)による年3回(3月を含む)の利上げ見通しは変わらないとの見方が多い。なお、14日はGOOD FRIDAY(聖金曜日)の祝日となるため、米国市場は休場となる。

【米3月労働市場情勢指数(LMCI)】(10日発表予定)
10日発表予定の米3月労働市場情勢指数(LMCI)は、米連邦準備理事会(FRB)の次回利上げの手がかり材料として一部で注目される。1月と2月はいずれも+1.3で推移。3月の非農業部門雇用者数は予想を下回ったものの、不完全雇用率と失業率は低下した。雇用情勢の改善は続いており、3月の指数がプラスとなった場合、早期利上げを後押しする材料となりそうだ。

【米3月消費者物価コア指数(コアCPI)】(14日発表予定)
14日発表予定の3月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+2.3%と予想されており、2月の+2.2%をやや上回る見込み。コアインフレ率は2%台前半で推移しているが、予想通りであれば市場コンセンサスである年3回の利上げ期待は持続するとみられ、ドル買い要因となる。

予想レンジ:108円00銭-112円00銭

《FA》

 提供:フィスコ

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