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【特集】シンワアート Research Memo(2):業界のパイオニアとして国内の美術品オークション市場をリード(1)

シンワアート <日足> 「株探」多機能チャートより

■会社概要

1. 事業概要
シンワアートオークション<2437>は、国内最大級の美術品オークション会社である。1989年の創業以来、業界のパイオニアとして国内のオークション市場をリードするとともに、業界唯一の上場会社でもある。日本の近代美術を中心として、近代陶芸やブランド雑貨、時計、宝飾品なども手掛けている。特に、同社が得意とする2,000万円以上の高額落札作品においては業界トップシェアを誇る。

美術品に対する専門性の高さや富裕層マーケティングによる人的ネットワーク、実績に裏打ちされた信用力やブランド力などを強みとして、業界のリーディングカンパニーとしての地位を確保してきた。

また、2014年5月期からは、これまで積み上げてきた富裕層マーケティングとのシナジー効果が期待できる事業として、医療機関向け支援事業、及び太陽光発電によるエネルギー関連事業にも参入した。「アートから始まる富裕層向けの総合サービスカンパニー」へと事業ドメインを拡張することにより、安定収益源の確保と財務基盤の強化に取り組んでいる。

事業セグメントは、主力の「オークション関連事業」のほか、太陽光発電施設の販売等による「エネルギー関連事業」、医療機関向け支援事業等による「その他」の3つに区分される。事業別売上高構成比率では、「オークション関連事業」が30.3%、「エネルギー関連事業」が69.6%、「その他」が0.1%となっており、2015年5月期より本格稼働した「エネルギー関連事業」の比率が高くなっている(2016年5月期実績)。

同社グループは、連結子会社5社(孫会社等3社を含む)と持分法適用会社1社で構成される(2016年5月末現在)。連結子会社には、宝飾品を中心としたオークションの企画及び運営を行うJオークション(株)、エネルギー関連事業及び損害保険代理業等を手掛けるエーペック(株)、医療機関向け支援事業を手掛けるシンワメディコ(株)及びShinwa Medico Hong Kong Limited、ミャンマーで植林事業を行うシンワ・ミャンマー(Shinwa Myanmar Co., Ltd.)がある。また、持分法適用会社は、香港での美術品を中心としたオークションの企画及び運営、美術品売買を手掛けるASIANART AUCTION ALLIANCE Co.,Ltd.(同社が21.1% を所有)である。

各事業の概要は以下のとおりである。

(1) オークション関連事業
オークション関連事業は、大きく「オークション事業」と「オークション関連その他事業」に分けられる。

a) オークション事業
オークション事業は、取扱作品・価格帯により、近代美術オークション、近代陶芸オークション、近代美術Part2オークションを定期的に開催するほか、ワイン・西洋美術・コンテンポラリーアート等のオークションも随時開催する。また、ブランド雑貨、時計、宝飾品については、2013年10月に設立した連結子会社Jオークションが開催するオークションで取り扱っている。オークション関連事業の売上高は、主に落札価額に対する手数料収入(落札手数料及び出品手数料)で構成される。落札手数料は落札価額200万円以下に対して15.0%、200万円超5,000万円以下に対して12.0%、5,000万円超に対して10.0%、出品手数料は落札価額の10.0%と設定されている。他にもカタログ収入や会費収入などで構成される。

b) オークション関連その他事業
オークション以外の相対取引であるプライベートセールを中心に構成されている。オークション取引と同様に、販売価格をベースに販売委託者及び購入者から手数料を徴収する場合と、同社が作品を買い取り、その在庫商品を購入希望者に販売する場合とがある。

同社は、美術品市場全体の安定化と規模の拡大を目的として、いわゆる近代美術の巨匠と言われる作家の名品(マスターピース)クラスの作品を数点購入し、戦略在庫として保有するとともに、作品ごとに販売時期、価格及び販売先などを含め、最も合理的な販売を実現することにより、販売益の獲得や効果的なマーケットメイクを目指している。

なお、手数料収入と商品売上高は、売上高に対する量的なインパクトが異なるため注意が必要である。オークション関連事業の業績を判断するためには、取扱高及びセグメント利益を見るのが妥当と言える。

(2) エネルギー関連事業
富裕層向けに50kW級の低圧型太陽光発電施設の分譲販売を行うとともに、高圧型太陽光発電施設※1を自社保有することによる売電事業も展開している。なお、太陽光発電施設は20年間の固定価格買取制度や優遇税制措置などのメリットが享受できるところに特徴がある。また、今期からは風力発電事業も試験的に開始している※2。

※1 兵庫県西脇市(800kW級)と埼玉県秩父市(約2,300kW級)に大型太陽光発電施設を保有している(そのうち、秩父市は2016年11月から売電を開始)。
※2 大分県に自社保有の風力発電施設(19kW)を建設し、2016年7月より売電を開始しているが、まだ試行錯誤の段階である。

(3) その他
医療機関向け支援事業として、診療報酬債権ファクタリング事業を行ってきたが、資金調達の遅れ等により一旦凍結とした。現在は、日本を含めたアジアの富裕層に日本の最先端の医療技術やより良い品質の医療サービスを紹介する医療ツーリズムを収益の柱にするべく注力している。また、アンチエイジングなどの健康食品(サプリメント)の販売も行っている。

加えて2016年4月からは、損害保険商品にかかる新たな事業(地震保険キャプティブ設立コンサルティング)も開始した。医療ツーリズムと同様、富裕層マーケティングにおける強みを生かした新規事業として育成する方針である。

2. 活動実績
(1) 海航資本集団との連携を見据えた戦略提携の締結
同社は、2016年10月28日に采誉投資有限公司に対する第三者割当による新株発行、及び采誉投資有限公司の100%子会社である喜昌投資有限公司との業務提携を締結した。采誉投資有限公司は、中国の海航資本集団の文化事業構想のために2015年5月に香港に設立された法人であり、同社としては海航資本集団との連携(対日投資及び文化事業支援)を進めるところに狙いがある。特に、中国及び日本における美術品市場の活性化はもちろん、同社が新たな収益ドライバーとして注力している医療ツーリズムにも大きな効果が期待できる。具体的な業績貢献には中長期的な目線が必要であると考えられるが、今後のダイナミックな展開が注目される。なお、同社は、第三者割当による新株発行により約110百万円の資金調達を行った一方、その一部(約52百万円)を中国芸術投資管理有限公司への投資資金として充当するとともに、残りはアジア事業拡大のための運転資金に活用する計画のようだ。財務的な影響は軽微と言える。

(2) 同社本体による太陽光発電施設販売事業への参入
ここ数年、同社の業績の伸びをけん引していた太陽光発電施設の販売については、固定買取価格制度や優遇税制措置などによる恩恵を受けながら、子会社であるエーペックを通じて大きく実績を積み上げてきたが、2016年11月には同社本体でも新たに参入することを決定した。その背景には、優遇税制措置の適用期限である2017年3月末日以降も、個人富裕層からの利回りに着目した投資ニーズが継続する可能性が高いことから、同社が直接的に行うことにより、同社が得意とする富裕層マーケティングとの相乗効果をさらに高めるところに狙いがある。また、販売拡大に伴う運転資金調達を円滑に行うことも目的の1つとみられる。一方、子会社のエーペックについても、既に連系済みの太陽光発電施設の売却ニーズに対応するため、インターネット上でのオークション形式により販売する事業を開始した。いずれにしろ、今後も太陽光発電施設販売事業の拡大を前提とした動きと捉えることができる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《SF》

 提供:フィスコ

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