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2017年03月16日20時00分

【特集】リチウムイオン電池“主役交代”、急浮上「ポストLiB」に照準 <株探トップ特集>

日立造 <日足> 「株探」多機能チャートより

―サムスン・スマホ発火問題きっかけ、安全性実現で注目の株は―

 現在、スマートフォンやタブレットパソコンなどの民生機器から電気自動車ハイブリッド自動車、定置用電源など幅広い分野に利用され、電池の主流となっているリチウムイオン電池(LiB)だが、最近、「ポストLiB」に向けた開発が加速している。株式市場でも次世代電池としてマグネシウム電池などが話題に上ったが、今後の開発加速で、「ポストLiB」への関心はさらに高まりそうだ。

●「ギャラクシーノート7」の発火はLiBの設計と製造工程に原因

 昨年8月の発売以降、韓国サムスン電子の「ギャラクシーノート7」で発火事故が相次いだのは記憶に新しいところだ。リコールにとどまらず、生産・販売打ち切りに追い込まれたことにより、同社は6000億円強もの損失を被ったとされている。ブランドの毀損にもつながったこの発火事故について、サムスン電子では今年1月末、原因はLiBの設計と製造工程にあったとの調査結果を発表した。

 LiBについては、これまでにもパソコンや航空機、自動車などに搭載された電池で発火事故が起きているが、これは軽量・小型で大容量というメリットがある一方、エネルギー密度が高く、使われている有機電解液が可燃性のためだ。トヨタ自動車 <7203> が当初、ハイブリッド車の「プリウス」にLiBを搭載せず、ニッケル水素電池を使っていたのも、価格の安さもあるが、安全面を考えてのことだった。

●「革新型蓄電池」開発に向け産官学が連携

 こうしたことを受け、安全性を高め、コストを抑えた二次電池の開発が活発化している。

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、2009年度に「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING)」プロジェクトを発足した。1回の充電で500キロメートルを走行できる車載用蓄電池を30年までに実現するのが目標で、京都大学や産業技術総合研究所を中核研究拠点とし、トヨタやソニー <6758> などが参加して基礎研究に取り組んできた。

 昨年6月からはこのRISINGで得られた成果を受けて、「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発(RISING2)」をスタートさせており、16~20年度の5年間に150億~180億円の予算を投じる予定だ。

 一見すると、実用化のメドとされる30年にはまだ長い期間があるようにみえるが、製品化までのリードタイムを考慮すると20年代前半には基本仕様を固め、企業による開発フェーズに移行する必要がある。つまり、今後5年間程度でエネルギー密度や耐久性、安全性などの技術を確立する必要があり、決して余裕があるわけではない。

●安全性の高い「全固体電池」

 同プロジェクトでは、革新型蓄電池の開発に至るロードマップとして、20年代には現行LiBの枠組みのまま、各材料を刷新することで性能の大幅向上を目指す「先進LiB」の実用化が想定されている。株式市場で注目されているのもこの「ポストLiB」ともいえる段階の電池群で、なかでも電解質を固体材料にした「全固体電池」、リチウムイオンではなく他のイオンで充放電する「非LiB」などが注目されている。

 全固体電池は、既存のLiBでは液体である電解質を固体にして、正極と負極を含めた部材をすべて固体で構成する電池。固体であるので液漏れのおそれがない上、正極と負極の接触を防ぐセパレーターも不要。また、一般に電解質が難燃性のため燃えにくく、安全性も高い。

 現在、旭化成 <3407> 、日立製作所 <6501> 、出光興産 <5019> 、村田製作所 <6981> 、ソニー、太陽誘電 <6976> 、トヨタなど多数の企業が開発にしのぎを削っているが、その中の一つ、日立造船 <7004> では電解質と電極を粉体の原料のまま成型する技術を確立し、低コストで製造できる技術を開発した。既に試作品の提供を始めており、20年以降の実用化を目指している。また、オハラ <5218> は昨年8月、低温下で駆動する全固体LiBの試作に成功したと発表しており、注目されている。

●資源制約が少ない点が利点のマグネシウム電池

 非LiBは、レアメタルであるLiの代わりに、主原料として安価なナトリウム(Na)やマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)などを利用した電池。なかでも関心が高いマグネシウム電池は、負極にマグネシウム、正極に酸素を還元する材料を使い、マグネシウムが水酸化マグネシウムなどに変わる時に電子を放ち、正極の酸素が電子を取り込む反応により電気をつくる。体積当たりに蓄えられる電力がLiBより劣ることや、発電を開始すると化学反応が続くので、臨機応変にオン・オフできないなどの欠点があったが、改善が進んでいる。

 既に古河電池 <6937> が凸版印刷 <7911> などと組んで14年に小容量タイプのマグネシウム電池を発売したが、二次電池としての実用化はこれから。昨年10月にはホンダ <7267> と埼玉県産業技術総合センターが実用化のメドをつけたと報じられたが、ホンダでは技術の詳細を明らかにしておらず、電気自動車などに使用するにはさらなる技術開発が必要とみられている。

 ただ、資源制約が少ないことやリサイクルしやすいことなど、マグネシウムの利点は多い。マグネシウム電池車の走行実験に成功し、非常用マグネシウム空気電池の開発も手掛ける藤倉ゴム工業 <5121> や、子会社が難燃性マグネシウム合金を利用した燃料電池の共同研究を行う不二サッシ <5940> [東証2]、子会社がマグネシウム燃料電池関連部材の製品化を目指しているオリコン <4800> [JQ]などにも注目したい。

株探ニュース

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