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【特集】急浮上“5G関連株”、トヨタ・NTT大連合が導く未来 <うわさの株チャンネル>

アンリツ <週足> 「株探」多機能チャートより

―外れないハシゴと伴う利益、マーケットが見る上値余地は―

 23日の東京株式市場は、前日の暴落の余韻を引きずり朝方は警戒ムードが漂っていたが、前場後半から次第に買いが厚くなり、日経平均株価はプラス圏で推移した。ただし、上値も重さが目立つ。主力株への買いは総じて手控えられ、依然として中小型テーマ株に活路を求める動きが強い。

IoT時代に欠かせない「5G」

 そうしたなか急速に頭角を現してきたのが、次世代通信規格である「5G(第5世代移動通信システム)」関連銘柄で、軒並み株価を急動意させている。政府は2020年の5G商用化に向け17年度から実証実験を開始、LTEの1000倍以上の大容量化、10Gbps以上の通信速度を実現する5Gはあらゆるものをオンライン化するIoT時代を縁の下で支えていく。

 今回、導火線となったのは、23日付の日本経済新聞が、トヨタ自動車 <7203> とNTT <9432> の自動車・超高速無線通信技術での提携をセンセーショナルに報じたことだ。「第5世代(5G)と呼ばれる技術を活用し、より安全性の高い自動運転車の実用化につなげる」と伝えたことが株式市場で投機資金の食指を動かした。トヨタが注力するコネクテッドカーは、IoTの一形態であり、その際に高速・大容量の5G活用が必須となる。国内自動車メーカーと、通信メガキャリアが5G分野で提携するのは初の事例ということもあって、マーケットに大きなインパクトを与えた。

●アンリツ、アルチザなど計測器メーカーに商機

 IoT時代の到来で、通信インフラ分野には大きな変革の波が押し寄せている。通信系計測器のトップメーカーであるアンリツ <6754> は昨年来、この5G関連のシンボルストック的な位置付けで株価水準を切り上げてきた。17年3月期は営業利益段階で前期比63%減益見通しにあるが、株価は昨年12月以降、一貫した上昇トレンドにあり、3ヵ月で時価総額は約1.5倍になった。これは来期以降に5G関連の特需が収益を押し上げると、マーケットが読んでいるからにほかならない。

 この日は、同じく通信系計測器メーカーで高速データ通信向けなどを主力とし、5G対応のデータ処理迅速化などの研究開発に積極的なアルチザネットワークス <6778> [東証2]も吠えた。一時116円高と急伸、引けは大きく伸び悩んだものの、売買高急増で5G関連の中軸銘柄としての存在感を示した。

●ドコモとの連携でネクストジェン飛翔

 一方、次世代通信網のコントロールシステム開発を手掛けるネクストジェン <3842> [JQG]は5G技術分野で主導権を握るNTTドコモ <9437> との連携が強い点が着目され、246円高の1920円まで上値を伸ばし昨年来高値1946円の更新を視界にとらえる場面があった。

 また、半導体商社のPALTEK <7587> [東証2]にも物色の矛先が向き、高値圏もみ合いを上に抜けてきた。同社はASICやFPGA、GPUなどに強みを持ち、5G通信機器分野の需要開拓に前向きに取り組んでおり有力関連株として折に触れて人気化する。このほか、NECグループを主要販売先に、通信系システム開発を手掛けるアイレックス <6944> [JQ]も、スマートフォンでは5G対応の開発準備を進捗させるほか、グループを挙げてIoTや車載向けに照準を合わせており、5G関連の穴株としてにわかに注目度を高めている。

●官民連携で中期安定の物色テーマに

 全体相場は下げ止まってはいるものの、前日に日経平均が400円以上の下げをみせた割には戻りが鈍く、全体指数との連動性の低い中小型のテーマ株に投資家の目が向きやすい。そのなか、市場では5G関連が個人投資家に受け入れられやすいテーマとして注目する声がある。

 準大手証券のストラテジストは「物色テーマとして新しくはないが5G関連は分かりやすく安定感がある。東京五輪開催年に商用化を図る方向で官民が連携しており、テーマとしてハシゴを外されることがない」と指摘する。「今の売買高をみる限り、爆発的な人気を呼び込むとは考えにくいが、話題性もあり、ビジネスとして現実的な利益が伴う」(同)と今後も関連銘柄の上値余地に肯定的だ。

●トヨタがNTTと手を組む背景に見えるもの

 また、大手ネット証券アナリストは「直近IPO銘柄ほどではないが、きょうの新聞記事のインパクトは大きく(5G関連株は)店内でも個人投資家資金を呼び込んでいる。特にトヨタはKDDI <9433> の上位株主でKDDIファミリーとしてのイメージがあるにもかかわらず、NTTとの協業を先にしたことに驚きがある。これは5GがNTTグループの土俵であることを物語っている」としている。

 きょうはこのニュースを受けてKDDIの株価は一時2%強下げる局面があった。もっとも、市場関係者のなかには「既に昨年、デンソー <6902> とNTTドコモが自動運転と5Gで提携していることは今回の伏線になっている」(中堅証券情報部)という見方も出ていたが、いずれにせよ今後の両陣営の動向から目が離せない。

 5G関連は自動運転分野にとどまらずIoT全般でその裾野を広げていくことになる。今後も企業間の資本提携や業務提携の動きが予想されるなか、NTTグループ主導の色彩が強いことは関連銘柄を探すうえでも参考になりそうだ。

(中村潤一)

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