【特集】窪田朋一郎氏【“上放れ”待つ東京市場、「その時」はいつ】(1) <相場観特集>
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
―カギは“新年度入り”、もみ合い継続も4月の視界は良好か―
東京株式市場は日経平均株価が1万9000円台半ばで引き続きもみ合う展開にあり、なかなか方向感が定まらない。ここ米国株市場でもNYダウの上値が重くなっているほか、為替相場の円高警戒感も依然として根強い。期末目前の相場にどのような視点で向き合えばよいのか、そして新年度相場はどうなるのか。市場第一線で活躍するマーケットアナリスト2人に意見を聞いた。
●「早晩上放れ有望、新年度相場で一段高期待」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
日経平均株価は今月に入ってから、1万9200~1万9600円のゾーンでもみ合っており、投資家の目には為替の円高を警戒した気迷い相場にもみえるかもしれない。しかし、ドル建て日経平均では年初来高値水準で強い展開をみせており、決して悪い地合いではない。今の水準で売り物を吸収して、円建てでも早晩、指数は上に放れることになりそうだ。
トランプ米大統領の打ち出す経済政策は、当初イメージされたような早期の法人減税実施や、拡張一辺倒の財政政策ではなく、環境部門を削減する一方で防衛関連を増やすような、メリハリを利かせながらも常識的な範囲に収められたものだった。したがってマーケットにサプライズを与える形には至らなかったが、かといってネガティブな印象を与えるものでもない。これまでも米国株は上昇相場の踊り場があったが、今のもみ合いも同様であり、長期上昇トレンドに変わりはないと考えている。
為替は米金利の上昇が一服していることで、目先円高含みの動きをみせているが、仮に米利上げが年内3回であっても、日本はイールドカーブ・コントロールで長期金利の低位安定が予想され、日米金利差が拡大することを考えるとここから一方通行の円高が続くことは考えにくい。1ドル=110円近辺をドル円相場の下限とみていて、仮にこの水準で止まれば、日経平均の下値リスクは限定的なものにとどまる。逆に、為替はここから120円程度まで円安方向に振れる要素を多分に含んでおり、ボックス圏から放れるとすれば、円安の方向に進むのではないかと考えている。
欧州では反EUの動きが一部で懸念されているが、オランダの議会選挙は杞憂に終わった。これから行われるフランス大統領選も一時的に波乱要因とはなっても、世界の株式市場の流れを逆流させるようなインパクトはない。また、米中の貿易摩擦がエスカレートする可能性についても短期的には低そうだ。
日経平均は米国株と為替の動向を横にらみながら、上値慕いの動きが予想される。場合によっては月内に2万円大台を回復するケースも十分考えられる。遅くても海外資金の流入が予想される4月新年度相場では2万円ラインを通過点とする強調展開が見込めそうだ。物色対象としては、円高警戒感やトランプ保護主義政策に対する不安心理で出遅れているトヨタ自動車 <7203> などの自動車株の水準訂正余地に着目したい。また、そーせいグループ <4565> [東証M]が投げ売り一巡でリバウンドに転じたように、中小型株も再度回転が利いてくる気配がある。直近IPO銘柄を含め、マザーズ市場など新興市場や東証2部銘柄にも目を配りたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース