【特集】高まり始めた“トランプ不安”、もしもに備える「7つの株」 <株探トップ特集>
ニトリHD <日足> 「株探」多機能チャートより
―政権発足2ヵ月の分岐点、一時1ドル=110円台で注目集まる円高メリット株―
23日の日経平均株価は、前日の大幅安の余韻を引きずりながらも、43円高と反発して引けた。直近の金融市場の波乱は、背景に米トランプ政権の政策運営への不透明感があることが大きい。こうしたなか為替相場では一時1ドル=110円台をつけるなど、急激な円高が進行している。焦点は今晩の米オバマケア代替法案の採決だが、市場の一部には109円台への円高進行も視野に円高メリット株に注目する動きも出始めている。
●米共和党のゴタゴタを嫌気、世界マーケットの波乱収束なるか
3月連休明け以降の金融市場は大きな波乱に揺れている。21日のNYダウは237ドル安の大幅下落となり、これを受けた22日の日経平均株価も414円安と急落した。市場にリスクオフ不安が高まるなか、為替相場も波乱となり22日のニューヨーク市場では1ドル=110円70銭台までドル安・円高が進行した。
この金融市場の波乱をもたらしているのが、米国での医療保険制度改革法(オバマケア)の代替となるヘルスケア法案を巡るゴタゴタだ。米共和党は、同法案をまとめたが、民主党に加え与党の共和党からも反論が噴出。同法案は米国時間の23日に下院での採決が予定されているが、トランプ政権はオバマケアの見直しを財源として、大型減税や規制緩和の実現を進める予定だっただけに、否決された場合、同政権が掲げた政策の根本を揺さぶる事態にもなりかねない。このため、米国で23日に予定されている同法案の採決は「トランプ政権の今後を占う意味でも分岐点になる可能性がある」と警戒する見方が出ている。
●トランプ政権の信任揺らげば109円台の円高進行も
「もし法案が通らなかったら今後はNYダウの2万ドル割れ、為替の109円台を意識する展開もあり得る」と上田ハーローの山内俊哉執行役員はいう。オバマケア代替法案が実現しない場合、11月の米議会選挙で共和党は過半数を取ったにも関わらず大統領の公約が実現されないことになり、その場合の失望感は強そうだ。特に、世界の金融市場は、トランプ氏の大幅減税と巨額のインフラ投資による景気刺激策を織り込んでいただけに、そのシナリオを見直さざるを得なくなる。為替もチャート上のフシである1ドル=111円27銭を割り込んできたことから、一段の円高進行を予想する見方もある。
一方、オバマケア代替法案が米下院を通過すれば「市場は好感し、ドルは113円台に戻る展開も」(山内氏)といい、同時にNYダウや日経平均株価は高値圏を維持できる公算が高い。いずれにせよ、トランプ政権は発足から2ヵ月で大きな分岐点に差し掛かったと見られている。
●ニトリ、ニチレイ、サイゼリヤ、エニグモなど注目
足もとの市場は、リスクオンとオフを両にらみの状況にあるが、こうしたなか、リスクヘッジの意味合いで注目を集めているのが「円高メリット株」だ。年初の1ドル=118円台からすでに一時8円近くの円高が進んでおり、円安を前提に調整した株価には割安感も指摘されている。また、4月から5月にかけてはフランス大統領選が予定されており、再度、リスクオフによる円高懸念が台頭する可能性もある。そこで、市場が注目する7銘柄の円高メリット株を紹介する。
◆ニチレイ <2871>
冷凍食品販売の大手。食品素材を海外から輸入しており、円高により仕入れ・原料コストの低減が可能となる。加工食品の販売好調などを受け、17年3月期の連結営業利益は第3四半期決算時に260億円から290億円(前期比34.4%増)に増額修正している。
◆エニグモ <3665> [東証M]
日本で発売されていないブランド品やファッションアイテムなどを購入できるソーシャルショッピングサイト「BUYMA(バイマ)」を運営。同サイトは海外ブランド品を扱い円高は追い風。18年1月期業績には増額修正の期待も強い。
◆レンゴー <3941>
木材チップなどを米ドル建てで輸入する紙パルプ各社にとって円高はメリットに働く。主力の段ボール製品や板紙製品の販売は好調。第3四半期(16年4-12月)の連結純利益は147億円と今3月通期予想(145億円)を上回っており、増額修正期待が強い。
◆サイゼリヤ <7581>
円高は輸入食材の調達コストの低下となり、メリットが発生する。消費者の節約志向が強いなか、低価格路線への支持は強い。アジア事業の復調が期待される。今8月期業績には増額修正期待も。
◆日本エム・ディ・エム <7600>
チタン製の骨接合材料や人工関節など整形外科器具の輸入などを手掛けている。同社は人工関節を米国から調達するため円高はメリットとなる。今3月期営業利益は前期比5.4%増の18億円の予想。年7円へ1円増配も。
◆JAL <9201>
航空燃料を輸入する航空業界にとって、足もとの原油安に加え円高の進行はプラス要因となる。今期は人件費や燃油サーチャージの影響などで減益予想だが、配当利回りは2.5%前後の水準にあり妙味も。
◆ニトリホールディングス <9843>
海外での中国や東南アジアなど現地生産を行った家具を国内に輸入しているため円高はメリットとなる。都心への出店を強化しており、新たな顧客層を開拓。28日に17年2月期業績を発表する予定。
株探ニュース