【特集】「米利上げ、イエレン議長の次の決断は?」第一生命経研・藤代宏一主任エコノミストに聞く!<直撃Q&A>
藤代宏一氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
Q1 今回のFOMCの結果をどう分析していますか?
藤代 3月のFOMCでは、「年3回」の利上げ見通しが出てくる可能性が7割程度とみていた。それだけに、想定通りの結果だったが、為替はドル安となり、NYダウが上昇した反応をみていると、4回を想定していた向きは拍子抜けの結果と受け止めたようだ。2月までは3月に利上げを行う様子は見せず、3月以降、FRB高官はキャンペーンを打ったかのように急遽、利上げを織り込ませ始めた。従来のパターンでは、FOMCで次回の利上げを示唆してから市場に織り込ませてきたが、今回は違った。このような利上げの織り込ませ方は、今後も行われるのかもしれない。急遽、利上げを実施したのは、やはり米国景気の堅調さがあるのだろう。米国景気の過熱を抑える措置だと思う。
Q2 3月利上げに踏み切ったのは、イエレンFRB議長の来年2月の任期切れが迫ってきており、それまでに金利を正常化させたいためではないかという憶測もあるようですが?
藤代 FRB議長の人事には不透明な部分は多いが、トランプ氏が大統領に当選した昨年11月以降、イエレン議長は再任されないとの見方が強まった。しかし、いまはイエレン議長の続投はあるかもしれない、とシナリオは見直されつつあるようにも思える。
Q3 FRBが次の利上げに動くのはいつだと思いますか?
藤代 利上げは「年3回」と「年4回」の場合の2つのパターンを想定している。年3回の場合、あと2回は「7月」と「12月」の可能性があると思う。次回6月のFOMCで予告したうえで記者会見の無い月だが7月に利上げを行うこともあり得るのではないか。3回目は12月を予想する。また、「年4回」の可能性もまだあると思う。残りは記者会見のある「6月」「9月」「12月」に行う。ただ、年4回は株式市場などが堅調に推移しリスクオフにならないことが条件となるだろう。
Q4 今後の為替やNYダウの動向をどう予想していますか?
藤代 米国の利上げが3回でも4回でも、ドル円相場は1ドル=113円前後とみている。利上げが4回となれば日米金利差は拡大するが、金利差では為替は決まらないと思う。金利差が拡大しても利上げが米国の成長を鈍化させることにつながり、金利差拡大のドル高要因を相殺するだろう。年4回の利上げなら、過剰流動性の縮小でNYダウは崩れる可能性はあると思うが、年3回なら高値圏を維持できるのではないか。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(ふじしろ・こういち)
第一生命経済研究所経済調査部・主任エコノミスト。担当は金融市場全般。2005年4月、第一生命保険入社。08年、みずほ証券出向。10年4月第一生命経済研究所出向、同年7月内閣府経済財政分析担当へ2年間出向。12年7月副主任エコノミストを経て、15年4月より現職。
出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)